2-6-35:良い売上、悪い売上を管理する8つの枠

顧客起点マーケティング 良い売上、悪い売上
良い売上と悪い売上を区別し、長期的な継続売上からの利益最大化とリアルタイム分析を重視することが重要です。
2-6-35:良い売上、悪い売上を管理する8つの枠
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継続的な売上と、そこからの利益を見る

前項の例で示した「良い売上・悪い売上と時間軸」の関係性について、売上と利益の有無という別の切り口で表してみます。

図3-4は、良い売上と悪い売上のそれぞれで、売上と利益が出るのかどうかを示したものです。グレー部分の①列のみを見ているのが短期思考であり、悪い売上を追いかけてしまう状態。①~④の4項目をすべて見ているのが長期思考であり、良い売上の管理です。後述しますが、P&Gではブランドマネージャーは、簡易的にここに挙げた8枠(良い売上の4項目、悪い売上の4項目)を把握して管理していました。

順を追って解説します。各枠を見ていただくと、①と②は良い売上も悪い売上も同じです。①初回売上が成立したとして、②そこからの営業利益はどちらも出ないと仮定します。

次に③継続売上について、良い売上は継続していきますが、悪い売上は継続しないものを指します。そして④継続売上からの営業利益に関しては、良い売上は継続する売上があるため、その累計売上から一定の営業利益を見込めます。しかし悪い売上は継続していないため、営業利益を得る売上自体がありません。したがって、④はゼロとなります。

利益を生む唯一の枠:継続売上からの営業利益

ここで、一つ気づくことがあります。ビジネスにおいて、その事業の継続、およびプロダクトを磨き上げることでの顧客への還元の原資としてとても重要な「営業利益」は、ただ一つの枠からしか生み出されていません。「良い売上の、④継続売上からの利益」の枠です。

前出のパレートの法則(2割の顧客が8割の利益を生み出している)は、この図でいうと、黒で囲んだ右上の1枠にほぼ依存していると理解できます。ここを最大化することを意識し、注力しなければなりません。

言い換えると、この枠で捉える売上が大きくならない限り、その事業は衰退します。そして前提として、この枠を意識するためには「良い売上」と「悪い売上」の概念を理解し、「双方を区別して適切な投資配分をしていく」必要があるのです。

P&Gにおける8つの区別と危険信号の察知

筆者が在籍していたころのP&Gのブランドマネージャーは、実質的に8つを区別していました。毎月の売り上げ目標は当然必達なのですが、1年、2年単位での売上額、シェア、そして営業利益も必達なので、毎月、売上とシェアを見るだけでなく、顧客全体での継続率、新規と継続の割合を見ていました。

例えば毎月既存顧客を見ると、前月の新規顧客は今月の既存に入りますが、前月の既存のリピートが30%で、今月の既存の継続率が28%になっていたら、その1ヵ月で「一過性の顧客による一過性の売上」を積み上げている可能性が高いです。そのため危険信号として捉え、マーケティングの中身を見直し、素早く修正をかけます。

それが遅れると、年間での営業利益の達成だけでなく、毎月の売上目標達成への投資も維持できなくなり、売上すら頭打ちする可能性があると予測できます。しかし、3ヵ月以上の長い購入サイクルの商品だったらこれほど細かく見えないので、顧客の声を直接聞いて、継続購入が高くなりそうかどうかを見極めるようにしていました。

良い売上、悪い売上の実務活用におけるパラドックス ービジネスの先行指標の必要性

ただ、この良い売上と悪い売上の概念は、1年2年単位で過去を振り返って「良かった、悪かった」と判断するものではありません。そのような振り返りは意味がないとは言いませんが、今のビジネスにとって適切な戦略や投資を考える上では遅過ぎます。

「利益が出なかった理由は、悪い売上ばかりに投資してしまったからです」と後から結論しても遅いのです。すなわち、「良い売上」と「悪い売上」の実務活用は、リアルタイムで未来予測をいかに素早く正確に行い、素早くPDCAを回すかにかかっていると言えます。

このパラドックスに関して筆者も悩んだ末、たどり着いたのが、冒頭で紹介した9segs(ナインセグズ)の分類で用いている指標「次回購入意向/NPI(Next Purchase Intention)」です。

3つの基本変数である顧客数、購入頻度、購入単価などの指標は、すでに過去に起こった事象に対して目標に達したかを見る遅行指標ですが、「次の機会に・次の機会も購入するか?」の意思を聞くNPIは、マクロミル社との共同研究の結果、このあと目標を達成できそうかという事業成長の先行指標になり得ることがわかっています。

NPIに関しては改めて触れますが、先ほどの表で「未来に利益が上がるであろう顧客に今、投資する」ためには、NPIが役立ちます。筆者の知る限り、現状ではビジネスにおいて唯一の先行指標だと考えています。

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《西口一希》

良い売上、悪い売上