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パナソニックコネクト株式会社は、BtoBソリューションの中核を担う事業会社としてサプライチェーン、公共サービス、生活インフラ、エンターテインメント分野など、お客様の多様な現場に寄り添い、課題解決に向けた新しいソリューションや高度に差別化されたハードウェアを提供してしています。 同社を率いる樋口泰行CEOが就任以来、力を入れてこられたのが組織改革です。その樋口CEOにキャリアを見込まれ2017年に入社したCMO(最高マーケティング責任者)の山口有希子氏が中心となって、マーケティング機能の強化に取り組まれています。 大企業のBtoBマーケティングにおける課題とは何か。「Nl分析」によって組織はどう変わっていったのか。 山口氏と、マーケティングの現場で指揮を執る関口昭如氏にお話をうかがいました。 インタビューイー/山口有希子(やまぐち・ゆきこ)氏 パナソニックコネクト株式会社取締役執行役員シエア・ヴアイス・プレジデントCMO。シスコシステムズ、ヤフージャパンなど複数の企業にてマーケティング部門管理職に25年以上従事。日本アイ・ビー・エムにてブランド部長およびデジタルコンテンツマーケティング&サービス部長を経て、2017年より前身のパナソニックコネクティッドソリユーションズに入社。国内外のマーケティング組織・機能を強化しつつ、企業トランスフォーメーションをドライブしている。日本アドバタイザーズ協会デジタルメディア専門委員長 ad:tech tokyoアドバイザリーボード、「MASHING UP」アドバイザリーボード。 インタビューイー/関口昭如(せきぐち・あきゆき)氏 パナソニックコネクト株式会社デザイン&マーケティング本部デジタルカスタマーエクスペリエンス エグゼクティブ(兼)統括部長(兼)モバイルソリューションズマーケティング部シエアマネージャー(兼)IT・デジタル推進本部 CX総括。日立に入社後、ルネサスエレクトロニクスなどのBtoB製造業において、デジタルを中心とした、グローバルマーケティング、デマンドジエネレーションを牽引。2018年よりパナソニックコネクトにて、デジタルマーケティングカスタマーエクスペリエンス改革を断行中。また国立大学院等の教育機関にて教鞭も執る。博士。 |
危機感を持つ人たちがつながり、動かしていく
西口 パナソニックコネクトは2022年4月に新会社として設立されたわけですが、前身のパナソニックコネクティッドソリューションズ(パナソニックグループの社内カンパニー)の時代から、山口さんが先頭に立たれてマーケティング改革やカルチャー改革を進めてこられました。現場では、関口さんがBtoBマーケティングを統括されています。
じつは、私も2020年頃に1年ほど「N1分析」のお手伝いをさせていただいたのですが、あらためて御社でBtoBマーケティングの強化を進められた経緯から聞かせてください。
山口 私は今から約6年半前(2017年12月)にパナソニックに入社し、マーケティングの組織をつくって関口さんにもジョインしていただき、さまざまな変革を進めてきました。
当時の弊社は、いいものをつくり、そしてセールスが売り込めば売れるというプロダクトアウト的な発想が強く、マーケティングが重要視されていませんでした。まさに日本の伝統的な製造業という感じでした。
そもそも全社的にその考え方を変えていかなければいけないと感じていて、マーケティング業務を担うマトリクス組織も、まだまだマーケティング機能が十分とは言えない状況で、そこも変えていく必要がありました。 ただ、やはり社内の人間だけで行うのは難しいと考え、あえて西口さんにお願いして一緒に「Nl分析」を進めていったのですが、当時は本当に時間がかかりましたよね。
西口 当時は、私の印象でも山口さんがおっしゃるようにプロダクトアウトでしたし、組織ごとに情報共有が不十分という印象がありました。 営業の方はそれぞれに一生懸命仕事をされていて、お客様の話を聞いていろいろな情報を持つているけれども、どんな情報を本社に戻したらいいのかわからないから話がそこで止まってしまい、結果的にはお客様の状況が社内で把握できていないと感じていました。
それでも、山口さんと関口さんがすごく力強く引っ張られていて、とくに関口さんが現場でガンガンやられていて、「おお、すごい」と思いながら、その後のパナソニックコネクトの大躍進を拝見していると、感動すら覚えるほどです。
関口 じつは当時、社内で「絶対にこのお客様は取れます」と言われていたお客様を失注してしまったこともありました。
製造業というのは、長く事業を回していると、ある程度のプロセスが出来上がります。 日本の企業はオペレーションに優れているところがあって、プロセスができていると、その中で一生懸命がんばりますよね。 だから、大崩れはしません。でも、そのプロセスを回すことだけに一生懸命になってしまうと、顧客のことを解像度高く見ることができなくなることもあるのです。
以前は「お客様が大事」とか「顧客ニーズをとらえる」などと言いながら、解像度が低くて表面的な話ばかり集めてしまったり、平均値や統計の中央値などで見てしまったり。 弊社でも、当時はお客様の中にロイヤル顧客がどのくらいいるのか、新規顧客がどのくらいいるのかなどは把握できていない状況でした。
