
LTVはどう計算されているか
では、BtoBにおいてLTVがどう計算されているかを見ていきます。
ここまでで述べたように、BtoC企業では、LTVを売上ベースで計算するケースが非常に多く見られます。BtoBにおいても同様に売上ベースでLTVを算出する企業は多いものの、福田氏によると、これをCAC(顧客獲得コスト)で割って指標とすることで、結果的に利益ベースのLTVに近い概念で運用されています。新規顧客獲得にかかるコストと、その後の顧客維持コストをLTV計算に含めるため、ほぼ営業利益に近い考え方となっています。
成約後のLTVを算出する際は、「当期に契約更新予定の契約金額のうち、いくら契約更新されたか」を契約更新率(GRR:グロスリテンションレート)とするのが一般的です。また、解約率(Churn Rate:チャーンレート)は同様に「当期に契約更新予定の契約金額のうち、いくら解約されたか」を示し、ここに「1 -解約率 = 契約更新率」という式が成り立ちます。
ただし、一部の企業では解約率の分母を「その時点での累計契約全体」を対象にして計算することがあり、前述の式が成り立たないケースがあるため、福田氏は是正すべきだと指摘しています。筆者の印象では、このような計算方法を採用している企業の方が多いくらいです。利益責任を追う役職ないし部門が、これらの数値を厳しくチェックする必要があります。
なお福田氏によると、スタートアップの企業の場合はリテンションレートが将来にわたって現在の数値を維持できるかは不透明なため、LTVの数字自体の信頼性が薄れる点には留意が必要です。 売上が伸びているにもかかわらず営業利益が伸びていない場合でも、企業が健全な投資を行えているケースは、契約更新率が着実に伸びていることを社内で明確に確認できているからです。この重要な指標を確認せずに投資を続けることは、非常に危険な経営判断と言えます。
利益責任を負う立場につくなら、当たり前ですが最低限のファイナンス知識は必要です。ただ、必ずしもすべて自分で読める必要はありません。ファイナンス部門の助言があれば判断できるレベル感と捉えていただくといいでしょう。
フィードバックする"機能"が重要
カスタマーサクセスや、全体に横串を通す役割について解説してきましたが、強調しておきたいのは、部門や役職を置くことが重要ではないことです。
売上と利益性の管理をそもそも誰がやるのかがはっきりしていれば、横串を通す役割をつくらなくてもいいでしょう。逆に、カスタマーサクセスがあっても、本来の機能を果たしていなければ意味がありません。利益につながっている、良い売上をもたらす顧客を見極めて、一過性の顧客なら注力しない、無駄な投資をしない。損失が出ている状態で売上を支えることはしない。そうした判断ができる組織かどうかが本質です。
キャッシュフローがマイナスなら、売上を支えるために様々な活動をしても、損失が大きくなるだけなので、ストップする判断が必要です。一方、プロダクトを気に入り継続的に使っている顧客に対しては、さらに満足してもらえるようなプロダクトやサービスを開発して、売上利益を伸ばしていきます。
これらを「誰がやるか」が問題で、カスタマーサクセス部門があっても必ずしも機能を担えていない状況が多いのです。
THE MODELを導入して組織を整えても、部門内外とも「カスタマーサクセスはお客様サービス部門」という意識では意味がありません。中小企業では組織がなくとも、前述のように社長が行うか、営業トップが担うこともあります。財務部門がリードして、売上利益の継続性を見ている企業もあります。
企業は、継続的に利益を生み出す売上をつくることで存続するので、誰が担ってもいいと思いますが、必ず誰かが担わなくてはなりません。むしろその議論をせずに、カスタマーサクセスを設けて安心するくらいなら、設けないほうがいいのではないかというのが筆者の見解です。
THE MODELはBtoBにおけるひとつの理想形ではありますが、形だけ模倣してもうま く機能しません。顧客を増やし、売上、長期的な利益を伸ばすためにどうすべきかのモデルであり、そのベースには良い売上と悪い売上の考えがあって然るべきです。
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