
評価のために「売上額」を注視してしまう
前項では、利益ではなく売上にばかり目が向く3つの理由を提示しました。まず、一つ目から解説します。
① 部門や個人の評価が「売上額」にひもづいているため、おのずと売上を追いかけてしまう
これは単純な話で、「自分の仕事は売上を上げることである」「売上を上げれば部門や自分自身の評価が上がる」という環境にいれば、売上の向上が最重要事項になって当然です。なので、現時点で「売上ばかり追いかけて利益を気にしていなかった」あるいは「本書を読んでも、立場的に利益を追求できるわけではない」と思う方も、ほとんどのマーケターや営業の方がそうでしょうから、気後れする必要はありません。
それはあなたのせいではなく、「短期で評価しようとすると売上しか指標にならない」という構造的な問題が原因です。
外資系企業の多くは、数年目のマーケターにも売上だけでなく利益責任を課すことが多く、また経営に近い役職になるほど、利益目標を達成できなければあっさり解雇になります。筆者も新卒でP&Gに入社してブランドマネージャーになってからは、KGI、KPIとして毎月のブランドの売上、新規顧客の獲得数、既存顧客の継続率などに加えて、四半期、半年、1年単位で売上から費用を差し引いた利益の責任を負っていました。新卒で入社したので、そんなものかと四苦八苦しましたが、一般的な日系企業ではそうした評価体系は導入されていません。
短期評価の仕組みが「売上至上主義」を生んでいる
「ならば毎月、利益の評価を加えよう」としても難しいです。ほとんどの場合、利益は継続顧客から得るものなので、今月の間に新規獲得した顧客が継続して利益に貢献するかどうかは、短期ではなく四半期、半期、1年、場合によってもっと長期間で見なければわからないからです。
これは、そのプロダクトの平均購入サイクルによります。例えば牛乳なら数日、動画配信のサブスクリプションサービスなら1ヵ月、ヘアケア製品なら2~3ヵ月、あるいは自動車なら7~8年と幅がありますが、前述のように筆者が勤めていたころのP&G製品なら購入サイクルが2~3ヵ月なので、利益は四半期、半年単位、1年で把握し、短期では売上と新規顧客と継続顧客の割合と継続率の増減を指標として見ていました。
つまり、そのカテゴリーの平均購入サイクルより短期で評価をするなら、継続顧客よりも、その短期で獲得可能な新規顧客数と売上を指標の主体にせざるを得ません。そして、短期で見る限り、売上を引き上げても「利益が上がるかどうか」はわからないのです。
多くのマーケターのKPIは、ここで設定されています。なので結果として、カテゴリーの平均購入サイクルより短期で評価をする場合、意図せずに、新規顧客の獲得と新規顧客からの売上への投資に偏って、実質的に長期の利益を毀損し続ける状態に陥るのです。
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