2-6-28:良い売上をもたらす顧客を育成する ー ロクシタンの事例

顧客起点マーケティング 良い売上、悪い売上
パレートの法則に基づき、利益に貢献するロイヤル顧客を育成することが重要です。また、短期的な施策の罠に注意しながら、長期的なデータ分析と顧客理解を重視しましょう。
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Geminiで生成

シミュレーションで考えるパレートの法則

では、パレートの法則に関して単純なシミュレーションをしてみます。

ある商品を、100人の顧客が購入しました。20人は商品に満足して継続購入し続け、3年間の間に平均16回購入しました。延べ購入回数は、「20 × 16 = 320回」です。一方、残りの80人は商品に満足せず離反しました。この80人の3年間での延べ購入回数は、80回です。

100人の顧客から得られた3年間の延べ購入回数は「320 + 80 = 400回」で、継続購入した顧客の20%が、全体400回の購入回数のうち80%を占めることになります。そして、この80%の購入回数から得られる営業利益は非常に高くなります。

期間をどれだけとるか、商品やカテゴリーやマーケティング活用の内容によって、常に80:20になるわけではありませんが、必ず上位集中します。この顧客の特徴、顧客が何に満足し評価しているのかを理解することで、ビジネスを継続的に、かつ、効率よく伸ばすことが可能になるのです(図2-11)。

集客に注力していたロクシタン

実際の例として、ロクシタンの事例を挙げておきます。利益性の改善を目的に筆者が関わった、化粧品会社のロクシタンジャポンは、当時は集客重視型でした。新規か継続かに注目するのではなく、とにかく集客に注力する戦略です。

そのため、集客効果が高いハンドクリームや新商品を毎年15回も開発投入し、ほぼ3週間ごとに売り場を変更して、集客と売上を支えていました。ですが実際の利益は、過去5年以上、大きく落としていました。

データを分析したところ、コストのかかる新商品開発と、その店頭展開のオペレーション負担を増やしつつ売上を作る構造、すなわち利益を削って売上を支える状態に陥っていました。ハンドクリームや新商品で獲得した顧客は、継続的な顧客になりにくく、累計利益に貢献していなかったのです。

要は、売上を支えるために、長期間にわたって、ひたすら一過性の「悪い売上」を積み上げている状態でした。

適切な顧客分類でロイヤル顧客を分析・育成

1年以上長期で利益をもたらしてくれる顧客を分析すると、自分向けのスキンケア商品を継続的に購入しているという特徴がありました。会員IDをベースにした購入データで、利益ベースで顧客をランキング化したところ、上位は自分向けスキンケアを使っている人が中心だとわかったのです。

一方、ハンドクリームや新商品を購入している層は、月単位の短期間で見れば人数も購入回数も多いためにとても大きなボリュームに見えていましたが、1年で見るとランキングは下位に集中していました。

つまり、主に1年で20%の結果にしか貢献しない顧客に対して、年に15回も、新商品やハンドクリームを提案し続けていたのが問題でした。これらから、長期の80%の結果に貢献する20%のロイヤル顧客を育成するには、スキンケアの提案を軸にすべきであることが明らかになりました。

実際、ハンドクリームや新商品を目当てに来店した顧客に対し、必ずスキンケアを提案してサンプルを提供したところ、継続購入が増えて利益が大きく改善しました。

パレートの法則の罠 ー利益貢献しない顧客にコストを割いてしまう

先のロクシタンの事例で、継続しない80%の顧客に何度も提案を重ねてしまうのが、「パレートの法則の罠」だと言えます。

前出の三角形と逆三角形の図で表すと一目瞭然なのですが、ビジネスをしていると、つい目の前の顧客全員の声、短期間で視界に入る多数派の声に応えようとしがちです。結果的に、「長期で貢献しない8割(大多数)の顧客」に時間やリソースを割いてしまうのです。

例えば飲食店で、今日来店された100人の顧客全員から意見を聞くと、どうしても多数派である80人の印象が強くなります。本当に中長期で通ってくれる20人のロイヤル顧客の声は、その時点では埋もれてしまうのです。

しかし、多数派の80人は一過性の顧客です。80人の声に応えようと改善を繰り返すと、結果的にロイヤル顧客がますます離れるビジネスを作っていく可能性すらあります(図2-12)。

重要なのは、複数回の購入サイクルをカバーする長期間(例えば半年や1年)のデータを振り返り、実際に継続購入してくださっている顧客(=ロイヤル顧客)が誰なのかを特定することです。そして、その方々が「なぜ」ロイヤル顧客になったのか、初回来店時の体験、注文したメニュー、来店目的、利用した予約方法やメディアの流入経路などにおける共通点を探ることです。年齢や業界などの属性に差が出ることもあります。

この「ロイヤル化のパターン」を理解し、そのパターンに合うような新規顧客を獲得していくことが、極めて重要になります。

「今、目の前のすべての顧客に一生懸命尽くすことが、必ずしもロイヤル顧客育成につながるとは限らない、むしろ逆効果の場合もある」。この「パレートの法則の罠」に注意すべきです。そして定期的に長期と短期のデータを振り返り、ロイヤル化のパターンを把握し続けることが大切です。季節やメニュー変更によって、パターンが変わる可能性もあるからです。

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《西口一希》

良い売上、悪い売上