
意識していないことは、言語化できない
前項では、N1インタビューでは「4W1H」をうかがっていくことを解説しました。その後、「初回購入時の購入理由」「使用後の評価」「リピート時の評価」などについても、4W1Hを用いて「いつ、どこで、誰が、何を、どんなふうに」と細かく聞いていきます。
なお、最初に認知したときのことを忘れている顧客もいます。
最初に認知したときのインパクトが強ければよく覚えていますが、今の評価のほうが高ければ最初の認知の記憶は薄れてしまいます。
その場合は、現在の使用状況から話をはじめて徐々に過去に戻っていくと思い出せることもあるため、相手の様子を見ながら最初の認知から聞いていくのか、現在の使用状況からさかのぼって聞いていくのかを使い分けていきます。
このように細かく聞いていくのは、お客様にとっての便益と独自性とそのきっかけを知るためですが、その際、お客様に「この商品の便益は何だと思いますか?」とストレートに聞いても、たいていお客様自身はわかりません。
お客様にとって何が便益になっているのかは、さまざまな角度から細かく質問しながら、こちらが洞察して見つけ出すものです。
会話の端々から便益と独自性を洞察する
たとえば、「○○を知って、どうしても欲しいと思った」とか「○○があるから手放せない」などの言葉がお客様から出てきたら、「○○」に当たる部分がその人にとって便益に近い何かであることがわかります。
また、「使う前と使った後では、あなた自身にどんな変化があったか?」という質問の答えからも、そのお客様にとって何が便益になっているかがわかります。
さらに、「この商品の前にどんな代替品を使っていたか?」「どんな競合や代替品を認知していて、なぜ、こちらを選んだか?」などを聞き、競合と比較させることも重要です。それによって、お客様がこのプロダクトのどこに便益を感じているかが洞察できます。
独自性も同様です。「何が独自性だと思いますか?」と聞いても、たいていお客様にはわかりません。その人にとっての独自性が何かを知りたければ、「あの商品ではなくて、この商品は何が違うのですか?」という質問のほうが効果的です。
「にんにく卵黄」の認知におけるインタビュー実例
「N1インタビュー」の前提として頭に入れておいていただきたいのは、行動の変化につながる心理の変化は、ほとんどの場合、お客様自身は意識していないということです。意識していない場合、それを言語化することはできません。
そして、その心理はときに非合理、矛盾を感じられることがあります。これを直接聞くのではなく、4W1Hから洞察するのです。
どんな人でも、自分の心理や行動の変化を筋道立てて説明できるわけではありませんから、インタビューをする側は、お客様の言葉の端々から無意識に望んでいることを推察しながら話を聞いていきます。
たとえば先述した、にんにく卵黄を購入した顧客への認知のきっかけに関するN1インタビューの流れの例です。
インタビュアー:この商品をはじめて知ったのはいつですか? N1:妻が広告で見て前から気になっていたようで、一緒に薬局に行ったときに妻がすすめてきたんです。 インタビュアー:この商品を知ったとき、何か気になったことってありました? N1:「にんにく卵黄」という名前がちょっと気になりましたね。 インタビュアー:へえ。どんなところが気になったんですか? N1:なんか健康に良さそうだと思って。 インタビュアー:普段から健康を気にされているんですか?何かほかに健康にいいことって、されていますか? N1:月に何度かはジムに通って運動しているんですけどね。 インタビュアー:ジムで運動、いいですね。ほかに何かされていますか? N1:最近は野菜サラダもよく食べてます。 インタビュアー:どうして野菜サラダを食べるようになったんですか? N1:私は肉が好きでよく食べるんですが、やっぱり体のためには野菜も食べておいたほうがいいかなと思って。そうすれば、冷え性も良くなるのではないかと。 インタビュアー:冷え性なんですか? N1:そうなんですよ。バランスよく食べると冷え性も治るかと思ってるんですけど……。 |
ここまでで、このお客様は「健康を気にしている」「偏った食生活にならないかを気にしている」「冷え性を治したいと思っている」などがわかります(実際には葉物野菜を食べるとますます体が冷えてしまうという現実があるのですが)。
そこで、この方にとってのにんにく卵黄の便益と独自性がいくつか考えられます。
「体が温まる」「食事のバランスが整う」などが便益かもしれません。また、「ジムに通うよりも簡単」「手軽に飲みやすい」ということが独自性になるかもしれません。こうして、この方にとっての便益と独自性の組み合わせが少しずつ見えてきます。
その際には、「野菜サラダは体を冷やす」というのは、訴求(HOW)のアイデアのヒントになります。
ただし、これはあくまで1つの例であり、お客様に何を聞いたらいいのかという決まった正解はありません。
「N1インタビュー」では、どのようなアイデア(便益と独自性の組み合わせ)が、どのような環境下で評価され、お客様の行動を左右しているのかを考えながら話を聞くことが重要です。
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