
さまざまな業界で進むAIと人間の協業
前項では、AIに任せられる仕事と人間が担うべき仕事について、四象限で考察しました。本項では、それぞれの象限①~④において、どういった業界でどのような代替や協業が進んでいるのか、事例で紹介します。
「AIと人間の仕事」の四象限

事例 (4象限①):金融業

金融業界では、AIと機械学習アルゴリズムが導入され、データ分析や取引業務の自動化が進んでいます。これにより、リスク評価、クレジットスコアリング、トレーディングなどの作業が人間の手を借りずに行われるようになっています。ゴールドマン・サックスなどの大手金融機関では、アルゴリズムトレーディングが普及しており、人間のトレーダーの代わりにAIが市場データを分析し、自動的に取引を行っています。これにより、取引のスピードと正確性が向上し、人間のトレーダーの数が減少しています。
事例 (4象限①):倉庫管理と物流
倉庫内でのピッキング、梱包、搬送などの作業がロボットや自動搬送システム(AGV)により行われています。アマゾンの倉庫では、Kiva Systems(現在はAmazon Robotics)のロボットが製品を自動でピッキングし、指定の場所に運ぶシステムが導入されています。ピッキング時間が大幅に短縮され、人手の介入がほぼ不要となっています。
事例 (4象限②):医療

医療では、X線画像やMRI画像を解析し、異常を検出する技術が発展しています。しかし、各病院の診断データ、治療結果のデータが十分ではなく、AIによる統合的な診断や治療計画の自動化までに至っていません。
また、がん治療では病状の進行度や患者の健康状態に基づいた治療方法を決定するデータが揃っていないなど、データの質や一貫性の課題もあります。しかし、データが蓄積されていくことで、自動化やロボット化が進んでいくと考えられます。
事例 (4象限③):顧客サポート(カスタマーサポート)

企業の顧客サポートセンターでは、大量の顧客問い合わせに対して、人間のオペレーターが個別に対応しています。これには電話対応、メール返信、チャット対応などが含まれます。すでに大量の顧客対応データが存在しているため、これを活用してAIチャットボットや音声応答システムを導入することで、自動化が可能ですが、それらが結合されていないとAI は活用できません。また、問い合わせや記録を人間のオペレーターが手動で処理しているためデータの統一性がなくAIに提供できないため、生産性が高まりにくいです。
事例 (4象限④):新規事業開発

新規事業開発やイノベーション活動は、未知の領域が多く、過去のデータや既存の知見が限られています。そのため人間の創造力とリスクテイクが重要です。
また、スタートアップの創業は、多くの不確定要素が絡み合うため、創業者のビジョンと判断力が必要です。新しい技術や製品の研究開発には、創造的な発想や試行錯誤が必要であり、標準化されたデータに基づくAIでは代替が難しい領域です。データ化が困難な、帰納的なアプローチは、まだ人間が大きく活躍できる分野です。
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