西口 これは非常に重要な話ですね。 私もいろいろな会社をお手伝いさせていただいておりますが、確固たる経営基盤があり、強固なビジネスモデルができている企業、とくに売上と利益が多少ブレても潰れるようなことはまずないという企業ほど、N1から離れていくんですよね。 そんなことを把握しなくても大丈夫だという気持ちがあるからでしょう。
常に切迫感や危機感を持っているスタートアップや中小企業とは違い、大企業の方には安心感があって切迫感がないから、売上が多少上がっていればいいと思いがちです。 その売上はひょっとしたら新規顧客で積み上がっていて、ロイヤル顧客の大ロクライアントが抜けているのかもしれないけれども、トータルで上がっていたらいいという感覚ではないかと感じています。
山口 強い危機感を持っているマネジメント層も実際にはいたのですが、率直に言うと、人や組織によってグラデーションがありましたね。 西口さんと進めたプロジェクトはとくにティピカルで、最初の半年間はほとんど動きがありませんでした。 事業部のトップも営業のトップも巻き込んで話をしても、なかなか進まなかった。
でも最終的には、西口さんが今言われた危機感を持つ人たちがつながって、動かしていったと私は思っているんです。 実際の現場は関口さんがぐわっと回してくれて、私は私で事業部だけで動かないところをバジェッテイング(予算の管理や調整)したりしましたが、しだいに企画や営業の人たちも変わってきたんですね。
それは、現場で「N1」や「顧客起点」の話をしていくうちに「やっぱりそうだよね」と共感してくれる方々が出てきたということもあります。 また、潜在的な離反顧客の数などが見えるようになってきて、「このままではまずい」と危機意識を持つ方が出てきたこともあると思います。
関口 それにBtoBというのは、西口さんによる顧客分析の「9segs」の「積極・消極」で言うと消極度合いが高いです。 スイッチングコストが高く頻繁には乗り換えられないので、こちらはロイヤル顧客だととらえていても、じつはそれほど便益を感じていらっしゃらない顧客もいます。あるいは便益を感じていても、こちらの想定していた便益とは違うことも多い。というより、N1インタビューで詳しく聞いてみると、意外なところに便益を感じてくださっているケースがほとんどです。
その意外な話を社内でシェアすると、「え、そんなことが使ってくださる理由だったの!?」と驚くことが多く、それでみんなの関心が高まっていったということもあると思いますね。

西口 その「意外な話」というのは、だいたいみなさん無視してしまいます。でも「N1分析」の本質というのは、基本的にこの意外な話、つまり「異常値」や「外れ値」に注目して、その背景にある本質や、チャンスやリスクをしっかり見極めることなんですよね。
御社でも最初は平均値や合計値を見ていた営業や企画の方たちも、徐々にN1分析で出てきた意外な話に関心を持つようになったと。 そのあたりの認識が徐々に変わってきたということですか?
関口 だいぶ変わりましたね。商材にもよりますが、誰もがわかる便益というのは、だいたい競合もやっているんですよね。だから大規模な定量調査をやっても、「全部知っている話でした」で終わることも多くて。それよりも「N1分析」で出てきた意外な話から強みをつくったり、伝えたりするほうが合理的だということにみんなが気づくようになってきたというのは大きいです。
有線LANポートが「ダントツの強み」という意外性
西口 ちなみに、「N1分析」で出てきた意外な話にはどんなものがありました?
関口 法人向けのPC事業のマーケティングなどでも、話をうかがってみると意外なところに強みを感じてくださるお客様が多いですね。いろいろありますけれど、たとえばモバイルパソコンの「レッツノート」には有線LANポートが装備されていますが、これは今ではどちらかというとレガシー(時代遅れの古くさい)ポートと言われがちです。いつまで有線ポートが必要なのかと思う人もいますけれど、「いや、もうこれがダントツの強みでしょう」と言われるお客様もじつは多いんですね。 LANに物理的に接続されているから使用環境の影響を受けにくく、通信速度も安定し、セキュリティの担保もしやすいと。
そして、そういう話を聞いたら、西口さんもやられていましたけれど、次の人にN1インタビューで聞いてみるのです。
次のお客様の反応には2つのパターンがあって、「そう、そうなんですよね」と言う方もいれば、「え、知らなかったです!」と驚く方もいます。中には「それ、もっと早く言ってくださいよ!」と言う方もいらっしゃって。
そうやって、次のお客様にN1インタビューをして聞いていきます。「こんな機能があって、こんなことができたら、もっとお役に立つことができませんか?」と聞いていくと、お客様から新しいアイデアが出てくることもよくあります。 そうやって、どんどんアイデアが広がっていって確証につながっていくんですね。
西口 有線LANポートが強みというのは、たしかに少しびっくりですね。 では「レッツノート」の有線LANポートはまだしばらく置いておくのですか?
