
売上には、2つの“種類”がある
本コンテンツでは、売上至上主義のビジネスに一石を投じる「良い売上」と「悪い売上」の概念と、それをもとにした利益最大化について解説していきます。書籍『良い売上、悪い売上 「利益」を最大化し持続させるマーケティングの根幹』(西口一希著/翔泳社)をベースにしていますので、書籍もご参考ください。
「今期の目標は、売上〇%増だ」
「売上が未達? それなら至急、売上増を見込めるプロモーションを実行しよう」
「え、どんな“種類”の売上でも良いのかって? 何を言っているんだ、売上に種類なんかあるか。とにかく売上額を増やすのが重要だ!」
……これは、本書の内容を知らない架空の上長による、誇張した声掛けの例です。上長から現場へと「売上目標が達成できていないから策を打て」と指示されるのは、よくあることです。本書を手に取られる方々は、少なくとも指示される側の現場経験か、またリーダー層なら指示する側の経験がある方も多いでしょう。
ただ、売上の“種類”というのは、耳にされた方はあまりいないと思います。売上は、文字通り「商品やサービスなどのプロダクトが売れた金額」あるいは「広告収入など、その事業のビジネスモデルにおける収入として得られた金額」です。多くの事業で、売上の総額と、そこから費用を差し引いた利益が財務部門で計算され、利益として報告されます。
売上は集めたが、利益は出ていない「大成功」
どんなビジネスでも売上が上がればすばらしく、売上が下がれば問題であり、その“種類“が問われることはありません。ですが、本稿ではまず「売上には2つの種類がある」ことを提案します。それは「良い売上」と「悪い売上」です。そして、事業成長には「良い売上」を最大化し、「悪い売上」を最小化する必要があること、その見分け方と実践方法を解説します。
これらは、筆者がP&G、ロート製薬、ロクシタン、スマートニュースと複数の事業に関わり、またその後にBtoC、BtoB含め多種多様な業界の450社を超える(2025年10月時点)国内外の企業の相談やコンサルティングを担当させていただいた経験を通して概念化・体系化したものです。拙著『顧客起点マーケティング』(翔泳社)、『顧客起点の経営』(日経BP)などの考え方のベースになっているのはもちろん、誤解を恐れずに言えば多くの方が明確に気づいていない、しかし、あらゆるビジネスの運命を左右する真理だと考えています。
「大成功した」「V字回復した」と話題になった事業やブランドの多くが、その後ニュースにならないことはめずらしくありません。
実は、その大半は、大規模なマーケティング投資や資本投資を行って多くの新規顧客を短期間に集めて売上を上げたものの、ほとんどの顧客が継続(リピート)していない状態になっています。新規顧客による売上から、販管費などの費用や資本投資からの減価償却を引くと赤字であり、売上が上がっても赤字状態が続くことで、徐々に投資ができなくなって苦境に直面している場合が多いのです。
利益が出ないと、投資ができず、衰退する
筆者もそのような失敗を経験しましたが、これは「①新規顧客の獲得が鈍くなって獲得自体が減る」「②新規顧客化からの継続顧客化(リピート顧客化)、残存率が弱いまま継続顧客が増えない」「③ そもそも、継続顧客(リピーター)は少ないのに離反し続ける」といった、三重苦に陥っているのです。
本書で提案する「良い売上」とは、端的に言うと「継続的に利益に貢献する売上」です。「悪い売上」は逆に「一過性で利益に貢献しない売上」です。言い換えると、1回しか購入や利用をせずに離反する顧客からいただく売上です。
同じ1万円の売上でも、利益は大きく変わります。継続的に良い売上を積み上げている事業は、短期的に利益の上下があっても中長期的に利益率と利益額全体が成長しますが、一方で悪い売上を積み上げてしまった事業は、短期的には好調に見えてもいつまでも初期投資を回収できず、売上が伸びても利益率が下がり続けて、投資の継続が難しくなり程なく衰退します。
「良い売上」とは、継続的な利益につながる売上で、高い累計利益を生み出します。
「悪い売上」は、一過性の売上で、ほとんどの場合、損失を生み出します。
この2つを区別できるようになり、継続的に高い利益を生み出す「良い売上を最大化」し、「悪い売上を最小化」して、長期的かつ継続的に高い価値を提案し続ける……ことが、本書のゴールです。
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