2-6-32:継続型ビジネスの顧客離反

顧客起点マーケティング 良い売上、悪い売上
継続型ビジネスでは顧客の離反は避けられないため、新規顧客の獲得と離反防止策を両立させることが重要です。
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ロイヤル顧客も必ず離反する

ビジネスには大きく分けて「単発購入型」と「継続購入型」の2つの種類があり、多くのビジネスは継続購入型に分類され、顧客の維持とロイヤル化が成功の鍵となることはすでに解説しました。しかし、前段で少し触れましたが、どんなに優れた継続購入型のビジネスでも、顧客は時間とともに一定の割合で離反していきます。

カテゴリーやブランドによって離反割合は異なりますが、離反率がゼロ、すなわち継続顧客が一人も減らずに永遠となるビジネスは存在しません。この事実を前提として、ビジネスに向き合う必要があります。

なぜ顧客が離反するのか、その複数の理由を考えてみます(図2-15)。

まず、競合他社の登場が挙げられます。一般的に、ほとんどのプロダクトが競争にさらされています。発売時は売れたとしても、より魅力的な商品やサービスを提供する競合が現れると、シェアを奪われる可能性があります。発売時点では市場に類似商品がまったくない、強い独自性のあるプロダクトほど、模倣されるリスクもあります。そのプロダクトの販促活動が強ければ、たとえ自社プロダクトが先発品でも負けてしまう懸念は大きいです。

次に、顧客ニーズの変化があります。顧客のライフステージや嗜好の変化によって、現在のプロダクトが不要になる可能性があります。例を挙げると、水道水のおいしい地域に引っ越したからミネラルウォーターが必要なくなった、などです。3つ目には、経済状況の変化があります。景気の悪化などにより、顧客の購入力が低下する可能性があります。

そして、サービスへの不満によって離反することも当然起こります。サービスの品質低下やカスタマーサポートの不備などにより、顧客が不満を感じると、たとえ長年使い続けたプロダクトでも離反することは往々にしてあります。そのように気持ちが離れたタイミングで競合に接触すると、よりスイッチしやすくなるでしょう。

離反を前提とした、新規獲得と継続率向上の両輪の戦略

このような顧客の離反に対しては、次のような点を考慮した戦略が必要になります(図2-16)。

まず、新規顧客の継続的な獲得です。既存顧客の離反を補うために、常に新規顧客を獲得していく必要があります。離反数が新規獲得数を上回れば、顧客数の減少につながります。ただし、顧客の母数が増えるほど離反も増える一方、新規顧客は同じ割合で獲得し続けられるわけではありません。

いずれ新規顧客向けの活動が潜在顧客のほとんどに行きわたれば、獲得しにくくなることもあります。ですので、毎月のように離反顧客を多く抱えながらそれを補う新規を獲得し、市場を拡大していくのは至難の業と言えます。

並行して行うべきは、継続率(顧客維持率)の向上です。離反顧客の分析を行い、なぜ顧客が離反したのか、どんな提案をすれば離反を最小化できるのかを分析し、プロダクトや付帯サービスの改善に生かします。

既存顧客の離反率をできるだけ低く抑えるための施策、例えば顧客満足度向上、ロイヤリティプログラムなども重要になります。こうして、離反数が新規獲得数を上回らないようにし、また既存顧客の購入単価や購入頻度を維持することで、売上向上につなげます。

あるオンラインゲームが顧客を維持するには?

離反のメカニズムと対策を、具体的な事例をもとに考えてみます。

課金型のオンラインゲームを例に考えてみましょう。このゲームはリリース当初、多くの新規ユーザーを獲得し、大きな成功を収めました。しかし、どんなに人気のサービスでも、顧客は離反します。時間が経つにつれて、他の新しいゲームの登場や、ユーザーの嗜好の変化などによって、徐々にユーザー数が減少していきました。

図2-17は、新規顧客が初めてオンラインゲームに課金し参加した後、継続するか、それとも離れてしまうかという行動パターンを示しています。

最初に10人の新規顧客がオンラインゲームに課金したとして、その後、一部は2回目、3回目と課金を続けます。一方、1回きりで離反する顧客もいます。特に、初回課金後の離反率が高く、多くの顧客が1回目で終わってしまう傾向があります。

しかし、2回目以降の課金に進んだ顧客は、離反率が大幅に減少し、継続して購入する可能性が非常に高まっています。もし1回目の購入で離れてしまう顧客が多い場合、企業は顧客に再度購入してもらうための対策を強化する必要があります。

2回目の壁を突破する ーF2転換率の重要性

このような継続購入型ビジネスでは当然、離反率を減らし、顧客を2回目以降の購入につなげることで、長期的な売上と利益が安定します。なぜなら、2回目以降の顧客は1回きりの顧客より、企業へのロイヤリティが高くなる傾向があるからです。したがって、この段階の顧客を維持することが重要になります。

DtoCや通販事業などでは「F2転換率」という指標がビジネスの成否を分ける重要指標として語られますが、2回目に進んでいただくことが大事なのは、2回目に進んだ顧客は3回目、4回目と継続する確率がぐっと上がるからです。

オンラインゲームに限らず、初めての購入で顧客が満足する体験を提供して、2回目以降の購入につながるようにすることが必要です。多くの場合、1回目から2回目への継続率は20~40%と低い傾向があります。方や、2回目以降の顧客は高いロイヤリティを示すため、2回目以降の継続率は60~90%と高くなることが多いです。したがって、継続維持を強化し、顧客離れを防ぐための戦略が重要になるのです。

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《西口一希》

良い売上、悪い売上