2-6-6:売上に目が向く理由②:売上は短期的に伸ばせる

顧客起点マーケティング 良い売上、悪い売上
短期的には売上はすぐに伸ばせますが、利益は長期的に顧客の継続や質を見極める必要があります。安売りは短期向けの施策です。
2-6-6:売上に目が向く理由②:売上は短期的に伸ばせる
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利益はすぐに数字が動かない

利益ではなく売上にばかり目が向く3つの理由、2つ目を解説していきます。

② 利益は短期的に大きく伸ばせないため、すぐに数字が動く売上の向上に注力しがち

どの企業、どの事業でも、月次、四半期、年度単位などの期間単位で売上を管理しています。月次、四半期、年度単位ですべての顧客の売上を合計するというのは、新規顧客からの1回限りの売上も、継続性の高い顧客からの利益性の高い売上も、一緒くたに管理していることです。

つまり、「それぞれの売上がどの顧客に由来しているか」「その顧客の利益貢献はどれだけか」を把握できていないので、月単位などのKPIは、新規顧客数、合算としての総顧客数と総売上やそれらの伸び率になるのです。結果、売上を伸ばす施策の企画は可能ですが、利益を伸ばす施策の立案は困難です。

このような状況で短期で利益を上げるには、「売上-費用=利益」の費用部分をカットするしかないのですが、費用のカットには限界がある一方で、売上増への投資ができなくなり、売上も利益も縮小し続ける……という状況も起こります。

良い売上と悪い売上を把握するには、期間で区切った合算売上ではなく、初回購入の方、2回目購入、3回目購入やそれ以上の継続購入、といった継続性に応じて顧客を区別して把握する必要があります(図4)。

「良い売上」を見極めるための時間軸

良い売上と悪い売上を分類するための「時間軸」の重要性を、もう少し掘り下げて考えてみます。例えば今月、プロモーション費用を投じれば、施策がよほど的外れでなければ売上額にはすぐに反映されます。ですが、その施策が利益につながるかどうかは、今月の売上になった新規獲得した顧客と継続顧客が、一定期間が過ぎてどうなるかを見ないと判明しません。

仮にシャンプー製品なら、リピートの機会は2~3ヵ月後になるでしょう。今月に費用をかけて獲得した顧客の全員が一過性で離反するか、それとも長期にわたって利益をもたらすロイヤル顧客になり得るかは、2~3ヵ月後でないとわからないわけです。ちなみに「ロイヤル顧客」は、購入頻度や購入金額がすでに高い人を意味し、自社プロダクトの業種・カテゴリーや事業ステージに応じて「月に〇個以上購入する人」「毎週利用する人」などで定義していただいてかまいません。単に好感度が高い方、強い愛着がある方などは、本書では対象としません。必ず、実際の購入(利用)行動に表れている方を指します。

安易な売上拡大が招く、長期的な利益毀損のリスク

一方で、日々ビジネスを運営する中で、すぐに売上を好転させなければいけない状況があるのも現実です。その場合、とにかく急いでプロモーション施策を打ち、目先の顧客数と売上を引き上げようと努力します。

キャンペーンやイベントや限定プロダクト投入などに費用を投じて需要を喚起すれば、よほど方向性がずれた施策でない限り、短期間にある程度の売上を伸ばすことができます。売上を伸ばすのは、利益を伸ばすよりもはるかに簡単です。

もっと単純に考えると、安売りや値引きクーポンを提案すれば需要を喚起し、既存顧客も新規顧客も伸びて、瞬間的には値引き分を補う程度には売上を引き上げられるでしょう。ただ、そこで獲得できるのはほとんどが安値に惹かれた顧客で、競合がより安く売ればすぐに離反してしまいます。

また、既存顧客であるリピーターが値引きで購入する場合、それは将来の消費の先取りなので後の買い控えを招き、長期的に考えればプラスマイナスゼロになるか、もしくは安売りによってブランドのイメージやブランドに期待する価値が下がり、せっかくのロイヤル顧客やその候補の顧客の気持ちが離れてしまう懸念さえあります。つまり、利益を考えなければ売上はすぐに伸ばせるのです(図5)。

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《西口一希》

良い売上、悪い売上