顧客との関係を強化するブランドマーケティング
ブランドマーケティング(Brand Marketing)は、特定のブランドの価値やイメージを向上させ、顧客との関係を強化し、結果として市場での位置付けや競争力を高めるマーケティング戦略です。ブランドの認知度を高め、信頼性を構築し、顧客に一貫したメッセージを提供することで、製品やサービスに対する好意や忠誠心を育てます。
ブランドマーケティングを意味するブランドという用語自体は、古くからプロダクトの識別するネーミング、ロゴ、デザインなどの記号として使われていましたが、マーケティング文脈でのブランディングが生まれたのは1970年代から1990年代です。マスマーケティングとマス広告の発達の中で、調査では計測し難い感情を作る何か、アート、クリエイティブに近い概念として広まりました。
1991年にデービッド・アーカー教授が、著書『Managing Brand Equity』で、ブランドの価値を定量化し管理する対象として「ブランドエクイティ」という概念を提唱し、普及していきました。ブランドが単なるロゴや名前を超えて、顧客に価値を提供するものとして理解されるようになりました。ブランドエクイティは、ブランドの価値を測る枠組みとして広く受け入れられています。
しかし、ブランドエクイティの理解と実務への応用に関して、優れたブランドとなった結果としてのブランドエクイティと、その優れたブランドを作り上げてきた原因(要因)の本末転倒な混同など、様々な誤解が生まれています。マーケティング分野で最も過剰期待と過小評価が起こっている分野です。
次に紹介するブランドの創業年度を見てもわかるように、強いブランドを作るブランディング、ブランドマーケティングは、何らかの単発的なマーケティング施策ではなく、プロダクトのイノベーションや開発強化を中心に、長い時系列で捉えて理解することが重要です。
ブランドマーケティングの活用事例
Apple:創業1976年のAppleのブランドマーケティング戦略は、革新性とユーザーフレンドリーな製品デザインを前面に出すことで知られています。特にiPhoneやMacはユーザーフレンドリーな操作性と独自のエコシステムで広範囲にわたる顧客を獲得しています。彼らのマーケティングは製品の機能だけでなく、ライフスタイルへの適合という観点からも訴えています。Appleの製品発表イベントは、ブランドの独自性と新製品への期待感を高める重要な役割を果たしています。
ナイキ(Nike):創業1964年のNikeは、"Just Do It"のスローガンとともに、スポーツとアスリートを中心にしたブランドストーリーテリングで強いブランドイメージを築いています。スポーツの精神を強調し、エンドースメント契約によってトップアスリートをブランドの象徴としています。Nikeの広告キャンペーンには、インスピレーショナルなメッセージが含まれており、顧客に自己実現の重要性を訴えています。また、イノベーションとデザインのリーダーとしての立場を強化するために、最新技術を製品に組み込んでいます。
コカ・コーラ(Coca-Cola): 創業1886年のコカ・コーラは、ポジティブなブランドイメージを世界中で展開しています。長年にわたるブランド戦略とマーケティングで、国際的に愛される飲料ブランドとしての地位を築いています。
ユニクロ(UNIQLO):創業1949年のユニクロは「LifeWear」とのコンセプトを採用し、シンプルで高品質な衣服をリーズナブルな価格で提供。このアプローチにより、幅広い顧客に支持され、グローバル市場においても強固なブランドイメージを確立しています。
無印良品(MUJI):創業1980年の無印良品は無駄を省いたシンプルなデザインと実用性を追求し、持続可能な材料の使用や環境への配慮を重視しています。この独自のポジショニングで、国内外のエコ意識が高い顧客層から高評価を得ています。
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