2-6-51:ロイヤル顧客の定義が曖昧だと、いずれ利益性を損なうメカニズム

顧客起点マーケティング 良い売上、悪い売上
ロイヤル顧客は「継続的に高い累計利益をもたらす顧客」と定義され、長期的な購入頻度や継続性を指標とすべきです。
2-6-51:ロイヤル顧客の定義が曖昧だと、いずれ利益性を損なうメカニズム
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ロイヤル顧客を明確に定義すべき理由

自社ビジネスにおいて、ロイヤル顧客(優良顧客、得意客、ファンetc…)という言葉を使用しながらも、その定義が曖昧なまま使われているケースは非常に多いです。この定義が曖昧であれば、その他の一般顧客との区別が曖昧になります。

すると事業育成にとって、どの顧客層に何をすべきか、何を優先すべきかの戦略性が曖昧となり、無駄な投資や費用が積み上がります。また当然のことながら、定義が曖昧なので、ロイヤル顧客の増減や、増減を左右する行動変化に注目することができません。

ロイヤル顧客は、自社ビジネスやプロダクトの購入頻度、購入単価、継続率(リピート率)が他の顧客層より高いため、短期での売上増を期待されがちです。実際にロイヤル顧客は、他の顧客層に比べてその事業主やプロダクトに信頼や愛着が強いので、同じ事業者やプロダクトからの新しい提案や施策提案を受け入れがちです。そのため、短期で売上増につながることが多いです。

よって、売上増加、売上予算の達成を目的に、多くの事業主やプロダクトはロイヤル顧客向けに、新商品やサービス、関連購入アイテム提案、大量購入割引、ポイント付与、クーポンなど施策や提案に傾注し、売上を求めます。

過度な提案がもたらす離反の危機

しかし、これらは例外なしに限界を迎えます。徐々にロイヤル顧客が求める以上、受け入れられる以上の過度な提案や施策となるからです。そして購入単価の高止まり、購入頻度や継続率の低下、およびプロダクト自体からの離反につながります。

その変化は、急激には起こらず徐々に起こるので、この問題に気づかないまま、費用対効果の悪化、過剰投資からのロイヤル顧客の離反増となり、利益性およびLTVの毀損につながってしまいます。

売上の勢いが少し鈍化してきた、費用対効果の改善が頭打ちしてきた、販売促進への反応が落ちてきたなど、ビジネスの現場で日々起こる変化や兆しは、ロイヤル顧客の毀損が背景にある場合が多いです。

しかしこのような場合に、「ロイヤル顧客の毀損」という可能性を考えず、新たな刺激策、プロダクト提案、より多くの投資や費用のかかる施策に走りがちです。ロイヤル顧客は誰なのか、ロイヤル顧客に何を期待するかを明確に定義していないがために、その行動変化に気づかない状態となっているのです。

ロイヤル顧客を「累計利益」で再定義する

ロイヤル顧客の定義は、その他の一般顧客に対して何が違うのかだけでなく、事業主としてロイヤル顧客にどうあって欲しいのか、どんな状態になっていただきたいのかのビジョンが必要です。

ロイヤル顧客を語る際に、長期の売上、長期の利益、購入単価、購入頻度、購入の継続性(リピート率)、好感度など、様々な言葉が使われますが、どのようなビジネスにおいても「『継続的に高い累計利益をもたらしてくれる顧客』は、一体誰なのか」をロイヤル顧客と定義することを勧めます。

定義が曖昧であっても、事業にとって最重要な顧客がロイヤル顧客であることに異論はないと思いますが、あらゆる事業の継続性は長期的な累計利益を土台としており、最重要な顧客がその貢献を担います。もし他の顧客層が、今のロイヤル層以上に累計利益に貢献するならば、その層をロイヤル顧客とすべきです。

この、ロイヤル顧客の定義 = 「継続的に高い累計利益をもたらしてくれる顧客」は、LTVを最大化する顧客となります。では、この層を定義する指標は何が良いかですが、長期間での高い購入頻度(もしくは長期間での継続性)を勧めます。

購入頻度と累計利益の強い相関

筆者は40を超える複数カテゴリーで相関関係を調べてきましたが、顧客別に見た場合、長期間での累計利益は長期間での累計売上に高く相関し、累計売上は購入頻度(購入の継続性)の高さに相関します。

一方で購入単価は、累計売上に相関することがありますが、累計利益にはあまり相関しません。新アイテム提案での関連購入や大量買いなどの販売促進で購入単価を上げて、累計売上を増やすことができても、購入頻度の低下や離反を誘引する可能性が高いので、結果、累計利益までつながらないということかと推測されます。

好感度は、累計利益だけでなく累計売上自体にも、ほとんど相関は見られません。この機会に、自社プロダクトで相関関係を分析してみてください。

また、事業やプロダクトが属するカテゴリーによって、「長期間」の定義を考慮することも重要です。高い購入頻度(購入の継続性)をロイヤル顧客の指標とするには、そのカテゴリーの平均購入頻度を複数回捉える期間を「長期間」とすべきです。

例えば、購入頻度が2~3ヵ月に1回のヘアケアシャンプーであれば、購入頻度4~6回となる「1年間」での購入頻度の高さを指標とします。毎日購入の可能性があるスーパーマーケットなどでは、「過去1ヵ月の間に20日以上購入される方」などをロイヤルとして、それ以外をロイヤル以外とします。

あるいは7~8年と平均購入期間が長い自動車であれば、「前回も今回も同じ銘柄を買った方」をロイヤルとして、前回は違う銘柄を買った方は一般顧客とするなど、購入の頻度(継続性)を捉えるための期間を選択すれば良いです。

パレートの法則による売上の上位集中

ロイヤル顧客を定義する期間、頻度(継続率)の組み合わせは、カテゴリーによって異なりますし、絶対の基準はありません。しかし、ロイヤル顧客層は全体の顧客総数の少数でありながら、全体売上の大部分を占めることになります。パレートの法則(2:8の法則)でいう上位集中となります。

2:8はあくまで経験則の象徴数字ですが、長期間で見た場合、およそ数%~30%くらいの顧客数であるロイヤル層が、その長期間の累計売上の60%~90%の累計売上を占めることになります。実際に自社の購入データを使って、いくつかの期間と頻度の組み合わせで顧客を分類し、目安として、長期間での累計売上で定義を決めてください。

理想的には累計の営業利益で見るほうが正確ですが、顧客別の利益を正確に把握する財務データが整っていない場合がほとんどですので、簡易的に累計売上で分類してください。一方で、累計利益は累計売上に相関していることを確かめておきたいです。定義したロイヤル顧客の利益貢献は、他の一般顧客よりも高い事実の確認です。

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《西口一希》

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