関口 置いておきますよ、もちろん。 だから僕が今「N1分析」でやっているのは、「このポート、どれからいらないですかね?」などと間きながら、ある意味でお客様に壁打ちしているということです。なおかつ、そこで気をつけているのは、お客様が「お金を払ってでも欲しい」と思ってくださる便益を見つけなければならないということです。
「ナイス・トゥ・ハブ(あったらいい)」という話も混ざってしまうので、そこをしっかりと見極めるのが大事です。 極端に言うと、「これで5000円値上がりしても、買う可能性ありますか?」ということも聞きますね。
西口 BtoBマーケティングでありがちなのが、営業の方などにヒアリングをすると、お客様からは何をして欲しいかが出てこないことも多く、直接聞くと「値段を安くしてください」という声が確実に出ます。後は、その場の思いつきで「こんな機能が欲しい」とか「そう言えば、社内でこんなことを言われていたから、こんなことができるようになって欲しい」などと言われる。ただ、それをまともに真に受けてつくってしまうと、全然売れなかったということも少なくありません。 ときどきは当たりがあるのですが、その見極めは難しいですよね。
関口 そうですね。 たとえばわかりやすい例を出すと、お客様から「パソコンのメモリを増やしてください」という話が出てきたときに、表面的な話で終わらせてしまうと、もし実装した際に、それほどニーズがなかったなどとなるリスクが高くなります。必ずそこから「N1分析」につなげて、なぜそれが必要なのかもきちんと聞いておくようにしています。
西口 相手から言われたことに対して「それはどうしてですか?その目的って何ですか?」ということを掘り下げていって、思いつきではないものを確認する。 結局、目的は何なのかという「目的ベース」で考えるということですね。
関口 そうです。 それから、これも「N1分析」を実践する中で気づいたことでもあるのですが、BtoBに特化した話で言えばステークホルダーが多いこと。 ごくわかりやすく言うと、選定者とエンドユーザーが違うことがBtoBではほとんどです。
ですから、そこの影響度合いを見極めることも重要です。
選定者が「100%、自分たちが選定します」というお客様から、「エンドユーザーの影響力が強いので、私たちではなくてエンドユーザーに選んでもらいます」というお客様まで、いろいろなパターンがあります。 パターンによって訴求することはかなり違ってきますね。
西口 選定者とエンドユーザーが違うことに加えて、選定者の中にも2つありますよね。対面で窓口に立ってくれている人たちがその場合と、最終意思決定者が別にいるケースです。 最終意思決定者は購入のトップだったり事業部のトップだったりしますが、その購入決定者とはまだ会っていませんということもありますよね。ですから、自社の営業窓口と、お客様の会社の窓口と、本当の意思決定者と、ユーザー。この間でけっこういろいろな矛盾が起こるという話も、お聞きした記憶があります。
関口 まさにです。たとえば、購入決定者が意外にエンドユーザーのことを知らないこともあったりします。そうした状況がお客様ごとにまったく違うのが実態です。 BtoBにおける「N1分析」が奥深いのはそういうところですね。もちろん、パターン化はある程度はできると思いますが、最初からパターン化してしまうとバイアスがかかってしまうので、はじめはフラットな状態で聞きにいきます。
そうすると、「このお客様はこんなに外からの影響力があるんだ」といったことがわかってきます。西口さんもおっしゃっているように、それが1社見つかると、ほかにも必ず同じようなパターンの会社が見つかりますね。
西口 完全に帰納法ですね。1つの個別のパターンを見つけて攻略法を見つけたら、ほかにもあてはまるのではないかと考えてみる。1つのオプションとして持ちておくわけですよね。 それがどんどん増えていくと、カードが増えていくという感じですか?
関口 そうやってコミュニケーションのアイデアがどんどん増えていきますね。
西口 営業の人はお客様の会社の窓口と対応されていますが、その先に購入決定者や役員などの意思決定者がいて、さらにユーザーがいるという状態では、営業だけで攻めていくのは非常に大変ですよね。会社として、具体的にどうアプローチされているのでしょうか? 「N1分析」でわかったことをベースに営業やマークのやるべきことに落としたりするのですか?
関口 そこは今やっているチャレンジの1つです。社内には複数の事業部があり、「N1分析」も複数の事業部で行っているのですが、事業部によってアプローチが異なります。ある事業部などでは、営業とも連携しながら事業部長が自らお客様のところに行って、直接お客様と話してくるということもやっていますよ。
山口 やはり以前とはだいぶ変わりました。ですから、この事業部のケースをほかの事業部にも広げていきたいと思っていて、私もマネジメントサイドからいろいろ企んでいるところです。
西口 うわ、それはまたお話を聞きたいですね。今はたぶんまだ話せない状況なのでしょうけれど。
山口 実際、そういう感覚を持っているトップがいる事業部の業績は大幅に上がっています。ですから、こうしたケーススタディを横に広げていきたいのですが、率直に言うと、やはり各事業部で温度感の違いはありますね。同じようなアプローチをしたとしても、リーダーが本当に「N1分析」をドライブしようと考えているかどうかによって違ってきます。本当にリーダーしだいですが、そうした体制を支えるのが私の次なる役目だと思っています。
インタビュー時間の5倍、レビューにかける理由
西口 御社ほど大きな規模の企業でよくここまで変えられたと驚きますが、具体的にはどのように変革していかれたのでしょうか?
