
「売上向上≒利益向上」という昭和の神話
利益ではなく売上にばかり目が向く3つの理由、3つ目を解説していきます。
③ 昭和の時代は売上が上がれば利益も上がっていたので、今もその感覚をひきずっている
これは見出しに挙げたように、昭和の時代、特に高度成長期(1955年ごろ~1973年ごろ)の話です。今、20~30歳代の方にはイメージしづらいかもしれませんが、3つ目に解説したいのは、売上にばかり目がいってしまうことのマクロ的な背景です。
戦後から高度成長期を経てまだ成長していた1990年までの日本には、満たされないニーズが多くあり、いいモノを発売すれば飛ぶように売れ、売上の伸びと同じだけ利益も増大していったビジネス環境がありました。人口は右肩上がりに増えていたため、BtoBでもクライアント数が増え、良質なプロダクトを提供しさえすれば顧客数は増え、売上と利益は比例して伸びていったのです。
様々な参入障壁で海外企業との競争は少なく、売上額を追求すれば利益もついてきて、事業成長の見通しが立っていました。 特に日用必需品、加工食品、自動車、家電をはじめとする大量生産できるプロダクトの場合、作れば作るほど規模の経済が働いて生産コストが下がります。すると製品一つあたりの原価や様々なコストが下がり、利益は売上の伸び率に応じて伸びます。
大量生産・大量消費の時代は終わった
一方、昭和から平成の時代に移り変わると、日本の人口の伸び率は徐々に下がり、2011年(平成23年)を境に人口の実数は継続的に減少していきます。並行してこの数十年、技術の発展などでモノが飽和し、また生活者は多様化・分散化して、例えばカラーテレビなど「全世帯が一斉に同じ商品を買い求める」といった現象は起きなくなりました。
多くの人が一つのモノを求めることで企業が利益を上げられる、大量生産・大量消費の時代ではなくなっています。さらに、参入障壁が撤廃されていく中で国際的な競争も激しくなり、伸びない市場でも過当競争になってきました。
現代ではもはや、「良いプロダクトなら皆が買ってくれて売上が上がり、生産量が増えれば生産コストが効率化して利益も増大する」という単純な図式が成り立たなくなりました。
今、私たちビジネスパーソンが直面しているのは、「いいモノを作っても売上に対して右肩上がりに利益が伸びるわけではない」という、平成以降からの現実なのです。だから「売上を上げる」のではなく、戦略的に「利益につながる売上」に集中する必要があります(図6)。

しかしながら、長年の商習慣のせいか「売上が上がれば利益も上がるのでは?」という過去の前提が実務に浸透しているようです。先に解説したように、若い方々も、短期間での総顧客数や総売上をKPIとする実務を通じて、すでに通用しなくなっている過去の前提の影響を受けています。
「利益が大事」なら、売上を分類しなければいけない
もちろん、問いかければすべての方が「利益は大事だ」とおっしゃいますが、実務で「初回購入の顧客」「2回目購入の顧客」など分けて売上と利益を把握しているかと聞くと、ほとんどの方が答えに詰まります。「利益は大事だ」と認識しながら、売上総額もしくは顧客数・クライアント数の総数を追いかけています。
顧客を区別した上で利益を追うのは、直販のECや、顧客を会員化して購入行動を追うことができる事業以外はたしかに難しいものです。ましてや、販売代理店や流通小売を通して販売しているメーカーなどは、そもそも、誰が購入しているのか顧客の実像がわからないので、無意識に売上の分類に目を向けていないこともあると思います。
ですが、このような事業でも、顧客の動きを捉え、売上を区別する方法は複数あります。この方法は、後段で解説します。
3回にわたり、「売上にばかり目が向いてしまう構造」を解説しました。売上と利益は異なること、そして事業成長には売上よりも利益のほうが大事であるとわかりながらも、私たちは売上を追いかける環境にあるとも言えます。
およその生活の必需品が満たされ、今後、生活者の購入行動はますます多様化・分散化し、それは不可逆です。かたや、売上から費用を引いた残額が利益であることは、ビジネスの大原則として今後も変わりません。だからこそ、戦略的に利益が大きくなる売上を見極めて集め、費用がかさんで利益が少ないかマイナスになるような売上は避けることが最重要になります。
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