2-4-47:AIが浸透する中、マーケターがすべきこと

顧客起点マーケティング N1分析
AIの進化によりマーケティング業務の自動化は進みますが、顧客の心理や行動を洞察し、新たな価値を生み出す役割は人間に残ります。
2-4-47:AIが浸透する中、マーケターがすべきこと

マーケターに求められるのは人間の洞察

今、生成AIの進化で、あらためて機械学習を含めたAI(人工知能)全体の活用が広がってきています。

筆者も毎日のように対話型生成AIや日々生まれるサービスに触れ、何ができるのかを検証していますが、これほどのスピードでAIが発展していることには驚きを隠せません。

こうした進化によって、ビジネスもマーケティングの分野でも今後大きな変化が起こることが予想されます。

市場分析やデータ分析はもちろん、過去のデータや実績をベースにした打ち手の考案やWEBサイトの構築、LPの作成、広告の制作などもAIによって自動化されていくでしょう。今、「マーケティング」と言われている仕事の大半は、将来的に自動化されると考えています。

そうした中で、マーケターに最終的に残る仕事は何かと言えば、過去の延長線上にはない、データ化されていない、データ化できないような、お客様本人すら気づいていないその人の心理や行動を洞察し、インサイトをつかみ、それをどのような新しい価値、つまり独自性のある便益として提供できるかを想像し、実際につくり出すことです。その提案こそ、「N1分析」の中から見えてくるのです。

データがなければAIは対応できません。つまり、データ化できない人間の心理と行動、そして社会の変化との関係性を洞察して新しい価値を創造することこそが人間が力を発揮できる領域になるのです。

そして、そのときに軸になるのは、やはり「それは顧客にとってどんな価値をつくることができるのか」という「顧客起点」なのです。

個別の事例から、N1分析を帰納的に追体験する

本シリーズの元になっている書籍『ビジネスの結果が変わるN1分析 実在する1人の顧客の徹底理解から新しい価値を創造する』は、前段でも少し触れましたが『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』(日本実業出版社)の刊行後に、読者限定オンラインサロン(現在は終了)を開催したことがきっかけで生まれました。

サロンは、第1シーズン6回、さらに追加で第2シーズン3回と計9回行われました。サロンは「セッション」として、毎回テーマごとに多くの質問を受け、私がそれに答え、ときに自熱した議論にも発展しながら、マーケティングについて語り合う、とても楽しい時間でした。

その中でも、サロンのメンバーから、とくにより深く知りたいという声があったのが「N1分析」だったことから、本につながりました。

お気づきかもしれませんが、「N1分析」は、実在する1人の人間の心理を対象にした帰納的分析であり、いわば心理学にも近く、ノウハウやポイントを学ぶだけでなく「実践知」として身についていくものとも言えます。

そのため、「N1分析」を理解していくには、個別の実例から帰納的に、追体験することが最も重要だと考えています。本シリーズで4社の具体的な事例をケーススタディとしてメインに詳細に紹介させていただいた理由はここにあります。

ケーススタディには、「N1分析」で大切なアクションプランとマインドセットが詰まっています。ケーススタディを何度も読み返し、また、これから触れる「マーケティングの本質」を念頭に、日々の実践を通じて自らのビジネスに活かしてください。

最後に、本シリーズを通してあらためてお伝えしたいことをまとめておきます。

  • 結局、どんなビジネスでも、突き詰めて考えれば、核となるビジネスは、1人の顧客と1つのプロダクト(商品やサービス)の組み合わせでしかない。

  • その顧客が、そのプロダクトに価値を見出せば、入手するためにお金や時間や体力を使って入手する。これが商売。

  • 価値は、その顧客が、プロダクトに便益(買う理由)と独自性(ほかの選択肢や代替を買わない理由)を見出すことで成り立つ。

  • その顧客が、そのプロダクトの存在自体を知らなければ価値は生じないし、存在を知っても便益と独自性を見出さなければ購入しないので、価値も生じず、ビジネスも成立しない。

  • 価値を成立させるために、プロダクトの便益と独自性を強化改良することもあれば、価値につながるようにプロダクトのコミュニケーション(訴求)を強化改良することもある。プロダクトに価値を見出してくれる潜在顧客を探すこともあるし、新たな価値を生むプロダクト自体をつくり出すこともある。

  • すなわち、顧客とプロダクトの間に価値を成立させるために、両者が出会い、そこに価値を成立させるために実行するすべての思考、アクション、試行錯誤、それらを実行するための組織、人員、プロセス、ノウハウ、ビジネスの活動を、私は「マーケティング」と呼んでいる。

  • しかしながら、理想を言えば、これらの「マーケティング」なしに、顧客とプロダクトに価値が生じ、その価値関係が多くの顧客に広がって欲しい。

  • 顧客(WHO)とプロダクト(WHAT)の価値関係が最も重要であり、それ以外はすべて手段手法(HOW)であると主張する理由はここにある。

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《西口一希》

N1分析