関口 弊社の「N1分析」は、社内で危機意識を持っている人たちが集まってスターターモーターを回していたものの、さきほどの話のように、なかなかエンジンがかからない状態が1年ほど続いていました。
そのような中、途中から「レビュー会」の重要性に気づいたのです。
山口 レビュー会では、営業や企画だけでなく、SEやCSまであらゆる職能の人を集め、インタビューの録画データなどを振り返りながら、現場一体で「なぜ、このお客様はこんなことを言われるんだろう?」ということを詰めていったんですね。
すると驚くことに、お客様のことを一番わかっているのはSEの人たちだったのです。
SEというのは、トラブルがあるときにお客様のところに行きますよね。 一番ネガティブな状態のときに行って、それをポジティブにして帰ってくるわけです。すると、お客様にとって一番信用できる人になる。ですから、お客様はSEにいろいろなことを話してくださるのですね。
そのため、レビュー会でほかの人が報告しているのを聞いていたSEの人たちが、「申し訳ありません。 この話、自分は知っていました」と発言することが非常に多いのです。 「伝えていなくてごめんなさい。 自分はお客様から聞いていたんですけど、トラブルの対応で一生懸命でみなさんに伝えていなかったです」と。
それはそれとして、同じお客様のことをみんなであらゆる角度から見て検討するという作業をしていったら、自分たちがこれまで見ていた解像度が低かったということがわかってきました。
それを1例、2例と広げていくうちに、事業部長や経営層も「N1分析」の重要性を理解してくれるようになっていき、その結果として事業部長自らのN1インタビューにつながっていったのです。
西口 そう言えば、関口さんは以前、レビュー会には実際にインタビューする時間の5倍、必要だとおっしゃっていましたね。
私も実際その通りだと思います。ただ、BtoBマーケティングにもいろいろ携わってきて思うのは、レビュー会に対して興味を失ってしまう人も多いことです。 とくに「N1分析」をはじめたばかりの頃はいぶかしげな人も多く、なかなかやる気が上がらないことや、通り一遍に報告を聞いて「ふんふん、そうですか」で終わってしまうこともあります。 そこからお客様を本当に理解して、新しい機会やアイデアを見つける、もしくはリスクを読み取るということにつなげるために、御社ではどうされていますか?
関口 おっしゃるように、人によって温度感はまったく違います。ですから、マーケティング部門がほかの職能の人に「面白い」と思わせることも非常に重要です。レビュー会も、マーケティング部門がある程度コーディネーションしなければいけないと考えて、そこはけっこう心がけていました。
それからさきほども言いましたが、SEがお客様からよくお話を聞いていたので、話を盛り上げることにも注力しました。「どうしてそれを知っているんですか?(すごいですね)」と突っ込んで質問したり、「とても重要なことなので、もっといろいろ言ってもいいんじやないですか」と声をかけたりして。
SEもそれまではトラブルの対応がメインで、どちらかというと自分たちは裏方の仕事だと思っていたようですが、「自分たちはこんなにお客様のことを知っている」ということを自覚して覚醒していったような経緯があります。
CS(カスタマーサクセス)の人たちもある意味で同じで、じつはお客様のことをよく知っているんですよ。でも、日頃はトラブルの対応に追われて、それをアイデアに結び付けるということは自分たちのミッションではないという感覚を持っていたのですね。 自分たちがそれほど貴重なことを知っているとは思いもしなかったということもあります。
西口 「重要な情報だと思っていなかったので、伝えていませんでした」というのは、本当によく直面しますね。「それ、言っておいたほうが良かったですか?」みたいな話は、営業サイドでもありますね。
関口 とくに直販でお客様としょっちゅうお会いしている営業はじつは知っていることも多いのですが、最初は表面的な話や数字的な話から報告しなければいけないということもありますし、個別の話を報告する機会もなかったのかもしれません。
西口 周りが質問しないから、ということもありますよね。そのために、そういうことが重要だという価値観も共有されていない。売上が悪かったら黙っておくしかないし、売上が良かったら良かったで、「なぜそうなったか」ということは誰にも間かれないから、重要視されていないこととして扱われてしまうパターンですね。
それから、カスタマーサクセスやSEなどの後工程、購入後にお客様と接している部門の人たちはかなり情報を持っているのに、この情報がファネルの手前の営業やリード獲得をしているマーケテイングには共有されていないというのも、よくあるパターンです。
そもそも買ったお客様がこうなって、こんなことになるというのを知っていたら、営業のトークも変わっていたのに、という話なのですが。
