2-4-37:仮説をもってインタビューし、戦略につなげる

顧客起点マーケティング N1分析
仮説を立ててインタビューを行い、顧客理解とアイデア検証を繰り返して、戦略や施策の精度を高めることが重要です。
2-4-37:仮説をもってインタビューし、戦略につなげる

「仮説」から「戦略」へ、「戦略」から「施策」へ

これまで述べてきたように、N1インタビューをすれば、必ずお客様が明確なアイデアを語ってくださるわけではありません。

「N1インタビュー」は顧客理解の解像度を高め、ロイヤル化までにいたる「アイデアのヒント」を得る手段です。インタビューを通してお客様の購入行動を心理的に深く掘り下げるためには、事前に「仮説」を準備しておく必要があります。

インタビューで得たヒントを考察しながら、その仮説案の精度を高めて「WHOとWHAT」にします。

その後、LTVの最大化に向けたWHOとWHATを結び付ける具体的な施策(HOW)を検討します。

そして、もし仮説になかった想定外の話がインタビュー中に出てきたら、「その違い」がわかるまで確認することが重要です。仮説とは違う点を掘り下げていくことで、事業拡大のチャンスにつながる可能性があるからです。

さらに、N1インタビューで「WHOとWHAT」のアイデアが見えてきたら、次の顧客のインタビューで仮説案として呈示し、検証します。インタビュー中は、「この人に」「何を提案すればいいか」という仮説を常に頭の中で考え続けながら話を聞きます。

何かアイデアがあるなら、インタビューでいろいろ聞いた後に「たとえば、このブランドでこういう製品が出たら、どう思います?」などと投げかけてみることです。

筆者が「N1インタビュー」をする場合は、そのようなアイデアを5つ程度は用意しておいて、どう思われるかを聞いています。お客様の返事がなんだかよくわからないという感じだったり、「ああ、いいですね」くらいの他人事なトーンだったりしたら、あまり良い反応とは言えません。

「それ、すごくいいじゃないですか!」「それ、使いたいです!」といった前向きな反応があれば脈ありですし、「それ、いつ出るんですか?」「え、いくらですか?」のように具体的な購入アクションにつながるような反応が出たときは、勝ち筋ととらえていいでしょう。

1人の人がそれだけ反応したときというのは、必ず同じように反応する人がいます。後は、それが1万人なのか、100万人なのかというどこまでスケールするかの問題です。

インタビューを通して仮説を設定する能力を磨く

さらに、その反応を主軸にして、次の「N1インタビュー」の際に投げてみます。そうやって反応をうかがっていったときに何人かが強い反応をしたら、実際に小規模なテストなどの実行に移していきます。

ただ、前出の企業事例でパナソニックコネクトの関口さんもお話しされていたように、そのパターンをバイアス(思い込みや偏見)にはしないよう注意しましょう。

仮説は必要ですが、企業やマーケター側の思い込みをたしかめるインタビューにはしないことです。

最初から相手に仮説をぶつけると余計なバイアスがかかってしまうため、インタビューの最後に、自分の持っている仮説を投げてみます。それが違うようなら、くどくど説明せずにすぐ引っ込めます。

仮説は持っていたほうがいいけれども、それを相手に押しつけないことです。

最初のうちは、こうした仮説の立案を難しく感じる人も多いと思います。

お客様の解像度が低ければ、当然、仮説は立てられません。

もちろん、最初から仮説設定能力が高ければ、言うことはありませんが、「N1分析」自体の経験値が低ければ、そもそも仮説が十分に出てこないこともありえます。

その場合は、「N1インタビュー」でお客様の話を聞き、顧客理解を深めながら仮説設定能力を高めていくしかありません。

最初のうちは精度が粗くてもいいので、事業の課題を振り返り、演繹的なデータを検討して自分なりに仮説案をつくっておくことが重要です。ただし、これはあくまで出発点です。1人のお客様へのインタビューをしていくごとに、また違う仮説が出てきます。

そのようにして、アイデアの候補が徐々に増えていくので、インタビューを繰り返せば繰り返すほど、当たりを探ることができるようになっていきます。

仮説がなければ「アイデア」のヒントをつかめない

ここまでの項目で、N1インタビューの際には「目的」が重要であるという話をしましたが、「仮説」も同様です。事業の課題も把握していない、インタビューの相手の購入行動も理解していない、何の仮説も持っていないという状態でN1インタビューをすると、アイデアのきっかけがあっても見逃してしまいます。

最終的にマーケティングやビジネスで成果につながるかどうかは、このアイデアがつくれるかどうかです。どれだけ分析をしても、結局、お客様に提案するWHATが思いつかなければ、プロダクトの売上にはつながりません。

筆者は、さまざまな分野の企業のコンサルティングをしていますが、それ以外でも誰に頼まれたわけでもないにもかかわらず、いろいろな分野の方にインタビューをしています。

好奇心からの行動なのですが、大ヒットしている商品や、何かの製品に対するヘビーユーザーを見つけたら、いろいろな角度から個人的にインタビューして、なぜそういう心理状態になっているかを掘り下げるようにしているのです。そして、「ほかの方にこの製品を買ってもらうとしたら、どうしたら買ってもらえるか」などと勝手に目的を設定して、推察しながら話を聞いています。

日頃からこうしたことをしていると、そのうち、いろいろな分野に共通するパターンが見えてきます。そして、人がモノを買うときに感じる便益や独自性には相似形があることなどを実感しています。

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《西口一希》

N1分析