2-6-25:2種類のビジネスモデル:単発購入型、継続購入型

顧客起点マーケティング 良い売上、悪い売上
単発購入型は高単価・高付加価値を特徴とし、一度の取引で大きな利益を狙う一方、長期的な利益の確保は難しい傾向があります。
2-6-25:2種類のビジネスモデル:単発購入型、継続購入型
  • 2-6-25:2種類のビジネスモデル:単発購入型、継続購入型
  • 2-6-25:2種類のビジネスモデル:単発購入型、継続購入型
Geminiで生成

売上と利益の種類:ビジネスの健全性を示す指標

ここまでは、世の中のビジネスの大部分である継続購入型(リピート購入型)の解説をしてきましたが、ここで、単発購入型との違いを見ていきます。双方は、利益の「種類」と「目指し方」が違います。

前段で、売上、費用、営業利益の意味と、売上の3つの基本変数、また固定費と変動費、損益分岐点、限界利益率を解説しました。そしてここまで、価値と時間軸による売上と利益の話をしてきましたが、全体を貫く重要な点は「売上から営業利益を生み出すこと」です。

しかし、ここで気をつけていただきたいのは、営業利益とビジネスモデルの関係です。「単発購入型」と「継続購入型」のビジネスモデルでは、営業利益に大きな違いがあります。

ビジネスにおける売上は、事業活動の「規模」を示す指標と言えますが、営業利益は事業の利益性、つまり「儲け」を示す指標です。売上高が大きいからといって必ずしも営業利益が出ているとは限らず、費用とのバランスが重要になります。

利益には、前述のように営業利益、経常利益、純利益など様々な種類がありますが、ここでは売上と利益の関係性を大局的に捉えるため、詳細な区分は割愛します。重要なのは、「どのような売上からどのような営業利益が生まれるのか」という視点です。

では、2つのビジネスモデルを解説します。

単発購入型のビジネス

単発購入型とは、ほとんどの顧客が一生に一度程度しか購入しないような、比較的高価な製品やサービスを提供するビジネスモデルです。

具体的な例:

  • 住宅、結婚式、葬儀、高級車やクルーザー、不動産投資

  • 大規模な建設や工事、企業のM&Aなど

これらの商品は高単価であり、一回の取引で大きな売上と営業利益を出すことを目指します。なぜなら、顧客が再び購入する可能性は低いからです。

単発購入型ビジネスの特徴

  • 高単価:原価や販管費を十分にカバーし、営業利益を確保できる比較的、高い価格設定が不可欠

  • 高付加価値:高価格を正当化するために、プロダクトに独自性、すなわち特別な機能やサービス、希少性、高品質などを付加する必要がある。例えば、住宅であれば高度な耐震性、希少な立地、オリジナル性のあるデザイン、機能が高い特殊な建材、アフターサービスなどが付加価値となる

  • 短期的な営業利益回収:売上獲得のための販管費となる投資や費用(広告宣伝費、営業活動費など)は、比較的短期間で営業利益として回収できることが前提になる

単発購入型ビジネスにおける売上と利益の関係

単発購入型のビジネスでは、高価かつ一回の取引で大きな営業利益を出すことが重要です。そのため、売上に対する利益率が高くなる傾向があります。しかし、高価なプロダクトの購入には顧客も慎重になるため、そもそもの顧客獲得コスト(販管費)も高くなる傾向があるので、より精緻な潜在顧客の絞り込みとプロダクトの魅力的な便益と独自性の提案が求められます。

継続購入型のビジネス

継続購入型(リピート購入型)とは、顧客が何度も繰り返し購入する製品やサービスを提供するビジネスモデルです。

具体的な例

  • 飲料や食品などの日用品、衣料品、化粧品やサプリメント、ゲームやアプリ

  • 美容院やジムなどのサービス、サブスクリプションサービス(動画配信、音楽配信など)

  • B to BのSaaS型サービス

これらの商品は、一回の売上は比較的小さいものの、顧客が繰り返し購入することで、長期的に安定した売上と利益を生み出すことを目指します。

継続購入型ビジネスの特徴

  • 低単価:継続的に購入してもらいやすい比較的に低単価な価格設定が重要

  • 顧客関係性重視:継続購入を促すためには、プロダクトの使用体験での顧客満足度を高め、顧客によるプロダクト使用の習慣化、日常化が重要であり、長期的な関係を築くことが不可欠。さらに、関係維持のためのポイント制度、会員限定特典、丁寧なアフターサービスなども有効

  • 長期的な利益回収:売上獲得のための投資や広告宣伝費、顧客管理システム導入費などの販管費は、短期的な利益回収を目的としていない。むしろ、継続的な使用目的の購入(継続購入)によって利益を積み重ねていくことを目的としている。そのため、初期投資の回収には時間がかかることが多い

継続購入型ビジネスにおける売上と利益の関係

継続購入型のビジネスでは、一回の売上に対する利益率は比較的低い傾向があります。しかし、顧客の継続的な購入によって、長期的に安定した利益を生み出すことができます。

重要なのは、顧客が取引期間を通じて企業にもたらす利益の総額を高めることです。この利益の総額を顧客生涯価値(Customer Lifetime Value:CLTVもしくはLTV)と呼びますが、これは後段で解説します。

ビジネスモデルと3変数の関係を理解する

どちらのビジネスモデルが優れている、というわけではありません。重要なのは、それぞれのビジネスモデルの特徴、すなわち売上の3変数と投資や費用で損益分岐を考え、短期と長期で売上と営業利益をどのように達成しながら継続的成長につなげていくかを具体的に考えることです。

  • 単発購入型:短期的な利益回収を重視し、高単価・高付加価値戦略をとる

  • 継続(リピート)購入型:長期的な利益回収を重視し、顧客関係性構築による継続的な購入を促す戦略をとる

ビジネスを行う上で、短期的な売上と長期的な営業利益のバランスをどのように取るかは、常に重要な課題となります。短期的な売上を優先し過ぎると、長期的な営業利益を損なう可能性があります。逆に、長期的な営業利益だけを重視すると、短期的な資金繰りに苦労する可能性があります。

ビジネスの状況や目標に合わせて、売上獲得のための適切な投資と費用のバランスを、時系列で具体的に企画することが大事です(図2-6)。

まだ会員登録されていない方へ

会員になると、既読やブックマーク(また読みたい記事)の管理ができます。今後、会員限定記事も予定しています。登録は無料です


《西口一希》

良い売上、悪い売上