とくに最近の大企業では、ファネル構造で組織がきっちり分断されているところが多いですよね。マーケティングのリード獲得があって、インサイドセールスがあって、営業がいて、カスタマーサクセスがあってというように。それぞれが機能的に働いていますが、横と横の連携はほぼありません。一番情報が集まっているのは、お客様の購入後に問題を認識して対応したり、苦情に対応したりするカスタマーサクセスですが、その情報が社内で共有されていないので、マーケティングのリード獲得も明後日の方向へ行ってしまうことも多いです。
関口 おっしゃる通りです。それに、人間というのはレポーティングツールにはちょっと格好のいいことを書きがちですよね。だから、報告が表面的になったり、体裁のいい話が多くなったりしてしまう。思いつきで「メモリを増やしたい」と言ったお客様の話なども、「なぜ、それを必要とされているのか」という本質的な話まではなかなか書かれません。 そこをしっかり聞き出して、社内で共有しなければいけない。 単にレポーティングさせるだけでは難しいと思っています。
西口 たとえば、さきほどの「有線LANポート」の話も、レポートだけならたぶん書きませんよね。 営業資料にもそもそも書いていないような、特殊な変な話だから、報告するまでもないな、と現場で判断してしまいますね。 こんなこと報告したら、本社から怒られるんじゃないかと。
プロダクトの「具体的な使用場面と目的」を聞く
関口 BtoBでありがちなのが、不幸にしてお客様に製品やサービスを採用いただけなかったときに、お客様の側が気をつかって弊社の営業担当に不採用の理由を話してくださることです。実際はまったく違う理由なのに、「いやぁ、価格でどうしても負けちゃったんですよ」などと、営業担当を傷つけないように言ってくださるんです。
それがそのままSFA(営業支援ツール)に載ると、「価格が高かった。 以上」という話で終わってしまうこともあります。
ですから、やはり失注顧客に対しても詳細にN1インタビューをしなければいけないと思っています。 難しいことですが。
西口 難しいですよね。 以前、御社で失注分析をされていましたが、たしかにそのときに出てくる話は「価格が高い」ばかりでした。 実際には、価格以外の理由にどういうものがあったのですか?
関口 ひと言で言うと、西口さんがよく言われるように、きちんとお客様に便益が伝わっていなかったということです。 価格に見合う便益がつくられていない、あるいは相手に伝わっていないという。
西口 当時の話で覚えているのは、御社の製品の「レッツノート」も「タフブック」が非常に堅牢性が高くて壊れにくく、どんな状況でも使いやすいという便益があって、たとえばハードな状況で慌ただしく記事を書くような新聞記者にも愛用されていると。 ただ、その堅牢性がどの程度お客様に訴求できているのかという話がありましたね。 実際のところ、堅牢性をあまり訴求しきれていなかったということですか?
関口 じつは「堅牢性」とひと口に言っても、いろいろな意味があります。
海外の事例ですが、弊社のモバイルPCは、米・警察でも使われています。 それは、頑丈で壊れにくいとか、車中で食事をする際やコーヒーを置く際に安定していて便利だとか、さまざまな評価の理由をいただいているのですが、最も大きな評価の理由の1つは「熱に強い」ということでした。
捜査官は車の中にPCを置きっ放しにしておくことが多く、夏は車内の室温はとんでもないことになります。捜査官が車に戻ってきたらすぐに使えなくてはいけませんから、その場合の「堅牢性」というのは耐熱を意味していたりするわけです。
そうかと思えば、置いておいたPCを今度はクーラーがギンギンに効いているガソリンスタンドに持ち込んで送受信などをしなければいけない。そんな両極端な状態で、問題なく動くPCはほかにはないと言ってくださるんですね。
ですから、「堅牢性」というひと言で片づけず、製品がどういう状態で使われて、どういう便益を感じてくださっているかを聞かないといけないわけです。
西口 非常にリアルで興味深い話です。 たしかに、具体的な使用場面と目的を聞かなければ、どういう問題がそこで解決されているかということはわかりませんね。
でも、パナソニックのPCはもともとしっかり品質試験や過酷試験をされて、ある程度の熱に対する堅牢性を確保されていますよね。
関口 もちろんです。
西口 ただプロダクトそのものの品質がいくら良くても、それが実際にどう役に立つかというところまで落とし込み切れていなければ、お客様に対する訴求の手前で止まってしまうということですか?
関口 そうです。 そういう話が1人のN1インタビューだけでも見つかるわけですよね。
西口 今のストーリーだけでも非常に面白いですね。
ところで、顧客の解像度を高めるために、営業のみなさんがお客様からヒアリングする内容や商談時に聞く内容は変わってきていますか?
