
主要12分野・24種のマーケティングに続いて、残り89種のマーケティング手法を事例とともに解説しています。
本項では、リバースマーケティング、リファラルマーケティング、リレーションシップマーケティングを解説します。
リバースマーケティング (Reverse Marketing)
企業から顧客へと情報を発信する、従来の一方的なマーケティングとは異なり、顧客が主体となって企業に対して自らのニーズや要望を伝え、その情報を基に企業が製品やサービスを提供するマーケティングです。顧客がアクティブな役割を担い、企業は顧客からのフィードバックや要求に応じて、よりパーソナライズされた価値を提供することを目指します。
良品計画:良品計画は、顧客からのフィードバックを積極的に商品開発に取り入れることで知られています。顧客の意見を基に改善を重ねた家具や衣服など、使い勝手が良くシンプルなデザインの商品が多くの支持を得ています。また、顧客からの要望に基づいて、特定の商品のサイズや色のバリエーションを増やすなど、顧客のニーズに応じた製品展開を行っています。
ダイヤ(DAIYA):家庭用品とゴルフ用品を主力事業とするダイヤは、製品企画のアイデア募集制度として、一般の人からアイデアを募集しています。アイデアが採用されると応募者に連絡が入り、製品化に向けたステップに進みます。このアプローチは、顧客を商品開発プロセスの中心に置くリバースマーケティングの好例といえます。実際に、同社が開発した「洗濯ネット」と「ゴルフティー」はグッドデザイン賞を受賞し、日本市場におけるトップブランドとして成功を収めています。
リファラルマーケティング (Referral Marketing)
リファラルマーケティングは、既存の顧客が友人や家族、知人を紹介する形で新規顧客を獲得するマーケティングです。人々が信頼する個人からの推薦のため、非常に効果的であるとされています。リファラルマーケティングの成功は、顧客が製品やサービスに満足していること、そしてその満足が他人と共有したいと思うほどであることが前提となります。多くの企業では、紹介者と新規顧客の双方に報酬や割引を提供することで、このマーケティングを促進しています。
劇団四季:劇団四季のキャンペーン「一緒に行こう♪メール」は、友達や家族を観劇に誘うためのメールシステムです。自分でチケットを購入するのではなく、誘った相手にチケット購入を促すという独特の仕組みを採用しています。このアプローチにより、新規顧客の獲得と既存顧客の再訪を同時に促進することに成功しています。
ウーバー(Uber):ウーバーは、既存のユーザーが新規ユーザーを紹介すると、紹介者と新規ユーザーの双方に乗車クレジットを提供するキャンペーンを行っています。この手法により、ユーザーベースの拡大を促進しながら、新規顧客にサービスを試すインセンティブを提供しています。
リレーションシップマーケティング (Relationship Marketing)
リレーションシップマーケティングは、顧客と長期的な関係を築き、維持することを目的としたマーケティングです。単発の取引を超えて、顧客との深い信頼関係を構築することで、リピート購入や顧客のロイヤルティを促進します。リレーションシップマーケティングの焦点は、個々の顧客とのコミュニケーションと対話を強化し、顧客が抱えるニーズや問題に対応するカスタマイズされたサービスを提供することにあります。
ホンダ自動車(Honda):ホンダは、車を購入した顧客に対して、カーナビゲーションシステムの定期的な更新サービスを提供しています。このサービスは、顧客が最新の地図情報を保持できるようにすることで、顧客満足度を高めるとともに、長期的な顧客関係を構築します。顧客はこのようなアフターサービスを通じて、ホンダとの関係を価値あるものと感じ、ブランドへの忠誠心が高まります。
アマゾン(Amazon):アマゾンは、顧客が以前に閲覧または購入した商品に基づいて、パーソナライズされた商品のレコメンドを提供します。顧客の購入嗜好を学習し、一人ひとりに合わせた商品を提案することで、顧客体験の向上を図っています。このような個別化されたアプローチにより、顧客はアマゾンとのつながりをより個人的なものと感じ、リピート購入が促進されます。
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