2-6-34:「良い売上」はLTVが高い ー時間軸で見る売上と利益

顧客起点マーケティング 良い売上、悪い売上
単月売上だけを見る短期思考では1回で離反する赤字顧客を見抜けず、一過性の「悪い売上」を積み上げてしまいます。時間軸を持って顧客起点で累計利益を捉える長期思考こそが、継続購入による「良い売上」を最大化するために不可欠です。
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「良い売上」における時間軸の重要性

ここからは、売上と利益を時間軸で捉え、継続型ビジネスの最重要指標であるLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)について学んでいきます。

まず、短期思考と長期思考について解説します。すべてのビジネスには、1回きりの購入で離反してしまう顧客が残した損失を、継続購入し続けている既存顧客から得た利益で埋めているという構造があります。長期で継続してくださっているロイヤル顧客のAさんやBさんから得た利益は、1回で離反したEさん、Fさん、Gさん……にかけた費用と相殺されているのです。

短期的に売上を追う短期思考だと、その売上に占める新規顧客と既存顧客の影響が見えにくいので、この構造は見えません。時間軸をもって顧客の購入行動を初回購入から継続購入までのつながりで見る、長期思考が必要です。

それを表したのが、図3-1、3-2、3-3です。ここでは単純化して、毎月の購入単価 = 1円、月の平均購入頻度 = 1回として計算しました。空欄は、購入なし = 離反した状態です。

図3-1の1月を見てみます。AさんからJさんまでの10人全員が、プロダクトを等しく購入していました。しかし2月になると早くも6人が離反し、次々と減っていきます。5月から12月までは、AさんとBさんの2人のみが継続していました。

期間ごとの短期思考と顧客起点の長期思考

この表には、2種類の見方があります。それを表したのが図3-2です。まず悪い売上の見方から解説すると、短期間、ここでは単月で、都度の売上しか見ていません。表でいうと、縦軸でのみ見ており、「1月の売上は計10円」「5月の売上は計2円」といった形で売上を管理しています。そのため、売上の増減はわかっても、「6人は初回購入で離反している = 損失を出している」などはつかめません。

一方、良い売上の見方は図3-2左側に示したように、顧客起点で短期と長期累計の売上すべてを把握します。このような見方をすると、6人が初回購入で離反していて、年間を通じて継続している顧客は2人、とわかります。

累計売上で可視化される「利益の源泉」

さらに、右端に「累計売上」の欄を足した、図3-3をご覧ください。良い売上を最大化し、悪い売上を最小化するために必ず把握したいのは、累計の売上です。それがわかれば、そこからどのくらい利益が得られているかもわかります。

例えばこの例で、新規獲得に2円かかり、単純化して原価と既存顧客維持などの販管費を無視すると、Eさん、Fさん、Gさん、Hさん、Iさん、Jさんはそれぞれ-1円の赤字です。復帰の見込みがなければ、これをそれぞれの顧客から回収するめどは立たず、他の顧客から得た利益で埋めなければなりません。同様に、Dさんは±0円、Cさんは2円の累計利益となります。

そしてAさんとBさんは10円の累計利益となり、良い売上をもたらしている顧客であることが明白です。縦列だけで見ている限り、その月に購入した顧客は一律で1円の売上なので、AさんやBさんと、EさんやFさんとを区別することはできないのです。

短期思考が悪い売上の積み上げを招く

この表において、縦列でしか見ていないのが短期思考です。前段で、短期的な売上を上げるのは容易だと述べましたが、短期思考は縦列だけを見て、その時期ごとの売上を拡大しようとします。すると、一定数の新規を獲得した場合にリピーターになる顧客の確率はたいてい低いので、結果として一過性の売上への投資が増えてしまうのです。つまり、次につながらない一過性の売上、悪い売上を積み上げてしまう思考と言えます。

一方、縦列だけでなく、横列の顧客起点で、その短期の売上は継続するのか見て、次につながる売上をもたらす顧客を集めるのが長期思考です。この表の実態を長期思考で捉えると、AさんやBさんのような方をいかに拡大するかを考え、そうした方の獲得を増やしていくことが得策 = 長期の利益につながるとわかります。縦だけでなく、顧客起点で長期的に見たときにどうなのかを考えていきます。

もし新規顧客の流入が少なく、売上が小さく見えても、継続する顧客が多いほうが利益は大きくなります。これが、目先の売上にとらわれないことが大事である理由です。このように時間軸をもって、短期思考ではなく顧客起点で短期と長期の売上と利益を把握すると、良い売上を最大化し、悪い売上を最小化していくことができます。

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《西口一希》

良い売上、悪い売上