なぜこれをお聞きするのかというと、お客様と最も頻度高く接している営業やカスタマーサクセスの人たちに、どういうことを知れば次につながる可能性があるかを知ってもらうのが一番いいのではないかと思っているからです。BtoBであれ、BtoCであれ、マーケティング主導でやっていくためにはそこからスタートしないと回りませんし、とくに営業の人にいかに浸透させるかが、永続的に「N1分析」を続けられるかどうかの差異につながるのではないかと。
関口 そこはまだチャレンジしているところです。ただ、端的に言うと、さきほどのように「N1分析」で見つけてきた特殊な便益は、営業も把握していないことが多いです。製品力タログに載っている情報や多くの人が知っている話はよく把握していますが。
そこで、営業の人にそういう話を伝えると、「それ、なんで言ってくれなかったんですか」となりますし、最近では「自分たちもその便益をお客様に伝えますから」と言ってくれる営業も徐々に増えてきています。
また最初の頃は、お客様のN1インタビューの際には営業担当にはあえて席を外してもらっていました。 お客様も普段接している営業担当の前では言いたいことも言えないでしょうし、その代わり、後で全部報告しますからという話を事前にして。
それが、最近ではインタビューに同席してもらうことが増えてきています。 そうすると、さきほどのように「じつはこの話、前にお客様から聞いていたけれど、そんなに深い話だったのか」と驚く営業パーソンも増えてきています。
ですから、今は営業の中でボトムアップ的に「N1分析」の理解が広がっているという感じです。 さらに、これは今後のアイデアになりますが、仮説検証のプロセスをつくろうと考えています。「N1分析」で見つけたアイデアを営業に全部流すので、それがあなたのお客様に響くかどうか聞いてきてくださいという仮説検証です。うまくいくかどうかはわかりませんが。
西口 デジタルマーケティングで言うABテストをリアルでやるという感じですか?
関口 おっしゃる通り、やや量的な検証のようなものをしようと考えています。 すでに弊社で進めているCRM(Customer Relationship Management/ 顧客関係管理)プロジェクトの一環です。
西口 非常にいいと思いますね。
ここまで御社の試みをうかがってきましたけれど、いや、すごいです。BtoBのマーケティングでここまで「N1分析」を取り入れて、しかもテストまで視野に入れてやられているケースは、私の知る限り、パナソニックコネクトがはじめてです。
事業方針や取締役会でも「Nl分析」が浸透
西口 ところで、パナソニックコネクトの樋口泰行CEOは「N1分析」に関してはどう考えていらっしゃるのですか?
山口 CEOの樋口も「顧客視点」が非常に重要だと話しています。弊社はコングロマリットであり、事業部それぞれが独立してオペレーションに関わっています。CEOがそれぞれに深くドライブして「N1分析」を実施するよう指示しているわけではありませんが、弊社の経営会議や取締役会では「N1インタビュー」といった言葉を出して報告していますね。
関口 事業方針にも「N1からスタート」ということが書いてありますし、方針説明でも「N1」という言葉が出てきますよ。実際、「N1分析」によって利益が大きく変わってきていますからね。事業部が売上主体から利益主体に変わったことも影響していますが、やはりお客様にとっての価値がなければ利益は生まれませんから。
山口 取締役会の資料にも「N1」という言葉が出てきます。
西口 メディアで見る限りどんどん変わってきていてすごいなと感じていましたが、実際にはこれほどまでに進んでいらっしゃるのですね。
ところで、取締役会で「N1」という言葉が出たときに、それを否定したり疑間を呈したりする方はいらっしゃらなかったんですか?
山口 いませんでした。やはりさきほども言いましたが、事業がV字回復していますから。それで結果が出ているからこそ支持も得ているのだと思います。
V字回復している理由には、複数の要因があります。サプライチェーンのマネジメントの変革を大幅に進めたことなど、いくつかの要因がそろったうえでのトランスフォーメーションなのですが、やはり「N1分析」の推進によって、製品・サービスのバリューをどう見ていくかという理解が社内で進んだことは大きいですね。ですから、全社的に非常に重要なものとして認識されています。
西口 それは非常に重要ですね。いろいろな企業を見てきて思うのですが、マネジメントチームや経営層が「でも、それって特殊な話でしょ」という扱いをするケースも少なくありません。そうすると、会社全体が平均値や合計値などのマスの考え方に戻ってしまうんですよね。そして営業も、ますます個別の話を上げなくなるという負のスパイラルができてしまいます。
お話をうかがっていると、取締役会で「N1」の話が出てきても、みなさんがそれにきちんと耳を傾けるような価値観がしっかり共有されています。 個別の話を特殊なケースとして扱わないというのは、じつはものすごく大きな分かれ道だと思います。 当然、山口さんも取締役会にいらっしゃるから否定しにくいということもあるのでしょうけれど。
山口 取締役会には私もいますが、V字回復している事業部の事業部長が報告してくれています。 その人が「マーケティングと連携してやっています。 マーケットイン型の活動に事業を変えたことが重要でした」と言ってくれているのが大きいですね。

西口 いいですね。マーケティングがこんなにBtoBで力を持っているケースは見たことがありません。マーケティングはだいたい販売促進のような扱いを受けるのが一般的ですよ。
関口 そうですよね。弊社でも以前は「マーケティング=販売促進」と思われてしまうことが多かったのですが、さきほどお話しした法人向けのPC事業などでは、とくにマーケティングの扱いがガラッと変わりました。今では企画から顧客理解が入っているという感じです。
山口 それでも、まだまだチャレンジの状態です。
西口 日本のBtoBマーケティングというのは、BtoC以上に伸びしろが大きいと思っているのですが、御社の場合はすでに最終的なビジョンに近いかたちが出来上がりつつあり、他社と比べてもこのレベルまでBtoBマーケティングが到達されているところはないという認識を持っています。なぜそこまで達成できたのか、非常に興味があります。
山口さんと関口さんはずっとBtoBマーケティングに関わっていらっしゃいますが、BtoBマーケティングの理想像は、それぞれどこで設定されたのでしょうか?
