
誰に(WHO)何を(WHAT)提案するのか
本コンテンツでは、N1分析の考え方と実践を紹介していきます。書籍『ビジネスの結果が変わるN1分析 実在する1人の顧客の徹底理解から新しい価値を創造する』(西口一希著/日本実業出版社)をベースにしながら、再構成・加筆していますので、書籍もご参考ください。
筆者はこれまでP&G、ロート製薬、ロクシタンジャポン、スマートニュースにおいてマーケティングを中心に経営にも携わってきました。ここ数年間はスタートアップヘの投資、経営へのコンサルテイング、顧間などのかたちでさまざまな企業の事業支援を行っています。
ご相談いただく企業はBtoBからアプリ開発、巨大なグローバル事業まで、累計で450社(2025年10月時点)を超え、経営者や事業責任者など、マーケティングをメインの業務にされていない方々との関わりも増えていく中で、マーケティングには誤解されている部分が多く、そのために無駄な費用や時間、労力が発生していると感じるようになりました。
また、多くの企業で、マーケティングにおける課題を抱えていることも実感しています。
それは「顧客第一」「顧客視点」などと言いながら、最も重要な顧客が見えなくなっているということです。顧客のためにビジネスやマーケティングに取り組んでいるのに、その顧客の心理や変化が見えなくなってしまうのです。
あるいは、経営者も現場の担当者も顧客を理解することなしにマーケティングの手段や手法(HOW)ばかりを意識した結果、顧客が置き去りにされる構造に陥っているケースもあります。日々増えていくマーケティングの手法にとらわれ、本当の顧客の姿を見失ってしまうことも少なくありません。
大企業であれ中小企業であれ、顧客が何を求めているのか、顧客が何に「価値」を感じているのかをしっかり把握している企業は、継続的に利益を上げています。経営と顧客の行動をつないでいる「顧客心理」に着目し、「誰に(WHO)」「何を(WHAT)」提案するのか、そして「なぜ買って(使用して) いただけるのか」を軸にビジネスを構築されているのです。
顧客と最も近く接しているマーケティングこそ、こうした「顧客戦略」を解き明かし、経営に詳細に提示することが求められています。
実際の1人の顧客の心理を徹底理解する「N1分析」
「顧客戦略」とは、価値となる「誰(WHO)に対して、何(WHAT)を提案するか」の組み合わせです。これらを明確にして組織全体で運用することにより、「顧客心理」や「顧客行動」の変化をとらえ、その結果としての売上、利益の財務諸表までを一気通貫して把握することができます。

しかし、さまざまな施策を実行しても、思うようにビジネスが成長していない場合、顧客がどのような人で(WHO)、その顧客がプロダクト(商品やサービス)にどのような便益と独自性(WHAT)を感じてくださっているのかを理解できていないことがほとんどです。
「便益」とは、顧客自身が感じているベネフィットであり、顧客が買う・選ぶ理由です。「独自性」とは、唯一性であり、顧客がほかの製品やサービスを買わない・選ばない理由です。
そもそも、顧客は便益と独自性を見出すからこそ、対価を支払ってくださるのです。この関係性が成立してはじめてプロダクトの「価値」が生まれ、事業の成長が見込めます。
ここで重要なのは、プロダクトの価値は企業ではなく、顧客が見出すものだという点です。
企業側が「このプロダクトには便益があります」「このサービスには独自性があります」と訴えても、顧客がそこに便益と独自性を見出さなければ「価値」は生まれず、継続的な利益に結び付きません。
そのため企業側は、プロダクトに便益と独自性を感じている具体的な人の行動と意識を掘り下げ、心が動いたポイント(驚きや喜び)を探り、考察することが重要です。
それによって、便益と独自性(WHAT)に、価値を感じている人(WHO) の組み合わせを複数見つけ出し、「ロイヤル顧客」として効率的に取り込むために有効な再現性のあるマーケティング施策(HOW)を考え出すことができます。
これが、筆者の提唱してきた「N1分析」です。「N1分析」は、筆者がP&G在籍時に携わった多くのプロダクトのマーケティング活動を通して生まれ、その後、ロート製薬、ロクシタン、スマートニュース、そして支援先の企業等でのビジネスにおける数多くのプロダクトによる実践を経ながら、よリメソッドとしての精度を高め、提唱し続けているものです。
まだ会員登録されていない方へ
会員になると、既読やブックマーク(また読みたい記事)の管理ができます。今後、会員限定記事も予定しています。登録は無料です

