
無意識に「顧客はずっと買い続ける」と思ってしまう
前項で、「同じ売上でも、新規顧客と継続顧客では営業利益は違う」こと、それは「かかる費用が大きく違うから」だと述べました。
もう一つ、「良い売上」と「悪い売上」の概念を理解するために重要なポイントを解説します。それは「顧客は必ず離反し、既存顧客の残存率は100%にはならない」ことです。
ここでいう残存率とは、一般的な継続率(リピート率)と同じです。もう一度買うかどうかというより、顧客として残っていただけるかという意味を強調するため「残存率」としました。一般的な離反率との間には、「100(%)-離反率 = 残存率」という関係があります。
基本的に、事業においては新規顧客の獲得を軸としながらも、2度以上購入や利用する方=既存顧客の継続購入(継続利用・リテンション)の向上に注力します。ですが日常のビジネスでは無意識のうちに、一度購入した顧客はずっと継続してくださる前提で見通しを立てている場合が多く、「既存顧客は必ず離反する」事実が売上と利益の管理に反映されていません。
よく見かけるのは、新規ブランドで1年間右肩上がりで立ち上がりが良い場合に、2年目、3年目を同じ成長率で右肩上がりを予測していたり、そうでなくでも微減していく程度の予測を立てたりして、実際に2年目、3年目となったときに予測を大きく外す結果となる場合です。身近な事例でも、あるのではないでしょうか。
新規顧客の「残存率」を加味して予測すべき
このように、期待しがちな右肩上がりとは、獲得した新規顧客の全員が残存して、継続購入し続けることを前提としています。少しでも離反すれば、それを補うために新規顧客の獲得数を増やし続ける必要があるので、新規顧客の獲得数が一定であれば、時間が経つと累計の離反顧客数が大きくなって、右肩上がりは必ず止まります。
どんな事業でも、新規顧客の全員が残存することはありません。まず、初回購入からの2回目残存率は激減します。カテゴリーにもよりますが、良くても10~30%でしょう。その後、3回目、4回目と残存率は60~90%へと高くなりますが、いずれにしても離反は続きます。
どんなにすばらしいビジネスでも、2年目、3年目、中長期では、この新規顧客からの残存率を加味して売上と利益を予測しなければなりません。
ここで考えていただきたいのは、前述の「新規顧客ばかりだと赤字になる」点です。ならば継続の強化に大きく軸足を置けばいいかというと、それは違います。なぜなら、説明したように「既存顧客は必ず離反する」からです。
では、何に注力すればいいのでしょうか? それは、次の2つに集約されます。
既存顧客の継続を最大化しながら、
“継続する可能性の高い”新規顧客の獲得を選択的に最大化し続ける
継続顧客は、実際にプロダクトを使用・体験して価値を感じていただいている方なので、プロモーションをせずとも自発的に継続購入してくださる確率が高い顧客です。また、新規顧客の獲得のために不特定多数の方に向けて広告やプロモーションを打つより、すでにメールアドレスやLINE IDがわかっている既存顧客にダイレクトにお知らせするほうが、コミュニケーション費用も安価です。
将来の利益を左右する「継続顧客候補」の見極め
先ほど、「新規顧客の獲得を単独で見れば赤字」だと説明しました。
もしその方が継続購入を繰り返してくださったら、新規獲得時に発生した赤字は徐々に補填されていきます。つまり、新規顧客のうち「将来、継続顧客になりやすい人」の割合を多くできれば、新規獲得時の赤字をより早く効率的に回収する見込みが立ちます。そして、それが将来の利益性と利益額の高さにつながるのです。
逆に「一過性(1回購入で利益が出ないままの離反)で終わってしまう人」がほとんどだと、永遠に利益向上の期待はできません。単純な値下げプロモーションなどは、プロダクトの価値となる便益や独自性の魅力ではなく、単なるお得感で顧客を引きつけていることが多いので、一過性の顧客を多く集めがちです。
売上をKPIとして重視している場合、そうした活動に注力すると短期で売上額は上がります。そして、その短期の手応えを得てさらにプロモーションを継続しがちですが、結果として全体の売上に占める一過性の顧客の割合が増え、継続購入の顧客の割合は低くなり、利益は下がります。
さらに、前述のように、利益性の高い既存顧客(リピーター)も永遠ではなく、一定数が必ず離反します。つまり、その離反する既存顧客(リピーター)を補填し、さらに増やすために、潜在的にリピーターになりやすい新規顧客を多く獲得し、リピーターに育成し続けることが、どんなビジネスでも必須になります。
ここまで解説した新規顧客化や継続顧客化(ロイヤル顧客化)、また離反と復帰の流れを簡易的に図解したのが、図9です。このように表すと、顧客の動きに関するマーケティングの役割は、①ロイヤル顧客の強化、 ②一般顧客のロイヤル化、③新規顧客の獲得、④離反の防止・復帰、の4つに集約されることがわかります。

まだ会員登録されていない方へ
会員になると、既読やブックマーク(また読みたい記事)の管理ができます。今後、会員限定記事も予定しています。登録は無料です