山口 関口さんにも私にもそれぞれの経験値がありますが、私の場合はアイ・ ビー・エムで学んだ経験が非常に大きなものだったと感じています。
先日、アイ・ビー・エムで20年間、サミュエル・パルミサーノ氏やルイス・ガースナー氏、ジニー・ロメッティ氏といった3代のCEOのもとでCMO(最高マーケティング責任者)を務めたジョン・イワタさんと1時間ほど1on1をしたんですね。私はイワタさんをとても尊敬しているのですが、そのときに彼が話していたのが、CMOの本当の役割についてでした。
彼は、CMOには3つあると思っていると。
1つ目は、セールスリードやセールスサポートをするCMOです。
2つ目は、一般消費財などでよくありますが、R&Dで生み出した製品を市場に入れてコンシューマーからエングージメントを取って売るCMO。
でも、イワタさんが目指したCMOは、企業をより良くするCMOだと。 具体的にはカスタマーエクスペリエンス(顧客体験価値)とエンプロイーエクスペリエンス(従業員体験価値)の両方を向上させるCMOということです。
カスタマーエクスペリエンスをつくるためには、やはり設計や製造、プロモーション、営業などの機能をすべてつなぐことが重要になります。そのためにN1インタビューを実施しているわけですね。
また、それとは別に、今は企業内でマネジャーになりたくない人が増えているといった問題があります。こうした人事の問題もCMOの役割ととらえ、組織間で横連携しながら問題解決に取り組んでいます。
結局、社内をつないで、全体を上げて、会社自体がより良くなっていくための取り組みをするのがCMOの役割だと私も信じているんですね。
「カスタマーエクスペリエンスを生み出す」という意味では、CMOが「顧客起点」の考え方を組織全体に広めるためのハブにならなければいけません。まだまだ能力不足のところもありますが、そうした意識は常に強く持っています。
西口 関口さんはいかがですか?
関口 僕は複数の企業でいわゆるデマンドジェネレーション(需要や見込み案件の創出)やBtoBのセールスマーケティングなどをずっとやってきて、じつは僕にとって影響力が一番大きかったのは西口さんなんです。
マーケティングというのは、プロセスをつくってそれを回していると、なんとなくやった感覚になるところがありますよね。以前の僕にもそういう面があったのですが、西口さんが「お客様が感じる価値というのは、価格に見合う便益と独自性であり、マーケティングというのは、それをつくるか伝えるかのどちらかでしかない」という非常にシンプルなお話をされていて。
そのシンプルなことを自分はできていないと、頭をトンカチで叩かれたような衝撃があったんです。
それまでは、プロダクトがあって「これをどうやって売るか」という思考しかなかったのですが、お客様が望んでいる価格に見合う便益、さらに独自性がないと、たぶん何をしても価格競争に巻き込まれてしまう。だから、その価値を見つけてつくる、というところから考えないといけません。
もちろん、できたプロダクトをどう売るかも重要ですが、価値をどうつくるかも重要です。この両方を見なければいけないというのをあらためて認識して、僕自身、大幅にバージョンアップしたと感じています。
西口 そう言っていただけるのは非常にうれしいのですが、関口さんが今おっしゃったことを社内で徹底して進めたいと考えても、なかなか進まない組織が多いのが実情です。推進されている方々が、孤軍奮闘になってしまうことも多くて。
組織って、変化を嫌うんですよね。 まずオープンカルチャーでなければ難しいし、お客様をしっかり見ましょうという意識が社内に浸透していないとうまくいきません。 結局、これまでのやり方を続けるという風潮が強くなってしまう会社も多いです。
御社では、やはり山口さんと関口さんという奇跡的な組み合わせがあってこそ成果が出たのでしょうね。
さきほど山口さんがおっしやられた「エンプロイーエクスペリエンス」と「カスタマーエクスペリエンス」も、言葉としてはなんとなく概念的な感じになりますが、実際に顧客ベースで価値をつくるということと組み合わさっているから、ここまでマーケティング改革が進んだのだなと、今、非常に納得しています。
山口 私も、CMOとしてフォーカスしているのは会社のカルチャー改革です。
それこそ会社の新設当初は、隣の事業部が何をしているかにも関心がないという感じで、事業部同士のつながりやコミュニケーションも希薄でした。でも最近では、パナソニックコネクトとして一緒に頑張っていこう、いい会社にしていこうという雰囲気が醸成されてきています。
それは、CEOの樋口が7年ほどかけて社内にそうした雰囲気をつくってきた、企業カルチャーを変革してきたことが大きいです。 そして、社内に「N1分析」が浸透してきたように、部門間で連携して顧客に向き合うというプロジェクトが増えたことが大きく影響していると思っています。
関口 僕もそう思いますね。弊社はちょっとやり過ぎじゃないかと思うほどカルチャーを変革しようとしてきた会社です。カルチャー改革がなければ、「N1分析」もここまで進まなかったです。
カルチャー改革とマーケティング改革の軸は「お客様」
