
福田氏との対話を通して気づいたこと
ここからは、2019年に刊行され今なお厚く支持されている書籍『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(翔泳社)著者、福田康隆氏へのヒアリングおよび監修協力をいただいて掲載します。後段には福田氏によるコメントを掲載しますので、ぜひご参照ください。
同書は、BtoB領域、とりわけSaaS(Software as a Service)ビジネスにおける営業とマーケティングのプロセスを整理し、数値管理することで効率的な成長を可能にするフレームワーク「THE MODEL」を解説した書籍です。
BtoBマーケティングは、BtoC同様に5segs・9segsや良い売上と悪い売上の考え方が成り立つ点など、共通する部分もありながら、一方で独自要素もあります。購入までのプロセスが長いことや、利用者と購入決裁者が異なることなどが、その特徴として挙げられます。BtoB領域に触れたことのない読者の方には、本章はなじみが薄いかもしれませんが、知見を広めるためにも参考にしてください。
今回、BtoB領域における良い売上と悪い売上を考えるにあたり、「THE MODEL」を正しく遂行することがそのひとつの解だと考えました。同時に、筆者自身のBtoB領域のコンサルティングにも同書を参考にさせていただいている立場として、福田氏が意図していない形で、文字通り形式的にモデルを適用して「THE MODELを実行している」つもりになっている事業主も多いのではないかと感じていました。
そうした疑問も踏まえて福田氏に話を聞く機会をいただいたところ、福田氏も「THE MODELを運用する上での大事な視点を伝えたい」という思いを、書籍の反響が大きくなるにつれて感じられていたとのことでした。
その誤解を端的に表すと、まず共業ではなく単なる分業だと捉えられていること。その上で共業のプロセスは本来双方向であるべきなのに、一方向に捉えられていることと、カスタマーサクセスはプロフィットセンターであるべきなのにコスト部門になっていることです。併せて、カスタマーサクセス部門を置くことが本質ではなく、その機能に着目すべきだと、福田氏との対話を通して気づきがありました。
では、THE MODELの新規性を解説した上で、良い売上・悪い売上との接続、生じている誤解とその是正について、またBtoB領域のLTV向上について考察していきます。
THE MODELは従来と何が違うのか
分業をベースにした"The Model"というフレームワークは、もともと米国のセールスフォース・ドットコムで実践されていた営業プロセスのモデルです。そこから「共業」の側面を重視し、その体制を構築・実践した一人が同社に勤めていた福田氏であり、書籍の発刊を機に「THE MODEL」という名称が生まれました。書籍がBtoBのマーケティングや営業に携わる方々に広く受け入れられたことで、この概念が普及しました。
THE MODELが従来のモデルと何が違うのか、端的にまとめておきます。従来のBtoBモデルは、一人の営業が見込み顧客獲得(リードジェネレーション)、育成(ナーチャリング)、商談設定から契約、アフターフォローまで、営業プロセスのすべてを一貫して担当するのが一般的でした。この場合、プロセスが属人的で、ブラックボックス化しやすいという課題がありました。また、売って終わりになりがちでもありました。
一方、THE MODELは営業プロセスを整理して、分業の副作用を解決するために共業(部門を横断した共通の目標設定など)まで示しているのが特徴です。データに基づいた、パイプライン(見込み客が顧客になるまでの一連のプロセス)の可視化と最適化を実現しています。次のように大きく4つの専門部門に分け、各部門が専門性を持つことで、営業活動全体の成果を高めます(図6-1:福田氏の図案をもとに筆者作成)。

マーケティング: リード(見込み客)の獲得
インサイドセールス: リードの育成と商談機会の創出
営業(フィールドセールス):顧客との対面商談と契約締結
カスタマーサクセス: 契約後の顧客の成功支援と継続利用の促進
カスタマーサクセス部門が営業プロセスの重点を担う
THE MODELでは、各部門の活動と成果を徹底的に数値化(KPI設定)します。例えば、「マーケティング部門が獲得したリード数」「インサイドセールスが創出した商談数」「営業(フィールドセールス)が締結した契約数」「カスタマーサクセスによる顧客継続率」などが明確な指標になります。これらを管理することで、ボトルネックを発見しやすくし、データドリブンでPDCAを回して生産性を向上できます。
また、BtoCではあまり聞かれない「カスタマーサクセス」部門を、営業プロセスの重要な一部と位置づけている点が革新的です。図中で、カスタマーサクセスから左側の3部門にそれぞれ矢印を描いていますが、カスタマーサクセスからのフィードバックが重要になります。取引を単発で終わらせず、顧客との長期的な関係性を構築し、継続的な利用やアップセル・クロスセルを通じてビジネスを最大化するという、現代のサブスクリプション型ビジネス(SaaSなど)に特に適した考え方です。
こうした新規性により、THE MODELは従来の属人的でブラックボックス化しやすい営業プロセスから脱却し、組織的かつデータドリブンな営業戦略を実現することを可能にしました。
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