1-1-46:AIマーケティング② ー「AIと人間の仕事」の四象限

マーケティングの大前提 114種類のマーケティング
AIによる自動化は、良質なデータ収集から形式知への変換、論理化、アルゴリズムの実装を経て効率化と生産性向上を実現します。既存の業務を「データ量」と「アルゴリズム化の可否」の2軸で分類すると、人間とAIの役割分担が明確になります。
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AIによる自動化・ロボット化がもたらす効率化の仕組み

AI による業務の自動化・ロボット化は、効率化と生産性向上を目指す一連のプロセスです。このプロセスは、良質なデータの取得から始まり、形式知への変換、論理化とプロセス化、アルゴリズムの設計と実装、自動化の実装と運用という段階を経て進められます。

良質なデータを取得する段階: 自動化の対象となる業務や作業に関する多様なデータを大量に収集します。システムやソフトウェアの使用履歴である操作ログや使用機器のセンサーデータ、業務記録、業務や作業により得られた結果・ビジネスの成果、作業現場の映像・画像データなどが該当します。

データを形式知へ変換する段階:収集されたデータを個人の経験や直感による知識(暗黙知)を明文化して、誰でも理解・共有できる形にした知識(形式知)に変換します。どんなデータが必要かの検討から、そのデータの分類と整理から始め、パターンを抽出し、ルールを作成、インタビューやワークショップによって暗黙知を抽出・文書化するというプロセスで、論理的に整理しアルゴリズムに組み込むための基盤を作ります。

論理化とプロセス化の段階:形式知を基に業務や作業のフローを論理的に整理し、プロセス化します。業務フローを図解する、あるいは、仕事そのものや業務の分解や定義づけも行います。この段階では、業務に精通した専門家が関わることが重要です。

アルゴリズムの設計と実装の段階:プロセス化された業務フローを基に、AIアルゴリズムを設計・実装します。具体的には、機械学習モデル(深層学習や強化学習を含む)のトレーニングや、ルールベースのアルゴリズムを設計します。また、AIモデルの解釈可能性と説明可能性を確保することや、エッジコンピューティング、クラウドコンピューティングの活用を検討し、シミュレーション、テストなども実施します。

自動化の実装と運用の段階:設計・実装されたアルゴリズムを実際の業務に適用し、自動化します。この際システムの導入と運用の監視や人間とAIのコラボレーション方法の設計、継続的な学習と改善のためのフィードバックループの構築、セキュリティとプライバシーの確保などの点に注意します。

このような、AIによる業務自動化と効率化のプロセスは単線的ではなく、反復的で継続的な改善を伴うものです。段階を踏みながら業務の効率化と生産性向上が実現され、人間がより価値の高い業務に集中できるようになります。

人間が担う仕事はどのように変化するか

「AIマーケティング」の予測を行う上で、AIに学習させるデータがない(あるいは少量で不十分)のか大量にあるのか、そして、仕事となる業務作業をAIで形式知化・論理化・プロセス化が可能なのか不可能なのか、という観点で、以下の図のように四象限に分類して考えてみます。

「AIと人間の仕事」の四象限

図の①は、AIに与えるデータが十分に揃っており、アルゴリズム化が可能な分野です。すでに自動化・ロボット化が進み、効率化すなわち人間の仕事は消滅するか、大きく変化します。

②は、形式知化・論理化・プロセス化が可能なので、AI導入による自動化・ロボット化ができる一方、まだデータ化が不十分な仕事です。ここは人間がデータ化を行わなければAI導入が進まない分野のため、人間の意思によりAI化の割合とスピードが左右されます。

③は、すでに多くのデータがありAI導入による自動化・ロボット化ができるにもかかわらず、人間がマニュアル的に過去のプロセスでの仕事や業務を続けている分野です。仕事の生産性が上がらない大きな原因ですが、ここはAI化できるデータが十分に手に入るため、いずれAI化の進む可能性が高いです。

④は、AIが貢献し難い仕事で人間の作業が重要な分野です。過去の経験や知見が少ない、もしくは暗黙知が大きく、それらのデータ化が容易ではないため、形式知化、論理化、プロセス化が難しくデータ化もできないので、AI 導入で自動化・ロボット化ができない分野です。長期的にはこの分野でもAI の役割が増える可能性はありますが、当面は人間の仕事としてマニュアルで作業し続ける分野です。

このような区分が進むことが「AIマーケティング」の予測です。次項では、それぞれの象限における可能性を事例で紹介していきます。

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《西口一希》

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