
主要12分野・24種のマーケティングに続いて、残り89種のマーケティング手法を事例とともに解説しています。
本項では、7Pマーケティング、ニッチマーケティング、ニューロマーケティングを解説します。
7P マーケティング(7P Marketing)
従来の4Pマーケティング(Product、Price、Place、Promotion)に加えて、プロセス(Process)、ピープル(People)、フィジカルエビデンス(Physical Evidence)の3つの要素を含むフレームワークです。フィジカルエビデンスとは、顧客が製品やサービスの品質を実感するよう促すための、物理的なモノや環境のことです。これらの3要素は、顧客の体験が重要な業種で特に重視されます。
全日本空輸(ANA):製品(Proruct)は、飛行機のフライトサービス。価格(Price)は、競争力のある価格設定とマイレージプログラム。場所(Place)は、国内外の多くの空港。販売促進(Promotion)は、広告、スペシャルオファー、SNSキャンペーンなど。プロセス(Process)は、予約システムやチェックインの効率化。ピープル(People)は、訓練を受けたキャビンアテンダントと地上スタッフ。フィジカルエビデンス(Phisical Evidence)は、快適で清潔な航空機、ANAのロゴが入ったアイテム。
東日本旅客鉄道(JR東日本):製品(Product)は、広範囲な旅客輸送サービス。価格(Price)は、距離や列車の種類に応じた運賃、さらには時期や時間帯に応じたピーク料金や割引制度も導入。場所(Place)は、関東を中心に東北や甲信越地方に広がるエリア。駅施設やオンラインでのチケット購入オプションもある。販売促進(Promotion)は、季節のイベントや観光地に合わせた広告やSNSを活用、新幹線導入時のキャンペーンなど。プロセス(Process)は、チケット予約システムの効率化、アプリを通じたチケット購入、自動改札の導入など。ピープル(People)は、研修を受けた駅員や乗務員による高品質な対応。フィジカルエビデンス(Physical Evidence)としては、清潔で安全な車両や駅施設の維持のほか、JRのロゴなどがブランドの信頼性を象徴しています。
ニッチマーケティング (Niche Marketing)
ニッチマーケティングは、市場の特定の小さなセグメントや特異な顧客層に焦点を当てたマーケティングです。このアプローチでは、一般的な大規模市場ではなく、特定のニーズや興味を持つ狭いターゲットグループを対象に製品やサービスを提供します。ニッチ マーケティングの目的は、競争が少ない市場での強みを活かし、そのセグメント内で高いブランド認知と顧客ロイヤルティを構築することにあります。
スノーピーク(Snow Peak):スノーピークは、アウトドア愛好家向けに高品質なキャンプ用品を提供する企業です。同社は、キャンプというもともとはニッチだった趣味を持つ顧客に焦点を当て、耐久性が高くデザイン性に優れた製品を提供することで知られています。スノーピークは、この市場セグメント内で熱心なファンベースを築き、高いブランドロイヤルティとプレミアム価格の設定を可能にしています。
パルコ(PARCO):パルコは、もともとは若者向けのファッションや文化を中心に展開するショッピングモールでした。特にサブカルチャーやファッショントレンドに敏感な若い世代がターゲットでした。一般的なショッピングセンターよりも特定の文化や流行に焦点を当て、独特なショッピング体験を提供することで、顧客の心を捉えています。現在は若者以外も取り込む全方位的な集客を行っています。
ニューロマーケティング (Neuro Marketing)
ニューロマーケティングは、神経科学の原理をマーケティング研究に応用する手法です。脳波測定や視線追跡(アイトラッキング)、表情分析などの技術を用いて、顧客の無意識の感情や反応を可視化し、プロダクトや広告が意思決定プロセスに与える影響を把握します。例えば、広告のどの部分が注意を引き、感情に訴えているかを分析することで、広告効果を高めることが可能です。また、製品デザインの最適化にも活用され、顧客の感覚にデザインがどのように作用するかを科学的に分析し、より魅力的なデザインの方向性を定めることに役立てることができます。
バンダイ:バンダイの「ベビラボ」シリーズは、赤ちゃん向けおもちゃの開発において、脳血流量の変化を測定しました。脳科学の知見で日立製作所の協力を得ながら、アンパンマンに対する赤ちゃんの反応を分析し、その結果を製品開発に活用しました。この取り組みにより、年間市場売上38億円を突破する製品の開発に成功しています。
アース製薬:アース製薬は脳波・視線計測を用いて製品のパッケージデザインを開発しました。20~50代の女性24名を対象に2種のパッケージデザインを提示し、脳波や視線を測定。「視認性が高い」「好感が持てる」「コンセプトが伝わる」の3 つの軸を満たすパッケージの開発に成功しました。
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