2-6-52:「売上至上主義」は、短期思考に陥る

顧客起点マーケティング 良い売上、悪い売上
短期的な売上や利益に執着せず、長期的な顧客動態の改善と継続性を重視すべきです。また、短期的な結果は過去の活動の反映にすぎません。
2-6-52:「売上至上主義」は、短期思考に陥る
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ビジネスの継続性について

ここまで、売上と営業利益について、新規顧客と継続購入する継続顧客との決定的な違い、その違いを加味した適切なLTV運用について解説してきました。ここからの数回は経営層を対象としており、現場のマーケターの方には少し複雑な話題となりますが、興味がある方はもちろん読み進めていただければと思います。

まず、売上至上主義についてです。ビジネスは、四半期、半期、1年での短期的な結果にかかわらず、2年3年と長期的な売上と営業利益で考えると、大枠として次のように整理できます。企業価値の算定や株価の評価は、短期の結果だけでなく、長期の継続的な利益性に納得できるかに左右されます。

長期的な売上と利益性

 ① 売上⤴ 利益性⤴

 ② 売上⤵ 利益性⤴

 ③ 売上⤴ 利益性⤵ ⇒ 投資に慎重

 ④ 売上⤵ 利益性⤵ ⇒ 投資が困難

ビジネスを長期の継続性で考える際、「短期で良い状態が必ずしも長期で良い状態につながるわけではない」という点に留意したいです。短期の売上や営業利益は、必ずしも長期の売上や営業利益や、その継続性につながりません。目指すべきは長期の継続的な利益と利益性であり、そこにつながる売上と利益を短期で実現し続けることです。

現在の活動が、未来の売上・利益をつくる

では、先ほどの表に基づき、短期と長期の関係を解説していきます。

当たり前ですが、今現在、目の前のビジネス結果は、今日や昨日など直近のビジネス活動の結果ではありません。それは、過去の長期間にわたってのビジネス活動の結果です。

企業がビジネスで注視する短期の売上や利益率は、過去のビジネス活動がもたらした新規顧客の獲得や獲得率、その継続率や離反率、ロイヤル顧客化率などによる結果としての顧客動態(カスタマーダイナミクス)が反映されているに過ぎません。したがって、短期間で顧客動態を変えて結果も変えるのは、そもそも限界があります。

企業ができるのは、長期において正しい結果を導く顧客動態を実現するための施策を、可能な限り今、実行することです。この長期における正しい施策から、短期でも一定レベルの結果を得られる可能性はありますが、毎日顧客が入れ替わるような頻度の激しいビジネスでない限り、その結果は数ヵ月後や来年や再来年に出てくるものです。

売上至上主義、つまり短期的な売上と利益率に執着すると、まさに悪い売上を集めてしまい、長期の売上と利益率を毀損するアクションをとることになりがちです。「短期思考になるべきではない」と言われますが、その理由は、この顧客動態を変えるには時間がかかるからです。

短期と長期を時間軸でつなぐ

長期の売上と利益率の推移と、それがどう形成されるのかを考えてみます。長期でビジネスを見た場合、前述のように、売上と利益率は4つのパターンに分けられます。最も理想的な状態は、当然ながら①の「売上も利益率も増えている」状態です。

  • ① 売上が増えていて、営業利益率も高い(⤴ ⤴) ビジネスの継続性が高く、理想的な状態。短期で得た売上となる新規顧客から継続購入への残存率が高く、既存顧客もロイヤル化し離反率が低い状態につながっている

  • ② 売上は下がっているが、営業利益率は高い(⤵ ⤴) ロイヤル顧客が多く、一定割合で維持できているが、新規顧客の獲得が少ないか、新規から継続購入への残存率が下がっているか、既存顧客の離反が進んでいる状態

  • ③ 売上が増えているが、営業利益率が低い(⤴ ⤵) ロイヤル顧客や既存顧客の離反が進んでおり、離反顧客による売上減少を新規顧客で補おうとし、過剰な投資が行われた結果、一過性の顧客が増えて、利益率が低下している。程なく売上増加も止まって、長期低迷になる可能性がある

  • ④ 売上も営業利益率も低い(⤵ ⤵) 新規顧客の獲得が少ない、もしくは、新規顧客から継続購入への残存率が低い状態で、ロイヤル顧客や既存顧客の離反が進み、ビジネスが悪循環に陥る状態。投資を一旦停止し、ロイヤル顧客の定義を明確にして、その獲得のためにプロダクトを含めた事業全体の再構築が必要

図5-1で示すように、ほとんどのビジネスでは短期の売上や利益率が同じでも、その後の長期の結果や継続性は大きく変わります。企業は短期で売上と利益率の上下を注視し、強化・改善しようとしますが、売上と利益率を左右する新規顧客の獲得効率、新規顧客の継続率(や離反率)、ロイヤル顧客、既存顧客の継続率(や離反率)といった顧客動態(カスタマーダイナミクス)の変化を見なければ、長期的にどうなるかはまったく予想ができません。

今年の努力は、今年にすべて反映されるわけではないのです。その前提で、短期と長期をつなぐ時間軸でビジネスを捉える必要があります。

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《西口一希》

良い売上、悪い売上