
顧客の心理と行動は一定ではない
顧客の心理と行動は一定ではなく、常に変化していることも忘れてはいけません。
たとえば、コロナ禍とアフターコロナでは人の心理も行動様式も大きく変化しましたし、1年前と今と1年後では欲しいものがまったく違ってくるのは当然です。1時間後、10分後ですら、興味や関心は変わっているはずです。
継続的な利益を上げるためには、繰り返し購入してくださる顧客の存在が重要なことは言うまでもありません。ただし、どんなにそのプロダクトに魅力を感じて購入・利用を続けている顧客でも、いつかは離れていきます。
たとえば、子どもを連れてよく遊園地に行っていた人でも、子どもが大きくなり、自分も歳をとれば行かなくなります。ずっと同じ車種を買って運転していた人も、何らかの理由でその車を買わなくなったり、年齢や環境などによっては車そのものを運転しなくなったりします。引っ越しをすれば、いつも行っていたスーパーには行かなくなります。
外的要因による行動の変化、生活環境の変化、年齢による変化など、さまざまな理由によってロイヤル顧客も必ずいつかは離反するのです。
明確な理由がなくても離反する=忘却離反
さきほど触れたように、とくに理由がなくても忘却して離反してしまうこともあります。
人の心理はさまざまな理由で常に変化し、その結果として行動も変わり続けています。マーケットは決して止まることなく、顧客の心理と行動の変化の集合として動き続けているのです。
顧客の動態を常に意識する。そして、自社のプロダクトを継続して支持しているポジティブな顧客の動態を生み出すことが、事業の成長はもとより、企業の利益につながっていきます。
しかし、多くの企業では「マーケットも、人の心理も動いている」という意識は薄く、なんとなくマーケットが固定しているかのような前提で施策立案や投資活動を行っています。今日までのロイヤル顧客も、明日には競合のプロダクトに乗り換えているかもしれません。それくらいの速さでマーケットや顧客は変わり続けているのに、1、2年前のデータを使って議論をしている組織すらあります。
顧客の変化を前提に、N1分析を重ねていく
「顧客は変わり続ける」という事実に無自覚でいることは、中長期的なビジネスの成長を困難にする大きな要因の1つです。
多くの企業で、マーケットが固定されていることが組織構造の前提となっているケースが見られます。しかし、継続的に投資対効果を最大化し、利益性の高い経営を行うためには、マーケットを動態でとらえ、その変化に応じて、経営活動そのものを柔軟に変化させ続けることが重要です。
そのためにも定期的に顧客の声を聞き、顧客戦略の見直し(価値の見直しや強化)を図る必要があります。「KGI (重要目標達成指標)」や主要な「KPI (重要業績評価指標)」も、顧客の人数、購入単価、購入頻度などを調べ、顧客の声を聞いて訴求する価値を見直します。
顧客が求める価値は刻々と変わっていくことを前提として、常にアップデートしていく必要があるのです。その意味では、マーケット全体の変化となる前の兆し、つまり、個別の顧客の心理と行動の変化をいち早くとらえるために「N1分析」には終わりはありません。
次項からは、「N1分析」を実践し、成果をあげている企業へのインタビューを通して、「N1分析」の具体的な事例をケーススタディとして紹介します。
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