
購入し、体験して満足なら「価値の再評価」が起こる
では、価値をもう一歩ひも解き、ビジネスの現場で誤解されがちな「価値の評価」について考えていきます。「価値は顧客が見いだすもの」というと、多くの方が「購入前と購入時」の評価として捉えるようです。それはビジネスにおいて一部であり、実はまったく不十分な捉え方なのです。
価値の評価は購入時点だけでなく、一度きりでもありません。プロダクトは、常に顧客の価値の再評価にさらされ、継続購入を左右し続けているのです。
店舗やECなどで製品を購入、あるいはサービスに課金決済した後に、そのプロダクトを「使用し体験」したとき、最も重要な「価値の再評価」が起こります。これが、2回目以降の継続購入を最も大きく左右します(図2-5)。

入手したプロダクトを実際に使ってみて、「期待通りに良かった」あるいは「期待以上に満足した」となれば、「次も買おう(使おう)」という意識が生まれます。一方、「期待外れだった」と感じられれば価値は再評価されず、再購入は想起されません。つまり、一過性の売上となります。
期待外れでも、競合や代替品がなければ「これしかないから仕方ない」と継続購入する可能性はありますが、ほかに有力な候補が登場したとたん、そちらに流れる可能性が高いでしょう。これは「悪い売上」です。
良い売上は、長く継続購入され、利益に貢献し続ける売上であり、悪い売上は一過性の売上だと述べてきました。言い換えると、良い売上を積み上げるにはリピートの実現、継続購入が何より重要です。その点で、マーケターは顧客がプロダクトを購入した後の使用体験時に「価値を再評価」していただけるかどうかに最もこだわるべきです。
これは、製品開発部や商品部だけの責任ではありません。ここまでを、「ビジネスを運命づける顧客による価値の評価である」と捉えることで、マーケターは短期と長期の売上、利益と顧客の関係を視野に入れることができます。
売上増ばかり追うと「悪い売上」が積み上がる
購入前と購入時に「価値が評価」され、対価が支払われることは、売上および利益を得る大前提としてもちろん大事です。どれだけプロダクトに好感を持たれても、購入(広告モデルならば利用)されなければ、ビジネスになりません。
したがって、まず購入されることが大事なのは間違いありません。問題は、マーケターが新規顧客の獲得と既存顧客の維持を一連のものとして理解せず、目先の売上を上げることにばかり注力しがちなことです。そうすると、一過性の「悪い売上」が積み上がってしまいます。
特に新規獲得を目指す部門とCRMやカスタマーサクセスなどの既存顧客リテンションを担う部門が分かれている場合、前者では「新規顧客獲得=初回購入の実現」がゴールになり、自然に一過性の売上を集めてしまいます。
価値が再評価されるとリピートにつながる
ほとんどの場合、初回購入時点では利益は生まれず、その顧客の購入が継続して利益を生み出すようになるかはわかりません。したがって短期的には売上が重要なKPIとならざるを得ず、売上が上がれば見た目ではビジネスが好調のように見えるでしょう。
しかし過度なプロモーションなどで新規顧客の拡大を急ぎ、そのプロダクトに価値を見いだす顧客ではない人まで獲得したりしてしまうと、残存率は低く継続購入につながらず、利益は生まれません。CRMやカスタマーサクセスでは対応が難しいのです。
さらに言うと、プロダクト自体が価値を生み出すような便益と独自性に乏しいにもかかわらず、強引に売ってしまうと、当然ながら「悪い売上」にしかなりません。
初回購入し、使用体験したあとに「もう一度、買いたい」と「価値の再評価」を超えてリピート購入するかどうかが、良い売上と悪い売上の分かれ道です。しかし、新規獲得に注力していると、長期的な売上継続性や利益の積み上がりがどうなるかは視界に入らないのです。
これは、前段の「売上ばかり見てしまうメカニズム」で解説した、個人や部門の評価が売上になっていることや、組織の細分化と分業化の影響も大きいです。組織全体で、顧客と売上の構造を理解し、初回購入だけでなく、2回目、3回目、それ以上のリピート購入をしていただける顧客を見て、「良い売上」と「悪い売上」を構造的に理解することが重要なのです。
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