
リピート顧客を見極め、その特徴をよく見るべき
前項では、20%の顧客が80%の利益を占める「パレートの法則」を解説しました。
もちろん、新規の顧客を増やす努力も必要です。しかし、「パレートの法則」を踏まえると、新規顧客はそのうちの2割程度の少数の人しかリピートしてくれません。多くのビジネスで経営が苦しくなるのは、この100人の中の「リピートしてくれる20人」がわからないからです。
ずっと来てくださる常連の顧客を見て、ほかの顧客とは何がどう違うのか、どんな要素を持っているのかを知り、そこを意識して伸ばしていくことで長期的な売上と利益につながっていきます。中心に考えるべきは、「リピートしてくださる顧客(ロイヤル顧客)」なのです。
ただし、そうした常連の顧客も一定の割合で離反していくため、その離反を補って新しい常連の顧客となり得る新規の顧客を増やしていく努力も必要です。そして、「その新規の顧客を、リピートする常連の顧客にするためには何をすればいいのか」を考えることで、8割の新規の顧客の中から2割のリピート客に上がる人が出てきます。
こうした施策の積み重ねによって、リピートする2割になっていただける顧客を積み重ねていくことで、安定した継続性のある顧客が増え、お店は中長期で成長していきます。
にもかかわらず、多くの店では一番人数の多い「リピートしてくれない80人」に目を向けがちです。リピート客の20人が18人へと2人減ることよりも、新規客の80人が75人へと5人減るほうが短期でのインパクトは強く、「客足が減ってしまった」「このままで大丈夫か」と心配になるのです。
しかし当然、リピート客2人を失うほうが、新規客を5人失うことより、継続的な売上と利益、すなわち経営にとって深刻な問題をもたらします。
直近で増えている顧客層への投資は正しい?
先日、筆者が支援させていただいている企業で、「若年層のユーザーを伸ばしたい」というご相談がありました。
そこで、一昨年の売上と過去5年間の累計売上で顧客別ランキングを出していただいた結果、一昨年の売上上位には若年層が多いものの、5年間の累計売上で見たときに上位にくるのは、年齢が高めの顧客層でした。
つまり、その企業が獲得を強化しようと考えていた若年層の多くは、短期的な売上にしか貢献しないのです。単純に若年層のユーザーを増やせば、一時的な売上は増えるものの、明らかに長期での利益性を毀損します。
このように、中長期で貢献している顧客と短期で貢献している顧客は異なるのですが、ほとんどの人にとっては直近1年間の記憶のほうが強く、印象に残りやすいため、短期的な貢献にしかならない顧客を「重要な顧客」として誤解してしまうのです。
一過性の顧客ばかり獲得すると、利益を損なう
一過性の顧客を獲得すれば短期的な売上は上がりますが、それは非常に危険な状態です。1回限りの販売で利益を上げるビジネスモデルであれば問題はないかもしれませんが、多くの企業は1回限りでは利益は少ないか、むしろ損失が出ています。
ほとんどの事業はリピートしてもらってこそ利益が上がるビジネスモデルになっており、1回しか購入してくれない顧客を大量に呼び込んでいる状態では、継続的な利益は上がっていきません。
売上は上がっているが利益率が下がっている場合も多くありますが、そのほとんどは、このパターンに陥っています。
短期的な売上を重視する傾向は、BtoBでもよく見られます。マーケティングや営業が、リピートカスタマーを最も理解しているカスタマーサクセス部門と分断した状態で、新規獲得向けのリード獲得を過剰に行ったり、インサイドセールスを過度に強化するケースです。
企業経営で重視しなければいけないのは、短期ではなく、リピートカスタマーによる継続的な売上と利益なのです。
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