2-6-23:利益性へのダブルインパクト

顧客起点マーケティング 良い売上、悪い売上
価値の高いプロダクトは高価格での販売やコスト削減を可能にし、利益と持続性を最大化します。
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Geminiで生成

価値の違いから生まれる異なる力学

前項で、良い売上は成長スパイラルに乗ることができ、悪い売上は赤字に向かうデススパイラルをたどることを解説しました。

2つのスパイラルの違いを、価格と費用と営業利益の関係で考えてみます。図2-3の左側のグラフをご覧ください。これは「顧客からいただく価格」の分から、費用を引いたものが営業利益になることを示しています。

左側を基準として、中央はWHO(顧客)とWHAT(プロダクト)に「高い価値」が成立している場合、右側は「高い価値」が成立していない(価値が低い)場合です。矢印で表している、「時間の経過とともに利益性に対してどのような力学が働くのか」を解説します。

中央:高い価値が成立している場合

  • 価格(単価)アップ:顧客はそのプロダクトに「これは便利だ!」「これは他にはない!」といった価値、他の競合にない価値を感じている。そのため、多少高くても競合品や代替品を考慮せず、自社プロダクトを「それだけの価値がある」と思って買ってくれるので、安売りする必要がない。もっと高くても買ってくれるかもしれないため、単価(価格)アップも可能になる

  • 費用ダウン:「価値が高い」とは、顧客が求める機能や品質が便益や独自性として十分に備わっているということ。そのため、継続購入のために既存顧客へ販売促進をする必要が少なくなる。また、価値が高ければ、既存顧客を起点として、コストのかからない口コミの広がりで新規顧客の自然獲得も期待できる。さらに顧客満足度も高いため、クレーム対応やカスタマーサクセスなどのフォローアップのコストも抑えられ、固定費も変動費も下げていくことが可能になる

  • 利益アップ:価格は高く、全体の費用は低いので、結果として営業利益は大きくなる

右端:価値が低い場合

  • 価格(単価)ダウン:顧客は、そのプロダクトを購入したものの「これはどこにでもある」「これじゃなくてもいい」と思っている。そのため、値上げが困難どころか、他の競合や代替品と比較され、他よりも安くしないと売れなくなるので価格競争に巻き込まれやすく、価格がダウンしがち

  • 費用アップ:競合と比較される中で売るためには、継続的に販売促進が必要で、割引キャンペーンを行ったりする必要がある。売るための営業人員の増加や、流通業者などへの販売促進の強化、カスタマーサポートの強化への費用も増える。また、品質や機能が不十分だと、クレーム対応や返品対応などのコストも増える

  • 利益ダウン:価格は安く、費用は高くなるので、結果として営業利益は小さくなる。最悪の場合、費用が価格を超え、赤字になってしまうこともある

財務的、管理会計的には、どちらのケースも左端の図としてしか表されません。ですが、WHO(顧客)とWHAT(プロダクト)にどのような価値が成立しているのかで、利益性に対してまったく異なる2つの力学が働くことを理解しておきたいです。

これこそが、継続的かつ長期的なビジネスを構築するためにマーケターがマネジメントすべき「利益性へのダブルインパクト」です。

営業利益を最大化するプロダクトとは

このメカニズムを、事例で考えてみます。例えば、ある会社が新しいスマートフォンを開発したとします(図2-4)。

価値が高い場合

そのスマートフォンには、他社にはない革新的な機能(例えば、非常に高性能なカメラや唯一のAIアシスタント)が搭載されていて、デザインも洗練されています。顧客は「このスマホはすごい!」「他のスマホとは違う!」と感じ、多少高くても購入します。会社は宣伝費用を積み上げる必要もなく、高い利益を得ることができます。使用者の評価が高ければ、口コミが広がり、無償の販売促進が拡大します。

価値が低い場合

そのスマートフォンは、他社のスマホとほとんど同じ機能しかなく、デザインも平凡です。顧客は「これなら他のスマホでもいい」と思い、価格が安くないと買ってくれません。会社はたくさん宣伝したり、割引キャンペーンを行ったりする必要がありますが、それでもなかなか売れず、営業人員や販売店強化のための費用が嵩み、利益は低くなります。

「価値」の高さこそが、ビジネスの成否を大きく左右する

改めて、図を見てみましょう。この図が示しているのは、「プロダクト(製品・サービス)に顧客が見いだす『価値』の高さこそが、ビジネスの継続的な売上と利益の伸長を決める」ということです。

価値の高いプロダクトを提供すれば、価格競争に巻き込まれることなく、費用も少なく、高い営業利益を得ることができます。逆に、価値の低いプロダクトは価格競争に巻き込まれやすく、費用も必要となり、利益自体を出すことが難しくなります。

この考え方は、あらゆるビジネスに当てはまります。飲食店であれば料理の味やサービス、洋服店であればデザインや品質、コンサルティング会社であれば専門知識や実績など、それぞれのビジネスにおいて顧客が「価値」を見いだす便益や独自性は異なりますが、その価値を高め続けることが、ビジネスであると言えます。

マーケティングは、顧客が「欲しい」と思って購入しうる便益と独自性をプロダクトを通じて提案し、価値を創出し、その価値を高め続けることを目指します。

自社の製品やサービスであるプロダクトが提供する便益と独自性に、顧客が高い価値を見いだし、それ以降も高い価値を感じ続けていただくことがすべての土台です。高い価値は、高い価格、そして低い費用を実現し、高い営業利益とビジネスの継続性につながるのです。

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《西口一希》

良い売上、悪い売上