2-6-42:「顧客動態/カスタマーダイナミクス」とは何か?

顧客起点マーケティング 良い売上、悪い売上
顧客の心理変化や行動の動態を捉え、離反や継続を分析することで、利益の最大化とリスクの最小化を図ります。また、「顧客動態分析」によって最適なマーケティング施策を実現し、持続的な成長を促します。
2-6-42:「顧客動態/カスタマーダイナミクス」とは何か?
  • 2-6-42:「顧客動態/カスタマーダイナミクス」とは何か?
  • 2-6-42:「顧客動態/カスタマーダイナミクス」とは何か?
  • 2-6-42:「顧客動態/カスタマーダイナミクス」とは何か?

顧客の立場だと、1回で離反したプロダクトは山ほどある

ここまでで、良い売上と悪い売上の概念と、ビジネスにおいてなぜこの考え方が重要なのか、大枠はご理解いただけたかと思います。

活用される企業も増えてきた指標「LTV」を長期間の営業利益ベースで見なければいけないことや、売上と利益を顧客起点で、短期と長期の時間軸で捉えるべきことも、ぜひ念頭に置いてください。

さて、ここからは「どの顧客が利益につながる売上をもたらしているのか?」を実務上で把握するための「カスタマーダイナミクス分析」の方法を、難易度の低い順に3つ解説していきます。

このうち2つ目の「5segs(ファイブセグズ/顧客ピラミッド)」と3つ目の「9segs(ナインセグズ)」については、拙著『顧客起点マーケティング』(翔泳社)および『顧客起点の経営』(日経BP)で詳説しているため、フレームワーク自体はご存じの方もいらっしゃるかと思います。ここでは、良い売上の最大化・悪い売上の最小化という観点で主に解説しますので、参考にしてください。

前提として「顧客動態/カスタマーダイナミクス」とは何なのかを解説しておきます。

一度、プロダクトを購入いただいて「顧客」になった方は、ずっと「顧客」でい続けてくださるような幻想をなぜか私たちは持っています。ですが、既存顧客は、いかに優良顧客であっても、必ず一定数は離反していくことを前述しました。

これは自分が顧客の立場になってみるとわかるのですが、1回きりしか買わなかった製品や、利用しなかったサービスは、山のようにあるはずです。しばらくリピートしたけれど離れてしまったプロダクトを含めたら、それがほとんどではないでしょうか。ごくわずかなプロダクトのみ継続しているという人が多いはずです。

心理の変化が行動を変える

顧客は常に動いています。購入行動の変化の背景にある心理が、日々変わるからです。企業はその変化をよく捉えた上で、それぞれ異なる心理状態の方に対し、最適なアプローチをする必要があります。

例えば、次のような例を見てみましょう(図4-1)。ある飲料Xについて、Aさん、Bさん、Cさんの3人の対象顧客がいるとします。

Aさんは飲料Xをよく買うロイヤル顧客で、先週も通勤途中のコンビニで購入しました。今週、別のメーカーの新商品Yを知り、少し心惹かれましたが、結局Xを買いました。来週はわかりませんが、コンビニにはいつも寄る習慣があるので、継続購入の可能性は高そうです。

このとき「ロイヤル顧客」は、プロダクトの業種・カテゴリーや事業ステージに応じて「月に〇個以上購入する人」「毎週利用する人」など自社で定義してかまいません。また、後述しますが、ロイヤル顧客以外の現在顧客を「一般顧客」と称します。

BさんはXを時々買っている一般顧客ですが、今週は別のメーカーの新商品Yを知り、そちらを買ってみたところ気に入ったので「来週も買おう」と思いました。この場合、BさんはXからは離反し、Yの継続的な顧客になりそうです。

Cさんは、先週立ち寄ったコンビニで初めてXを知りました。そのときは買わず、今週、XとYが並ぶ中でXを手に取り買ってみました。ですが、そこまで気に入りませんでした。Cさんは来週コンビニに立ち寄っても、Xは買わなさそうです。つまり初回購入のみで離反してしまったと言えます。

属性ではなく「動き」に注目する

こうした顧客の動きは、企業側で統制しきれるものではありません。オンライン、オフライン含めた多種多様なメディアや小売チャネル、そこで目にする競合の情報や、知人友人の口コミなどによって、その心理と行動は変わり続けます。この顧客の動きを「顧客動態/カスタマーダイナミクス」と称し、それを捉えるフレームワークを「カスタマーダイナミクス分析」と表しています。

筆者が提唱するカスタマーダイナミクス分析は、顧客という存在を、ある一時点の属性や売上だけで捉えるのではありません。時間とともに顧客の認知と行動、およびプロダクトやブランドとの関係性がどのように変化していくかという「動き(動態)」に注目するアプローチです。ここで紹介する3つの分析のうち、5segsと9segsは、顧客を認知の有無や購入経験で分類(セグメンテーション)し、動態を追っていきます。

そして、顧客と企業との関係性がどのように変化しているかの「流れ」を可視化し、分析します。

例えば、「初めて買ってくださった顧客のうち、どのくらいの方が継続してくださるのか」「安定していたロイヤル顧客が、どれくらいの割合で離反してしまっているのか」といった動きを見るわけです。

このような顧客の「動態」を見て事業の現状を正確に把握し、次に打つべき手を的確に判断するのです。どこに成長余地やリスクがあり、どの顧客層を増やし、どの顧客層の流出を食い止めるべきかがわかれば、各セグメントに対して最も効果的なマーケティング施策を、ピンポイントで打つことが可能になります。

最終的な目的は、この顧客動態に基づいた施策を通じて、顧客一人ひとりのLTV(もちろん営業利益ベースです)を高め、「良い売上」を最大化し「悪い売上」を最小化することで持続的な利益の成長を実現し、その利益を再投資することで顧客に提案する価値を磨き続け、より多くの人により多くの価値を見いだしていただくことです。

まだ会員登録されていない方へ

会員になると、既読やブックマーク(また読みたい記事)の管理ができます。今後、会員限定記事も予定しています。登録は無料です


《西口一希》

良い売上、悪い売上