2-6-33:離反顧客の復帰コストと新規獲得コストは区別すべき

顧客起点マーケティング 良い売上、悪い売上
離反顧客の復帰コストは新規獲得より安いため一括で「顧客獲得コスト(CAC)」にしがちですが、双方を混同すると投資対効果(ROI)を見誤るリスクがあります。新規・継続・復帰のコスト構造と利益貢献度の違いを正しく区別して分析することが、適切な投資判断に不可欠です。
2-6-33:離反顧客の復帰コストと新規獲得コストは区別すべき
  • 2-6-33:離反顧客の復帰コストと新規獲得コストは区別すべき
  • 2-6-33:離反顧客の復帰コストと新規獲得コストは区別すべき
Geminiで生成

離反顧客の復帰コストは新規獲得より安い

顧客コストについて、もう少し深掘りしておきます。それは、離反顧客に再び戻ってきていただくためのコスト、つまり「復帰コスト」についてです。

1:5の法則で「新規獲得のコストは既存維持コストの5倍」と述べましたが、このときの新規はあくまで「一度も購入経験がない方」を意味しており、離反した方の復帰になるとまた異なる見方ができます。

離反顧客の復帰コストは、多くの場合、新規獲得よりも安くなる傾向があります。にもかかわらず、実際のビジネスの現場では、これらを一緒くたにして「顧客獲得コスト(CAC)」として扱ってしまっていることが、実は多く見られます。

もちろん、そこまで精緻に管理しなくてもビジネスは回るかもしれません。しかし、厳密にはこれらを一緒くたに扱うことで、施策の投資対効果(ROI)を大きく見誤ってしまうリスクがあります。

その「効率」は本物か? ースマートニュースでの気づき

これを実感した経験として、筆者が以前関わっていたスマートニュースでの例を紹介します。

当時、「最も顧客獲得効率が良い」とされていた広告クリエイティブとして、例えば「ダウンロード忘れてない?」といった、再利用を促すようなメッセージを使ったものがありました。しかしデータを詳しく分析してみると、このクリエイティブに主に反応していたのは、一度アプリの利用をやめてしまった「離反顧客」だったのです。

当時の分析では、その方々も「新規獲得」のカテゴリーに入れてしまっていたため、このクリエイティブの「新規獲得効率」が、実態よりもかなり良く見えてしまっていたのです(図2-18)。

本来、純粋な新規獲得にかかったコストと、復帰にかかったコストは分けて計測し、それぞれから期待される将来の利益(LTV)も、当然ながら別々の計算で見るべきです。そうしなければ「ダウンロード忘れてない?」のような復帰促進を目的としたクリエイティブばかりが、新規獲得施策として高く評価されてしまう、といった判断ミスにつながりかねません。

同じ人を2回獲得する、二重のコストという視点

さらに、サービスが成長して利用者が増える一方で、離反する方も一定の割合で増えてくる状況では、もう一つ注意が必要です。

復帰促進広告の効果で離反顧客が戻ってくるたびに、一見するとその広告の費用対効果は良く見えるかもしれません。しかし、ここで忘れてはならないのは、その「復帰顧客」は、過去に自社が一度コストをかけて獲得した顧客だということです。

つまり累計で見れば、獲得に関わるコストが二重にかかっているとも考えられるのです。この累計コストや、顧客のこれまでの行動履歴/カスタマージャーニー全体でかかったコストを考慮せずに、単に「今回の復帰コストが安いから効率が良い」と判断するのは短絡的かもしれません。

繰り返しになりますが「売上には良い売上と悪い売上がある」という原則、そしてパレートの法則、1:5の法則や5:25の法則といった考え方に立ち返る必要があるのです。

新規顧客から初めて得られた10万円の売上と、継続顧客から得られた10万円の売上、さらに復帰顧客から得られた10万円は、財務会計上の数字としては同じでも、利益への貢献度はまったく異なります。この違いをコスト構造の分析にもきちんと反映させなければ、正しい投資判断を見誤ってしまう懸念があることを常に念頭に置いておきたいです。

まだ会員登録されていない方へ

会員になると、既読やブックマーク(また読みたい記事)の管理ができます。今後、会員限定記事も予定しています。登録は無料です


《西口一希》

良い売上、悪い売上