西口 私の勝手な印象ですが、御社の発信を外から見ていて、「カルチャー」といったときの起点が「個人の幸福」というところにあるのではないかと感じています。
だから、まず従業員を大切にして従業員の幸せを軸に置きましょうと。 当然、従業員には働くお母さんもいるし、それぞれの家庭の事情によって働くスタイルも違いますから、従業員が誰であっても、より働きやすく活躍しやすい取り組みをされています。
なおかつ、お客様のほうもしっかり見て重要視されています。 結局、「個人の幸せ」ということを起点に「カスタマーエクスペリエンス」や「エンプロイーエクスペリエンス」もつくられているのではないかと思います。

山口 もともと弊社のカルチャー改革の目的は「お客様に近づく」という意識をつくるためでした。お客様に近づくということは、社内に向いている視野を変えるということ。 まさに大企業病から脱却するということですね。
それを変えるためには、個人個人が自立しなければいけません。そして改革には「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI/多様性・公平性・包括性)」といったウェルビーイングも含まれます。 やはり自分が尊重され幸せでないと、お客様のことも尊重できませんから。 そこも含めてすべてつながっているのです。
西口 なるほど。これまで、「カルチャーを変える」と言ってカルチャーだけにフォーカスして、まったく結果を出してない会社もたくさん見てきました。一方、マーケティングだけを理想的にやろうとして途中でマーケティングの責任者がいなくなってしまう会社もあります。孤軍奮闘したけれど、「もうこの会社は変わりません」と言って辞めていくケースもあります。
御社の場合はカルチャーとマーケティングの両極からバシッとつながっていますが、もともと「お客様」という軸が真ん中にあったということですね。
そのために従業員の幸せも考えているし、カルチャーも紐付いていると。こんなふうにうまくかみ合っているケースって珍しいですよ。
山口 まだまだチャレンジの最中ですが、たしかに今はマーケティングと各事業部がしっかりつながってきているという実感はありますね。
やはり、CEO自身がマーケティングの重要性を認識しているということも大きいですし、ボードメンバーと協力し合って連携しているという感覚があります。それは単なるセールスリードのマーケティングではなくて、カルチャー改革も含めた変革を一緒にやっているからですね。
西口 本書のケーススタディで紹介したほかの企業もそうですし、私もこれまでいろいろな企業を見てきて思うのは、「N1分析」を成功させるためには、組織としてカルチャーが変わらないと難しい部分があるということです。
関口 本当にカルチャーが変わらないと難しいですね。 そしてカルチャー改革ほど難しいものはありません。 いや、実際すごく大変ですよ。
西口 関口さんと山口さんの組み合わせが成立しているから回っているのかもしれませんね。 1人で両方は絶対できませんね。
山口 難しいですね。 関口さんが現場でぐりぐり回してくださって、すごく助かっています。
西口 最後に、とくにBtoB分野において「N1分析」「顧客理解」ということをまだ取り入れられていない、あるいはこれからやろうという企業や組織に対して、何かアドバイスはありますか?
山口 やはり「諦めない」ことですね。ハードルがあるのは当たり前です。いろいろな方々や組織を巻き込みながらやらなければ「N1分析」はできませんから。でも、これをやれば、絶対に会社のためになります。
とくにBtoBの場合、マーケティングのレベルを上げるだけで、日本はだいぶ変わると私は思っているんです。 なぜなら、ほとんどの企業がBtoBですよね。
西口 日本のGDPのほとんどはBtoBですね。
山口 BtoBは、マーケティングによってレベルが一気に変わります。 でも、それに気づいてない方々がまだまだいるということを考えると、本当に「Room to Improve(より良くなるための改善の余地)」が大きいと思いますね。
西口 ここまでこられたのは、やはり諦めなかったから。 理論的なことももちろん欠かせないですが、それはすごく大事ですね。関口さんはいかがですか?
関口 まずお客様と会うことと、そのお客様への価値を提案するために想像力を発揮することからはじめるということですね。
BtoBのマーケティングをしていると、お客様から遠くなりがちです。BtoCのように、どこかに行けば使っている人に会える、自分でも使ってみるということができない商材も多いと思います。BtoBはもともとエンドユーザーから遠い場合も多く、お客様に会うことを諦めてしまうマーケターも多いような気がします。
実際、お客様に会ってお話をうかがうとか、実際に使っているところを見せてもらうというのは難しい面もあるのですが、それでもやはり、まずお客様と会うことからスタートするべきです。とくに事業責任者やトップは絶対にやったほうがいいと思っています。僕もそれをやって、本当に変わりましたから。
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