1-1-49:AIマーケティング⑤ ー人間にしかできない7つの領域

マーケティングの大前提 114種類のマーケティング
AIによる自動化で単純作業が代替される中、最終的に人間に残るのは、AIでは困難な形式知化できない領域です。すなわち戦略的意思決定、創造性、感情的知能、倫理・ガバナンスなど、複雑な知識と人間的な要素を統合的に運用する仕事です。
1-1-49:AIマーケティング⑤ ー人間にしかできない7つの領域
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形式知化が困難でデータ量が少ない領域が、人間が担う仕事

前項では、今後はマーケティングプロセス全体(リサーチから管理)が効率化・リアルタイム化し、マーケターは「判断・創造的な業務」に集中する一方、機能別組織の意義が薄れ、AIを最大活用する新しい職責と組織への移行が求められるだろうと述べました。

こう考えれば、データ化さえ行えば、現在は人間が行っている膨大な業務作業を、AIの進化で自動化・ロボット化、省人化できるとわかります。このような予測に対してAI脅威論も多く聞こえますが、多くの単純作業や、時間的にも物理的にも人間の処理能力では不可能だった業務は、積極的にAIを活用することにより生産性を高め、人間は人間にしかできない仕事に集中していくべきだと考えます。

前述の「AIと人間の仕事」の四象限(以下図)で見た、②と③の分野へのAI 導入を進めるデータベースの確立は、人間にしかできません。仕事に関わるデータ化を急ぎ、AI で自動化・ロボット化を促進し、人間の仕事として残る④の分野への投資を急ぐべきだと思います。

「AIと人間の仕事」の四象限

人間に残るのは、複雑かつ多様な知識と経験を統合的に運用する分野であり、論理性だけでなく、帰納的に人間の感情と情緒も理解したうえで、統合的に運用する仕事です。この分野で活躍できるマーケターの能力開発こそが、最も優先すべき分野であると考えます。AI に対して人間ができると考えられることを、次のようにまとめました。

AI が代替できない、人間にしかできないこと

  1. 戦略的思考と意思決定

    AI はデータの分析やパターンの認識に優れているが、最終的な意思決定や戦略の策定には人間の直感や経験が不可欠。経営の大局を見据えた長期的な戦略を立案することが求められる

  2. 創造性とイノベーション

    AI はデータに基づいた提案や改善を行うことができるが、過去データの少ない帰納的な全く新しいアイデアや革新的なコンセプトの創出は人間の役割。新製品の発想やマーケティングキャンペーンの独創的な企画などが重要

  3. 感情的知能(EQ)と人間関係の管理

    組織内外での人間関係の構築や管理、チームのモチベーション向上、顧客との信頼関係の維持など、感情的知能が必要な業務は人間が担う。これは特にリーダーシップやカスタマーサポートの分野で重要

  4. 倫理とガバナンス

    AI の利用に伴う倫理的問題や法的問題を監視し、適切なガバナンスを確立することが必要。これには、AI の透明性、公平性、プライバシー保護などが含まれる

  5. 問題解決とクリティカルシンキング

    複雑な問題を解決するためには、クリティカルシンキングと問題解決能力が求められる。これは、AI が提供するデータや分析結果をどのように解釈し、実際のビジネス環境に適用するかに関わる

  6. コミュニケーションと協力

    組織内外のステークホルダーとの効果的なコミュニケーションや協力が重要。人間相手のプレゼンテーション、交渉、説得などのスキルはAIでは完全代替できない

  7. 社会的責任と持続可能性

    企業が社会的責任を果たし、持続可能なビジネスモデルを構築するためには、人間の判断と価値観が重要。環境問題や社会貢献活動の推進などが含まれる

これらの領域では、人間の能力が引き続き重要となり、AI のサポートを受けながらも人間の価値を発揮し続けることができるのではないでしょうか。AI 脅威論で立ち止まらず、従来のマーケティング手法113 種に加え、新分野の「顧客起点マーケティング」そして「AI マーケティング」の可能性と進化を積極的に学び、日々活用し続けることで、人間のマーケターとしての価値はより高まり続けると信じています。

以上、114種のマーケティングをすべて解説しました。最後に解説したAIマーケティングのみ、マーケティング戦略の領域にも影響が及びますが、それ以外はすべて「マーケティング戦術(手法手段)=HOW」であり、前提になるべきは「誰に(WHO)何を(WHAT)提案するか」のマーケティング戦略です。WHO&WHATの顧客戦略が見えてこそ、最適なHOWを選択できます。その点を見失わず、決してHOW先行にならないようにしたいです。

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《西口一希》

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