2-6-12:どうすれば「利益ベース」で評価できるか?

顧客起点マーケティング 良い売上、悪い売上
売上重視の評価体制を見直し、長期的な利益と「良い売上」を重視した段階的な制度改革が必要です。
2-6-12:どうすれば「利益ベース」で評価できるか?
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売上至上主義が招く「増収減益」のリスク

前段で、利益ではなく売上にばかり目が向く理由の一つ目として「部門や個人の評価が売上額になっている」ことを挙げました。

多くの企業で、個人の業績評価は売上目標の達成度合いに大きく左右されます。しかし、短期的な売上のみを追求する姿勢は悪い売上を積み上げ、長期的には企業の収益性を損なう「増収減益」や、さらには事業の衰退を招きかねません。

「増収増益」を達成し、持続的に成長するためには、この「売上至上主義」の評価体系を見直し、企業活動の最終目的である利益を適切に評価に組み込む必要があります。

とはいえ、利益を個人評価に組み込むのは容易ではありません。評価が月次や四半期といった短期で行われる場合、すぐに成果が見える売上に偏りやすい傾向があります。また、日本企業では、営業やマーケティング担当者が利益責任を負わないことも多く、評価の軸が売上に限定されがちです。さらに、LTV(顧客生涯価値)や顧客の継続性といった「良い売上」の概念は、短期的な数値に落とし込みにくいため、評価への反映が難しいという課題もあります。

では、どうすればいいのでしょうか。利益を評価に組み込むための基本原則として、「良い売上を最大化し、悪い売上を最小化する」考え方を適用してみます。

具体的には、①長期視点を重視し、②良い売上への貢献を評価します。また、詳しくは後段で扱いますが、③LTVを最大化します。さらに、適切な顧客分類によって、④どういった顧客が良い売上をもたらすかを理解し、その育成と維持への貢献を評価します。

利益を個人評価に組み込む5つの具体策

この基本原則に基づき、利益を個人の評価に組み込む方法として、次の5つが考えられます。

まず、①営業利益ベースのLTVを活用し、顧客との長期的な関係性が利益にどうつながっているかを評価します。ロイヤル顧客の維持率や獲得数、顧客離反率の改善度なども有効な指標です。

次に、②利益率や営業利益額そのものの目標達成度を、担当範囲(プロダクト、顧客、プロジェクトなど)ごとに評価することも有効です。ただし、新規顧客の場合は初回赤字も想定されるため、将来的なLTVを示せるかどうかも重視すべきでしょう。

これらの定量的評価に加え、③プロセス評価の導入も不可欠です。たとえば、顧客インサイトの発見、N1インタビューの実施、WHO&WHATの組み合わせである「顧客戦略」の明確化など、良い売上につながる行動そのものを評価に含めることで、現場の努力が正当に認識されるようになります。

また、④利益貢献には時間がかかるため、評価期間も柔軟に設計する必要があります。短期的な売上だけでなく、LTV向上など中長期的な貢献も評価対象とすることで、持続可能な行動が促進されます。

そして、⑤良い売上の創出は個人だけで成し遂げられるものではないため、チーム評価の導入も重要です。部門やプロジェクト単位でのLTV向上や利益達成に対しても、報酬が分配される仕組みが必要でしょう。

理想を現実に変えるための、段階的な導入ステップ

このような評価制度の導入を成功させるためには、まず経営層の強いコミットメントが欠かせません。また、「良い売上」や「ロイヤル顧客」といった概念の定義を社内で明確に統一し、共有することが求められます。

これらの評価を機能させるには、売上、コスト、LTVなどを顧客単位で可視化できるデータ基盤の整備も必須です。併せて、社員への教育や研修を通じて財務リテラシーの向上を図り、「なぜ利益を重視するのか」という意識を浸透させていく必要があります。

……と、理想を提示しましたが、実際に筆者がコンサルティングさせていただく現場でも、個人評価まで一気に利益ベースに変えられるケースはありません。

実際には、まず、(1)実施したマーケティングに関しては、販促活動の投資対効果について、売上の“増分”に対する投下費用や投資額の効果測定を行います(当たり前の評価ですが、これすら実施していないところが多いのが現実です)。

次に、(2)売上ではなく営業利益でおおまかに計算したLTVを導入し、評価します。

(3)そして、ID POS分析やアンケート調査を通して、顧客と売上の継続率の評価を行い、それを「利益性への貢献」として間接的に評価します。

急激な変更ではなく、このように段階的に始めるほうが、実行しやすいのではと思います。制度改革は一朝一夕には実現できませんが、まずは一部部門で試験導入し、運用しながら改善を重ねていくことで、現実的かつ着実な導入が可能になります。

このような改革が、売上ばかりを追う状況から脱却し、「良い売上」を積み上げる文化へと組織を変えていく起点になります。組織を変えられる立場にある方は、諦めずに取り組んでいただきたいです。

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《西口一希》

良い売上、悪い売上