2-4-36:顧客の心が動いた瞬間と変化をつかむ

顧客起点マーケティング N1分析
顧客の価値評価は変化しやすいため、1対1の深いインタビューを通じて心が動いた瞬間や変化を捉え、効果的な訴求や具体的なアイデアにつなげることが重要です。
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購入時と使用時の価値評価は変わることもある

次に、N1インタビューで「初回利用時」について話を聞いていく際のポイントです。

実際に使っていただいて、どう思ったかということを、前項で紹介したのと同じように4W1Hで詳しく聞いていきます。

前項で紹介したにんにく卵黄の例で言うと、たとえば次のような質問です。

  • 「いつ、どんなときに食べられましたか?」(When)

  • 「どこで食べられましたか?」(Where)

  • 「ご家庭ですか、職場ですか?」(Where)

  • 「朝食ですか、昼食ですか、夕食ですか?」(When)

  • 「ごはんを食べられる前ですか、後ですか?」(When)

  • 「それだけをどのように召し上がりましたか?」(How)

  • 「どなたかと一緒に食べられましたか?」(Who)

  • 「ご家族のみなさんはどうされています?」(Who)

このように、その体験がどこで、どういう場面で行われ、そこに誰が介在し、どのようなコミュニケーションが発生しているかという4W1Hを突き詰めながら、実際の場面が映像として浮かぶくらい解像度高く聞いていきます。

「再購入してくださったとき(リピートしたとき)」についても、詳しく聞きます。

  • 「食べたときにどう思いましたか?」(What)

  • 「その後、何か変化はありましたか?」(What)

  • 「続けていただいてどう思われますか」(What)

この「価値の再評価」で注意が必要なのは、最初の購入時と評価している価値が変わっていることがあるという点です。

お客様は冷え性に効くと思って買ったけれども、朝の目覚めが良くなったという効果を感じてくださっているかもしれません。その場合はお客様にとっての価値が変わっているので、「冷え性が治る」よりも「朝の目覚めがいい」という訴求のほうがいいかもしれません。

そうやって、「N1インタビュー」を通して、対話の中から丁寧に拾い上げていくと、誰に向けて、どんな場面で、どんな広告で、何を訴求するかというアイデアが見えてきたりします。

定型フォーマットの調査では得られないこと

「N1インタビュー」では、こうしたことを1対1の対話で少しずつ探っていきます。ときどき、「アンケートのような定型的なフォーマットでお客様に聞いてもいいのでしょうか?」と聞かれることがあるのですが、おすすめしません。お客様と対話をしながらでなければ話は広がっていかないからです。

たとえば、次のようなアンケートがあります。

Q あなたにとって、この商品の何が良いかをお答えください。

  • 健康になる

  • 体が温まる

  • おいしい

こうしたクローズドクエスチョンの場合、お客様ご自身もあまり深く考えたことがなければ「まあ、健康と言えば健康かな」くらいの感覚で答えるため、一般的な回答になりがちです。こうした調査で見えてくるインサイトというのは、結局はどこにでもありそうな答えでしかなく、打ち手のアイデアにはつながりません。

しかし1対1で対話をすると、いろいろな洞察が可能になります。

「あれ、この人、冷え性だって言っていて、野菜をよく食べているのか。そもそもなんで野菜を食べているんだろう?」という疑問をぶつけてみると、もしかしたらお客様は何か誤解しているか、何かを知らないかもしれません。そうだとすれば、打ち手のアイデアにつながることもあります。

たとえば、「野菜を食べれば、それだけで健康になると思って食べていませんか?」といった、コミュニケーションアイデアによるコピーなども考えられます。

ですから、インタビューをする際も、選択肢の中から選ぶクローズドクエスチョンにならないよう、イエス・ノーで答えられる質問はあまりしないように気をつけてください。

また、数人のお客様をまとめてグループインタビューをするマーケターもいますが、複数をまとめて聞くと平均的な値に収束しやすいため、結局は中途半端になってしまいます。量的にも意味はありませんし、やはり1人ひとりと対話をして深掘りしたほうがいいです。

このように、「N1インタビュー」はすればするほど、アイデアにつながる引き出しが増えていきます。結果的に、常識や過去の延長にとらわれず、マーケターとしての仮説設定能力も高まっていくのです。

押さえるべきは、顧客の心が動いた「強い瞬間」と「変化」

「N1インタビュー」では、実在する1人の顧客の解像度を高めることで企業側が見出していなかった商品の使われ方や魅力を発見することを通して、新たなWHOとWHATの可能性を探ります。

その際には、顧客が「認知」から「購入」、そして「ロイヤル化」までどのような道筋を通ってきたのかを示す「カスタマージャーニー」を作成しながら行動の変化を時系列で整理し、行動に変化を与えた「心が動いたポイント」を見つけることが重要です。

インタビューの際は、購入・利用行動においてお客様がたどるカスタマージャーニーを整理しながら「このときはこんな状況だった」「このときはこんな気持ちがした」ということを1つひとつ確認していきます。

はじめて買ってみよう、使ってみようと思ったときの「WHAT(便益と独自性)」と、使用後にずっと使い続けたいと思ったときの「WHAT(便益と独自性)」は異なっていることが多いです。

また、顧客としての人物は同じでも、はじめて買うときと使用後では、そのWHOの心理状態やニーズは異なっていますので、それぞれの時点でのWHO(異なる心理状態やニーズを持つ顧客)として顧客の変化を理解しなければなりません。

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《西口一希》

N1分析