2-3-34:カスタマーダイナミクスで投資の最適解を見つける

顧客起点マーケティング 経営とマーケティングの理解
顧客動態と戦略を正しく理解し、迅速に実行すること、さらにPDCAを継続することが、利益向上と持続的成長にとって重要です。
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異なる顧客動態に対応する顧客戦略を洞察する

前項で、5segsカスタマーダイナミクスには4つの顧客戦略が成立していると述べました。これらを図に表すと、次のように、異なる顧客動態には異なる顧客戦略があることがわかります。

この理解を、組織の共通理解とすることが重要です。マーケット全体と自社プロダクトとの関係において、5つの顧客セグメントと4つの動態があることを共通理解として組織に浸透させることで、顧客戦略とカスタマーダイナミクスが、異なる部門間をつらぬく横串になります。

顧客の1「ロイヤル化およびさらなるロイヤル化」、2「離反復帰」、3「新規獲得」、4「離反防止」は、事業のフェーズによって注力する部分が変わることはあっても、基本的にはそれぞれ並行して投資対効果を高め続けることが必要です。そのためにも、経営がカスタマーダイナミクスの可視化を主導し、異なる顧客動態に対応する顧客戦略(WHO&WHAT)を洞察することが求められます。そしてその手段手法(HOW)を開発し、部門横断で共有して、それぞれの部門・担当の業務を通じてカスタマーダイナミクス全体への投資対効果を高めます。そうすることで、利益性を強化していくのです。

「誰に(WHO)」の最適解は、1対1と1対マスの間にある

さらに、カスタマーダイナミクスの考え方を、前段で紹介した「マス思考」にひも付けて考えてみます。1対1も、不特定多数を対象とする1対マスも、どの顧客にも提案が最適化されておらず、投資が無駄打ちになりがちです。この間で最適なWHOとWHATの組み合わせを見つけるのが、5segs分類でのカスタマーダイナミクスと顧客戦略です。マスと1対1の間にある「最適な市場の細分化=セグメンテーション」を実行していきます。

不特定多数のマスを「プロダクトが対象とする人は誰か」で定義し、母数を算出して(=TAM顧客数)、顧客の行動(認知/購買経験/購買頻度)によって分類する(=5segs)。そして、どのような人に何を提案しうるかの顧客戦略を追求して、一人でもマスでもない、アプローチすべき顧客層を特定していきます。

立てた企画は素早く実行し、PDCAを回す

マーケットは顧客動態であるという前提に立つと、あらゆる戦略、施策やアクション、そして組織は陳腐化します。例えば一般顧客のロイヤル化を目的に立案した戦略は、顧客行動データの精密な分析結果を元にしていても、昨日までに起こった過去の顧客行動が前提になっています。まして、行動の原因である心理変化の把握はほぼできません。この状態で企画した施策を実行するより前に、競合が新しい戦略を実行すると、それを認知した自社プロダクトの顧客心理は変化し、次の行動も変化します。

まだ自社プロダクトを購入や利用していない顧客も、「こんな商品があるんだ」と競合を認知すると、仮にそれまでは自社プロダクトに関心があったとしても、その心理は変化する可能性があります。つまり、顧客行動データを軸にした企画は、競合や社会環境の動きによって、常に陳腐化されていくのです。

だからこそ、過去の顧客行動データに基づいて判断した企画は、素早く実行することが重要です。時間をかけるとさらなる陳腐化を招くため、まずは迅速に実行し、その後のPDCAで柔軟に対応すべきなのです。社内や外部を巻き込んで分析し、議論して熟考し、時間をかければかけるほどに陳腐化し、的外れになります。

本質的で持続性のある事業成長につながる戦略として目指すべきは、今、目の前のマーケットの顧客の心理と行動を理解し、素早く顧客戦略を構築し、それを実現する手段手法を企画・実施し、PDCAサイクルを回していくことです。そして、この一連が実現可能な体制を組織に内製化することです。これが、顧客起点の経営改革です。

そのために、マーケット全体をTAM顧客数で定義し、TAM内の顧客がどう動いているか、カスタマーダイナミクスで常に把握していきます。経営が課題としている収益性の向上を解決するには、「顧客起点の経営構造」フレームワークにおけるブラックボックスである顧客の心理と行動の関係と変化をカスタマーダイナミクスで可視化し、顧客が見いだす価値を高め続ける顧客戦略(WHO&WHAT)を洞察し、それを実現する手段手法(HOW)の改善強化(PDCA)を継続していくことが重要です。

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《西口一希》

経営とマーケティングの理解