2-6-43:ID POSデータを使った基本的な顧客分析

顧客起点マーケティング 良い売上、悪い売上
POSデータを用いた顧客の購買動態分析では、顧客のランキング変化からロイヤル顧客や離反顧客を分類します。そのうえで、特徴を比較しながら戦略立案に活用します。
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Geminiで生成

ランキングの変化から顧客をグループ分けする

3つの分析のうち、5segsと9segsのフレームワークは作成にアンケート調査が必要になります。一方、はじめに紹介する「ID POSによるカスタマーダイナミクス」は、社内の顧客管理データやPOSデータを使った最も簡易的で基本的なカスタマーダイナミクス分析になります。これは、比較的多くの企業で取り組みやすい分析だと思います。

方法はシンプルです。まずPOSデータを使って、顧客(IDごと)の過去の売上ランキングと、直近までの累計での売上ランキングを作成し、その「変化」を見ます。これだけでも、顧客がどう動いているか、大まかな傾向が見えてきます(図4-2)。

ランキングの変化を見ることで、顧客をいくつかのグループに仮分類することができます。例えば、次のとおりです。

  • 3年前も直近3年累計もランキング上位にいる方は「継続的なロイヤル顧客」

  • 3年前はいなかったけれど直近3年累計に来た方は「最近ロイヤル化した顧客」

  • 逆に3年前は上位だったのに直近3年累計にランクインしていない方は「離反顧客」

図4-2のIDで解説すると、01や02番の方は3年前も直近も上位なので、ロイヤル顧客(良い売上をもたらす顧客)と言えます。一方、3年前には入っておらず直近3年累計のランキングのみに登場している20や40番の方は、最近ロイヤル化した顧客です。一方、3年前にのみ現れている04や06番の方は離反顧客、というイメージです。

これはあくまで、仮の分類です。本当にロイヤルなのか、離反してしまったのかを最終的に判断するには、個々の顧客の購入履歴を詳しく見て「ランク内でどう動いたか」を確認します。

例えば、直近3年累計で上位ランクにいなくても、下位ランクに名前があれば、それは離反ではなく購入頻度や額が減っただけ、という判断ができます。もし、どのランクからも完全に消えていれば、離反の可能性が高いと考えられます。

ロイヤル顧客の「特性」を定義する

こうして分類ができたら、次に「ロイヤル顧客」と「離反顧客」や「その他一般顧客」とで、何が違うのかを分析します。購入履歴はもちろん、どんな接点で私たちの商品に触れてきたか、これまでのプロモーション施策への反応、あるいは住所などのデモグラフィック情報に違いはあるか、といった点を比較します。

もし、それぞれの顧客に連絡が取れてご協力いただけるなら、個別にお話を聞く「N1分析」が有効です。それが難しければ、前述の購入履歴や属性などから「どういう方がロイヤル顧客になりやすいのか」という潜在的な特性を明らかにしていきます。

実際のロイヤル顧客の初回購入を見れば、どんな属性の方がどのアイテムを買い、その際の流入経路はどのような広告やメディアを経てたどり着いたか、その後の継続購入ではどのアイテムを継続し、どのアイテムを継続しなかったのか、の詳細な変遷分析が可能です。

その結果を離反顧客の変遷と比較すれば、必ず、内容に差異が見つかります。その差異に着目すれば、ロイヤル顧客になりやすい潜在的な顧客、つまり新規獲得すべき顧客を定義することができるのです。

このような分析をもとに、将来ロイヤル顧客になりそうな方々に対してどんな商品を提案すべきか、どう接触し訴求するのが効果的か、どの購入経路を強化すべきかといった戦略に落とし込み、投資を集中させます。そうしてロイヤル顧客の数を最大化し続けて、ひいては「良い売上」を最大化していくことを目指すわけです。

この表で流入と流出を比較し、分析することによって、誰に何を提供すればいいのかという「顧客戦略(WHO & WHAT)」が見えます。それを成立させる施策を重ねていくと、勝ちパターンのWHOとWHATの組み合わせ、また負けパターンのWHOとWHATの組み合わせが明らかに見えてきます。これを時系列で捉えることを、ぜひ実践していただければと思います。

POSデータからは“見えない”顧客がいる

ただし注意点は、POSデータを使った分析では、どうしても「見えない」顧客がいるということです。それは、自社プロダクトを知ってはいるけれどまだ買ったことがない方や、そもそもプロダクトを知らない方々、つまり、市場にいるはずのこれから獲得すべき潜在的な新規顧客層です。

前出の飲料Xの例でいうと、先週の時点で買ったことのあるAさんとBさんは捉えられても、Xを知っただけのCさんは捉えられません。

顧客管理データ、POSデータは、あくまで「購入経験のある顧客」の動きしか把握できないのです。市場に膨大にいるはずの、Xをまだ知らない潜在顧客、Xを知っているけれども購入経験のない潜在顧客の人数も、その動きも見えないのです。

この、まだ顧客になっていない層も含めた市場全体の動き(ダイナミクス)を把握するためには、定量的なアンケート調査などが必要になってきます。それが、次に解説する「5segsカスタマーダイナミクス」および「9segsカスタマーダイナミクス」です。

もし、自社のPOSデータが顧客IDでひもづいていない場合は、そのひもづけは必ず行ってください。顧客データの統合など、システム等の手間はかかりますが、顧客動態をつかむことから得られる顧客理解はマーケティングの費用対効果を大きく高めることができます。

ID POS分析から得られる顧客の解像度はビジネスに圧倒的な差を生み出します。このひもづけやシステム構築に時間がかかるようなら、それを進めつつ、次に紹介する5segsを実行することをお勧めします。

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《西口一希》

良い売上、悪い売上