
利益のカギを握るのは「ロイヤル顧客」
前項で、N1分析におけるインタビューは、まずロイヤル顧客に対して聞いていくべきだとお話ししました。ここで、なぜ「ロイヤル顧客」を重視すべきかを「顧客戦略」の観点から考えてみます。
顧客の中には、ロイヤル顧客、一般顧客、新規顧客、離反顧客など多様な顧客がいますが、そもそもそうした分類をしていない企業もたくさんあります。そして「とにかく新規の顧客をたくさん増やせばいいじゃないか」と言う人もいます。
しかし、新規顧客を獲得するためには、販促活動や広告、宣伝、商品説明、商談など、多大な投資コストがかかります。
一般的に新規顧客の獲得にかかるコストは、リピーターを維持するコストの5倍かかると言われています。これをマーケティング業界では「1:5の法則」などと言っています。
ここで言うリピーターには、ロイヤル顧客も一般顧客も含まれます。実際には「1:5」という数字に明確な根拠があるわけではありません。ロイヤル顧客に絞って計算すると、ロイヤル顧客を維持するコストが1だとしたら、新規顧客の獲得はその10倍や20倍かかることもあります。
ですから、新規顧客をいくら増やしても初回購入で終わってしまう人が多ければ、利益率も累計利益も悪化していきます。
1回きりで離れる顧客は、利益率が低い
一方、一度購入して満足した顧客は、次回以降も自発的に商品を購入してくださる可能性が高いため、獲得コストは小さくなります。
そのことを、ディズニーランドのチケットを例にして考えてみます。
ディズニーランドは、ほかの遊園地と比べて価格が高いため、常に大きな利益を上げているという印象を持つ人もいるかもしれませんが、話はそれほど単純ではありません。
来園経験のない人にディズニーランドを認知してもらい、チケットを買ってもらうために、メディアへの広告投資コストやPR投資コストを大量にかけているはずです。その投資コストが大きいため、新規顧客だけを獲得していると、売上は伸びても投資対効果や費用対効果が低くなり、利益率は減少します。
しかし、一度ディズニーランドに行って満足した人は、その後も来園する可能性が高くなります。このような顧客は次回以降も自発的に訪れてくれるため、事実上は投資コストをかけなくてもリピートします。
何度もリピートする顧客が増えれば増えるほど、投資対効果や費用対効果が大きくなり、結果的に利益率も高くなります。
チケット代金は同じでも、新規顧客とリピート顧客では投下コストに対する利益率が大幅に違ってくるということです。
いかにロイヤル顧客を維持・向上するか
売上向上のために新規顧客の獲得ばかりに注力していると、既存顧客を重視していれば得られたはずの高い利益性とその累計利益を毀損していきます。
高級ブランドなどでもそうです。広告費や店舗維持費、人件費などに多くの予算を割いているため、これらを新規顧客の獲得のコストと見れば1人あたりの新規顧客の獲得のコストは非常に高額になっています。
しかし実際には、これらの投資がブランド価値の向上につながり、顧客に繰り返し購入・利用し続けていただくことで利益性と累計利益が高くなっているのです。いわば、お得意様に長年買い続けてもらうことによってLTVを最大化できるようになっていきます。
どんなビジネスであれ、中長期で考えたときに最も利益への貢献が大きいのは「ロイヤル顧客」です。パレートの法則が示すように、顧客が100人いたら、そのうちの上位20人、1000人いたら、上位200人が累計利益の8割を生み出しています。
そうなると、企業がまず考えなければいけないのは、上位2割のロイヤル顧客をいかに離さないようにするかです。ロイヤル顧客がずっと満足して購入し続けてくれるためにはどうしたらいいのか、さらに高い満足をしてくれるためには何をしたらいいのかという視点を持つことが重要です。
単なる安売りは、1回きりの顧客を増やしてしまう
ただし、ロイヤル顧客もさまざまな理由からいつかは必ず離れていきます。どのビジネスでもロイヤル顧客は永遠ではなく、一定の割合でいなくなってしまうものです。
つまり、ロイヤル顧客が1人抜けたら、その1人を埋める、もしくはそれ以上のロイヤル顧客を育てなければ新規顧客の獲得で売上を上げたとしても、利益率と累計利益は確実に下がっていきます。
そのため、何回か購入してくださった一般顧客をロイヤル化するために何をしたらいいのかを考えなければいけません。そうなると、その流れに沿うかたちで、新規顧客も増やしていかなければなりません。
しかし、とにかく新規顧客を増やすことだけを考えてしまうと、ロイヤル顧客になりにくい新規顧客を増やすような施策を展開してしまうことが多くあります。よくある例で言えば、「今から1週間は半額」などのキャンペーンです。このような獲得方法は、顧客はその商品の価格は半額という認識で入ってこられるので、普段の価格に戻ったときには離れてしまいます。
1回きりで離れていくような顧客ではなく、ゆくゆくはロイヤル化してくださるような顧客はどういう人なのか、そしてその方たちを新規でお迎えするにはどうしたらいいかを考えなければいけません。半額だから購入してくださる方ではなく、そのプロダクトに価値を感じてくださるお客様にリーチする方法を考える必要があるということです。
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