
一過性の「購入」に固執するリスク
マーケティングの教科書で学ぶ購入行動モデルとして有名な「AIDMA(アイドマ)」や、インターネット時代のモデルである「AISAS(アイサス)」は、消費者が製品やサービスを認知し、特定の行動(主に購入)に至るまでの心理プロセスを捉える枠組みです。
しかし、これらのモデル、特に古いAIDMAに代表されるような初回の購入時点“のみ”に固執することは、現代のビジネスを捉える上で不十分であり、注意が必要です。
なぜなら、購入(Action)までを主な目的とする思考は、ともすれば一過性の売上、つまり顧客との長期的な関係性やLTV(顧客生涯価値)を考慮しない「悪い売上」の追求につながりかねないからです。これは、未充足のニーズが多く、競争も比較的緩やかで、市場自体が拡大していた(例えば人口増加時代の)マスマーケティング中心の考え方とは親和性が高いものでした。
ここで、各モデルを簡単に見てみましょう。
AIDMA(アイドマ):1920年代に提唱された伝統的なモデル。マスメディアが情報源の中心だった時代を反映している
Attention(注意):存在を知る
Interest(興味):興味を持つ
Desire(欲求):欲しいと思う
Memory(記憶):記憶する
Action(行動):購入する
AISAS(アイサス):2000年代に電通によって提唱された、インターネット普及後の消費行動モデル。消費者が自ら情報を探し(Search)、購入後に情報を共有(Share)する点が特徴
Attention(注意):存在を知る
Interest(興味):興味を持つ
Search(検索):ネットなどで情報を調べる
Action(行動):購入・体験する
Share(共有):感想などをSNSやレビューで共有する
購入プロセスを含めた長期の顧客体験を捉える
AISASは、購入後の「共有(Share)」を含む点でAIDMAより現代的であり、共有された情報が他の消費者のAttentionやInterest、Searchにつながるという循環も示唆しています。しかし、このAISASでさえ、そのプロセス自体を短期的な初回の「Action(購入)」の獲得のため“だけ”に最適化しようとすると、AIDMAと同様の落とし穴にはまる危険性があります。
つまり、これらのモデルを「いかにして顧客に一回買わせるか」という視点“のみ”で捉えると、購入後の顧客満足度向上、継続利用の促進、ファン化といった、長期的に良好な関係を築き、安定した「良い売上」を生み出すための視点が完全に抜け落ちてしまうのです。
初回購入はゴールではなく、顧客との長い関係性の始まりに過ぎません。したがって、AIDMAやAISASのように購入プロセスを考えることは必要ですが、それをビジネスの“全体”と捉えるのではなく、価値の再評価からの継続購入まで、より長期での顧客体験やLTVを最大化する視点を持つことが不可欠です。
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