
LTVが高い顧客 = 良い売上をもたらす顧客
さて、ここまで、次のようなことを解説してきました。
「良い売上」は、利益に貢献する売上
「悪い売上」は、利益に貢献しない一過性の売上
売上の良し悪しは、時間軸を持って長期的に見なければわからない
継続購入型ビジネスの最重要指標は、営業利益ベースで評価した長期間の「LTV」
本項と次項では、LTVを営業利益ベースで考えることを前提に、ビジネスの損益分岐点とLTV、そしてロイヤル顧客の関係性をひも解き、その重要性とビジネスへの影響を詳説していきます。
LTVが高い顧客とは、長期にわたって企業に利益をもたらすロイヤル顧客、すなわち「良い売上」をもたらす顧客です。言い換えると、次の関係が成り立っています。
ロイヤル顧客 = 長期にわたって利益をもたらす顧客 = LTVが高い顧客 = 良い売上をもたらす顧客
つまり、損益分岐点を超えて事業を存続・成長させるには、LTVが高いロイヤル顧客を増やし、良い売上を積み上げる必要があるのです。このメカニズムを複数の観点で明らかにし、なぜ「良い売上の最大化」と「悪い売上の最小化」が重要なのかを解説します。
ただし、ロイヤル顧客も最初は新規顧客なので、新規顧客をないがしろにしてよいわけではありません。その点についても、事例を交えて説明します。
「ユニットエコノミクス」という概念の重要性
これ以降の前提として、ここまでで少し触れた、ユニットエコノミクス(Unit Economics)という重要な概念を解説しておきます(図3-9)。
ユニットエコノミクスとは、ビジネスモデルにおける「基本的な1単位(ユニット)」あたりの利益性とコストの関係性を分析し、事業の健全性や持続可能性を評価する考え方や指標を指します。
簡単に言うと、「事業の基本的なユニット(単位)あたりで、きちんと採算が取れているか」を見るためのものです。ここでの「ユニット」とは、多くの場合、一人の顧客を指します(BtoBの場合は1社のクライアントになります)。

ユニットエコノミクスで特に重要視されるのは、主に次の2つの指標の関係性です。
LTV:一人の顧客(ユニット)が、取引を開始してから終了するまでの全期間を通じて、自社にもたらす累計の営業利益
CAC(Customer Acquisition Cost/顧客獲得コスト):一人の顧客(ユニット)を獲得するためにかかった総費用(広告費、販促費、営業人件費など)
ユニットエコノミクスの核心は、「LTV > CAC」が成立しているか、つまり「顧客一人を獲得するためにかかったコストを、その顧客が生涯を通じて生み出す利益で上回ることができるか?」という点にあります。
ユニットエコノミクスの重要性を示す4つの観点
では、ユニットエコノミクスの重要性を、4つの観点で説明します。
まず、事業の収益性の本質的な評価において重要です。顧客一人あたりで営業利益が出ているかを見ることで、ビジネスモデルが根本的に儲かる構造になっているかを判断できます。
次に、持続可能性および成長性の判断に役立ちます。LTVがCACを上回っていれば、顧客が増えるほど利益も増えるため、事業拡大が理にかなっていると言えます。逆にLTVがCACを下回っていれば、拡大すればするほど赤字が膨らむため、ビジネスモデルの改善が必要だとわかります。
3つ目に、投資判断にも有効です。特にスタートアップやSaaS(Software as a Service)企業などでは、投資家がその企業の将来性や健全性を判断する上で、ユニットエコノミクスは重視する指標となっています。
そして、戦略的意思決定においても重要です。ユニットエコノミクスは、どの顧客セグメントに注力すべきか、マーケティング予算をどう配分するか、価格設定は適切か、といった経営判断の重要な根拠になります。
まとめると、ユニットエコノミクスとは表面的な売上の伸びだけではなく、その裏側で「顧客一人ひとりのレベルで、しっかりとビジネスが成り立っているか(営業利益が出ているか)」という事業の足腰の強さを見るための考え方です。
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