

12分野以外の89種の「〇〇〇マーケティング」
本シリーズでは、ここまで主要12分野・24種のマーケティングを解説してきました。ここからは、残り89種のマーケティング手法を事例とともに解説していきます。多種多様なマーケティング手法を理解し、さらに深く学びたい手法を見つけるために活用してください。
本項では、アウトバウンドマーケティング、アダプティブマーケティング、アドボカシーマーケティングを解説します。
アウトバウンドマーケティング (Outbound Marketing)
アウトバウンドマーケティングは、企業が能動的に顧客にアプローチし、商品やサービスを宣伝する従来型のマスマーケティングに近い手法です。これにはテレビCM、ラジオ広告、プリント広告(新聞や雑誌など紙媒体)、ダイレクトメール、テレマーケティング、イベントスポンサーシップなどが含まれます。
広告主がマスメディアやリーチの大きなメディアを活用して、メッセージを一方的に送信し、広範囲のオーディエンスにリーチします。大量の潜在顧客(マス)に向けて広告露出が高く、短期間でブランド認知度の向上に寄与します。しかし、顧客の選択肢が増え、情報に対する抵抗感が強まる現代においては、効率性やROI(投資対効果)の面で課題も抱えています。
サントリー(SUNTORY):サントリーは、多くのブランドやプロダクトに多様なアウトバウンドマーケティングを活用しています。特に、新商品の発売時にはテレビCMを積極的に放送し、大規模なプリント広告キャンペーンや交通広告を展開します。これらの広告は、新しいフレーバーや季節限定商品を短期間に広く一般に知らせるのに効果的であり、顧客の興味を引きつけます。
パナソニック(Panasonic):パナソニックは、その広範囲な製品ラインを促進するために、テレビCM、新聞広告、雑誌広告を広く活用しています。特に、新技術や新製品の導入に際しては、その特徴や利点を広告を通じて積極的に伝えています。また、大規模な展示会や見本市への参加も同社のアウトバンドマーケティング戦略の一環であり、直接顧客と接触して製品をデモンストレーションする機会を設けています。
アダプティブマーケティング(Adaptive Marketing)
アダプティブマーケティングは、市場の変化や顧客の行動の変動に迅速に対応し、マーケティングを適応させるアプローチです。リアルタイムデータや顧客フィードバックを活用して、マーケティング活動を常に最適化し続けることが重要視されます。デジタルテクノロジーとデータ分析の進化により、特に効果を発揮するようになりました。
企業は、市場のトレンドや顧客の嗜好の変化に敏感になり、それに合わせて製品のオファーやマーケティングのメッセージを調整します。
オレオ(OLEO):2013年のスーパーボウルが停電により中断した際、オレオはすぐに反応し、「YOU CAN STILL DUNK IN THE DARK」というツイートを投稿しました。このスピーディーで適切な反応はソーシャルメディアで大きな反響を呼び、ブランドの認知度とエンゲージメントを大幅に高めました。
アマゾン(Amazon): アマゾンは、ユーザーの購入履歴、閲覧履歴、検索履歴などの膨大なデータをリアルタイムで分析し、個々のユーザーにおすすめの商品を表示するレコメンデーションエンジンを常に最適化しています。また、ユーザーが見ている商品や過去の行動に応じて、関連商品の広告をサイト内外で表示しています。
アドボカシーマーケティング(Advocacy Marketing)
アドボカシーマーケティングは、顧客や従業員、その他のステークホルダーが製品やサービスの自発的な推奨者となり、その経験や満足を積極的に他者に伝えることを促進するマーケティングです。目的は、ブランドのファンを育成し、自発的な推奨を通じてブランドの信頼性とリーチを拡大することです。特に、顧客満足度が非常に高い製品やサービスを提供する企業に有効です。
主な利点は、顧客が信頼する実際のユーザーからの推薦に基づいているため、新規顧客獲得のコストを削減しつつ、広告よりも強力な説得力を持つことです。顧客の声、ケーススタディ、レビュー、ソーシャルメディアでの共有などが一般的な形態です。
楽天:楽天市場ではレビューが非常に活用されており、購入者が製品の詳細なレビューを投稿することが奨励されています。これらのレビューは、他の潜在顧客に対して信頼できる情報源として機能し、購入決定に大きな影響を与えます。さらに、不正レビューへの対策も強化し、ユーザーが安心して自発的に製品を推奨する文化を築いています。
トヨタ自動車(TOYOTA):トヨタは、顧客満足度が高く、品質に対する評価が非常に高いことで知られており、顧客のアドボカシーを促進しています。顧客が自分の車に対する満足の声をソーシャルメディアで共有することを奨励し、また、コールセンターに届いた声も生かして品質を改善する仕組みがあります。これにより、既存の顧客が新しい顧客を引きつける、アドボカシーのサイクルが生まれています。
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