
悪い売上を“増収”しても、利益は増えない
多くの企業が「増収」、つまり売上高を伸ばすことを短期的な目標としがちです。しかし、その売上が将来の利益につながる「良い売上」でなければ、かえって経営を圧迫し、「増収減益」から抜け出せない状況に陥ります。これを、売上には「良い売上」と「悪い売上」の2種類があるという点で考えてみます。
良い売上: 継続的に利益に貢献する売上。ロイヤル顧客からの安定した購入や、LTV(顧客生涯価値)が高い顧客と商品からもたらされるもの
悪い売上: 一過性で利益に貢献しない、あるいは損失を生む売上。過度な値引きキャンペーンや、短期的な話題性を狙った新商品投入などで一時的に得られるものの、顧客が定着しない場合などがこれに該当する
「増収減益」の多くは、この「悪い売上」を積み重ねた結果として現れることが多いです。
短期の売上目標達成のために、利益を度外視した販売促進策を打ったり、顧客の継続利用が見込めない新規顧客獲得に多額のコストを投じたり、新商品を投入し続けたりすることで、売上高は一時的に増加(増収)します。しかし、それに伴うコスト増(広告宣伝費、顧客獲得コスト、新商品開発費など)が利益を圧迫し、結果として減益となるのです。
一時的に売上を集めて「V字回復」しても続かない
一度「悪い売上」の構造に陥ると、そこから「良い売上」中心の体質へと転換するのは容易ではありません。具体的には、次のような問題があります。
顧客の質の問題:「悪い売上」で獲得した顧客は、価格の安さや一時的な新商品の魅力に惹かれたケースが多く、製品やサービスの本来の便益や独自性を評価しているわけではない。そのため、継続購入につながりにくく、LTVも低くなりがち。こうした顧客は、より有利な条件を提示する競合や新商品が現れれば容易に離反してしまう
「ミルフィーユの崩壊」:新商品を次々と投入して売上を維持しようとする戦略は、一見すると売上を積み上げているように見える(増収)。しかし、前述の「ミルフィーユの崩壊」という現象が示すように、後から投入された商品は既存商品よりも継続率が低く、売上の頭打ちも早い傾向がある。各層が薄く積み重なった売上構造は、個々の商品が次々とピークアウトすることで、ブランド全体の売上が急速に悪化するリスクをはらんでいる。これは、利益を伴わない「悪い売上」を積み重ねている状態であり、持続的な利益成長にはつながらない
短期志向の罠:部門や個人の評価が短期的な売上額にひもづいていると、どうしても目先の数字を追いかける「短期思考」に陥りやすくなる。その結果、長期的な利益貢献よりも、すぐに数字として現れる売上増に注力し、「悪い売上」を集める施策を繰り返してしまう
「大成功した」「V字回復した」と話題になった事業の多くが、その後ニュースにならなくなるのは、大規模な投資で短期間に多くの新規顧客を集めて売上を上げたものの、ほとんどの顧客が継続せず、赤字状態が続くためです。これはまさに、「増収減益」の典型的なパターンです。
良い売上を追求する経営へと舵を切る
「増収減益」から脱却し、持続的な「増収増益」を実現するためには、事業の本質に立ち返り、「良い売上」を最大化し、「悪い売上」を最小化する戦略への転換が不可欠です。 そのためには、次の点が重要になります。
LTV(顧客生涯価値)の重視:売上ベースではなく、営業利益ベースでLTVを把握し、LTVの高いロイヤル顧客の育成と維持に注力する
顧客起点の長期思考:短期的な売上増減に一喜一憂するのではなく、顧客との長期的な関係構築を通じて、継続的に利益を生み出す構造を作る
価値提案の強化:顧客が真に価値を見出す製品やサービスを提供し、その価値を高め続けることで、価格競争に陥らず、安定した利益を確保する
真の「増収増益」を達成するためには、目先の売上にとらわれず、TLVを重視し、顧客との長期的な関係を通じて継続的に利益を生み出す「良い売上」を追求する経営へと舵を切る必要があります。この本質的な転換なくして、「増収減益」から「増収増益」への好転は難しいと言えるでしょう。
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