複数社で行う共同マーケティング(コマーケティング)
コマーケティング、または共同マーケティングは、複数の企業が協力して、相互の製品やサービスのマーケティングや販促活動を行うマーケティング戦略です。通常、大手メーカーと大手小売業者の間で行われ、相互のブランドや製品の知名度や販売を促進することを目的としています。
共同マーケティングの活用事例
BMWとルイ・ヴィトン:BMWとルイ・ヴィトンは2014年、BMWの高級スポーツカー「i8」の発売に合わせて、専用のラゲージセットを共同開発しました。このラゲージセットは、i8のインテリアに完璧に収まるデザインで、カーボンファイバー素材を使用して軽量化されています。両ブランドの高級イメージを相互に強化し、製品の独自性と高級感を際立たせました。顧客に対しては、カスタムデザインのエクスクルーシブなアクセサリーを通じて、よりパーソナライズされた体験を提供することができます。
NikeとApple:NikeとAppleは2016年、Apple Watch® Nike+を発表しました。専用のNike Sport BandとApple Watch Series 2を組み合わせたApple Watch Nike+は、Nikeの運動靴とAppleの技術が組み合わさったトラッキングシステムで、ユーザーのランニングパフォーマンスを追跡し、データをiPod(後にはiPhone)と同期させます。ランナーをターゲットにした非常に成功した戦略であり、運動中のモチベーション維持やパフォーマンス改善に役立つツールを提供しました。
ゴープロ(GoPro)とレッドブル(Red Bull):アクションカメラメーカーのGoProと、エネルギードリンクメーカーのRed Bullは、アドベンチャーとエクストリームスポーツの分野で共同マーケティングキャンペーンを展開しています。これには、イベントのスポンサーシップや共同でのコンテンツ制作が含まれます。両ブランドの製品が互いに補完関係にあるため、この共同マーケティングは大成功を収めています。Red BullがスポンサーするイベントでGoProのカメラが使われ、その映像が共同でプロモーションに利用されることで、双方のブランド認知度と製品販売が促進されました。
ウーバー(Uber)とスポティファイ(Spotify):配車サービスのUberと音楽ストリーミングサービスのSpotifyは、Uberの乗車中にSpotifyのプレイリストをカスタマイズできるサービスを共同で提供しました。このパートナーシップにより、Uberの顧客体験が向上し、Spotifyのユーザーにとっても独自の価値が提供されました。両社のユーザーエンゲージメントとブランドロイヤリティが高まり、新しい顧客層の獲得に貢献しました。
ファッション小売業とアパレルメーカー:百貨店やファストファッションブランドなどのファッション小売業は、複数のアパレルメーカーやブランドと共同でセールやキャンペーンを実施することがあります。これにより、異なるブランドの商品を一箇所にそろえて顧客に提供し、顧客の購買意欲を高めることができます。例えば、セール期間中に特定のアパレルブランドの商品を対象に、割引や特典を提供することで、顧客の来店や購買を促進します。
購入の瞬間に焦点を当てるショッパーマーケティング
ショッパーマーケティングは、FMOT(First Moment Of Truth/第一の真実の瞬間)と言われる、購買決定プロセスにおいて顧客が実際に購買を行う瞬間に焦点を当てたマーケティング戦略です。
2000年前後に、BtoCビジネスにおいてP&Gがこの概念をグローバルに提唱し、最終的な顧客ないし顧客向けに、購買場面を主として小売業者と共同で行うマーケティングとして始まりました。メーカーが提供する使用者のデータだけでなく、実際の購買顧客の購買データやリサーチを元に、顧客(ショッパー)の行動や購買パターンを理解し、それを活用して売り場のデザイン、商品配置、プロモーション戦略などを最適化するマーケティングです。現在は、小売業者自体が取り組む分野でもあります。
ショッパーマーケティングの活用事例
P&Gとウォルマート:P&Gとウォルマートは、共同で特定の期間におけるプロモーションを展開しています。例えば、P&Gの製品を特別価格で販売するセールイベントを実施し、ウォルマートはその期間中に広告や販促を強化します。この際、両社はPOSデータを共有し、売上や顧客の反応を分析して、今後のプロモーション戦略を改善します。また両社は、店内の商品配置を最適化するためにデータを共有します。例えば、P&Gの商品がどのような位置に配置されると売上が増加するかを分析し、その結果を元にウォルマートの店舗レイアウトを改善します。季節や地域に応じた商品の需要予測も行い、在庫やプロモーションの計画を立てます。このようなショッパーマーケティングの取り組みにより、両社は顧客の満足度を向上させ、売上を増加させています。
ターゲット(Target): 米国の大手小売チェーンであるTargetは、店内のナビゲーションを工夫し、特定の商品に顧客を導くショッパーマーケティングを展開しています。季節ごとのプロモーションや新商品の導入時には、店舗の入り口や中央通路に魅力的なディスプレイを配置し、顧客のショッピングルートを意図的にデザインしています。Targetはこれにより、顧客の店内での滞在時間とカートに入れる商品の数を増やしています。また、Targetのアプローチは顧客が楽しいショッピング体験を感じるように設計されており、顧客満足度の向上にも寄与しています。
ヨドバシカメラ:ヨドバシカメラは家電製品の大型小売業者であり、特にヨドバシカメラ マルチメディアAkibaなど大型店舗では、顧客体験を重視したショッパーマーケティングが展開されています。店舗内のデモンストレーションや体験コーナーを充実させることで、製品の魅力を顧客に直接伝えています。新商品の発売時にメーカーと連携したデモイベントを頻繁に実施し、実際に製品を試すことができる環境を提供することで、顧客の購買意欲を高めています。この実践により、特に技術的な説明が必要な高価格帯商品の購入において、顧客の不安を解消し、購入に結びつけています。
資生堂とローソン:資生堂とローソンは、顧客リサーチに基づいて、共同で小型化粧品を共同企画し、コスメティック製品を販売するプロモーションを展開しています。ローソンの店舗内に資生堂の製品を陳列し、限定商品や特別価格を提供しています。また、ローソンの会員カードや資生堂の顧客データを活用して、ターゲット顧客に対してパーソナライズされたプロモーションを実施しています。
セブン-イレブン・ジャパン:セブン-イレブンは日本最大のコンビニエンスストアチェーンの一つであり、ショッパーマーケティングの一環として店舗ごとに地域性を反映した商品展開やプロモーションを行っています。特に季節やイベントに合わせた限定商品や特設コーナーの設置が効果的です。お花見シーズンには桜をテーマにした飲食品やお弁当を前面に展示し、春の行楽需要を取り込んでいます。これにより、特定の時期に顧客の関心を引き、季節感を重視する日本の顧客の購買を促進しています。
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