
経営の視界に顧客を捉える
この応用編で紹介する3つのフレームワークは、顧客の状況を時系列で可視化し、顧客起点でのビジネスのマネジメントを可能にします。これらを活用して、経営の健全化を実現します。具体的には、「顧客起点の経営構造」「顧客戦略(WHO&WHAT)」「顧客動態(カスタマーダイナミクス)」の3つです。たとえ短期で成長鈍化に直面したとしても、これらのフレームワークを経営と現場で共有し、組織全体での顧客理解とPDCAを繰り返すことで、継続的な成長へつなげることができます。以下、まずアウトラインを説明し、その後に改めてそれぞれ詳しく解説していきます。
一つ目の「顧客起点の経営構造」は、経営の視界に顧客を捉えるためのフレームワークです。上から順に、経営対象、顧客心理、顧客行動、財務結果の4つのブロックで成り立っています。どのような事業においても、経営活動は顧客の心理状態に影響を与え、その顧客の購入行動を変え、売上や利益という財務結果へと導きます。下端のブロックが、事業の継続の原資となる売上であり利益、すなわち財務結果です。これを得るために経営が対象とするものが、上端の経営対象です。この図は、経営が期待するインプットとアウトプットの因果関係を示します。

顧客は、経営対象と財務結果の間に存在する
経営対象とは、営業、販売促進、開発、マーケティングなどの顧客に対して直接的に影響を与えるものから、人事、財務、経理、総務、広報、ⅠTなど組織運営に関わり顧客に間接的に影響を与えるものまでのすべてです。この経営対象の管理を通じて、最終的に潜在顧客と既存顧客に何らかの影響を与え、顧客数、単価、頻度を引き上げ、売上、利益といった財務結果を向上させることを目指します。
従って、「顧客」は、経営対象と財務結果の間に存在しています。財務結果の手前、下から2つ目の顧客行動に「顧客数×単価×頻度」と記しましたが、これがすなわち売上になります。
経営が管理対象とする新規顧客の獲得、あるいは既存顧客の維持および育成への投資活動は、顧客の行動を急に変えることはありません。潜在顧客が初購入したり、既存顧客の離反が減ったり(=顧客人数の増加)、より多くお金を使う・一度にたくさん買う(単価が上がる)、買う頻度が上がるといった顧客の行動の変化は、必ず何らかの顧客心理の変化に起因します。
経営で行われる成長戦略や投資の議論、組織や人事の議論では、直接か間接、短期か長期の違いはあれど、必ず顧客の心理と行動の変化を目的とするはずですが、実際には顧客とのつながりがない意志決定が行われることがあります。会議が何度も繰り返されたり、結論が出ずに議論が延々と続いたりする場合、本来、その会議や議論が目的としているはずの顧客とのつながりが見えていないことが多いのです。
この顧客起点の経営構造のフレームワークを共有し、今行っている会議や議論が、顧客の何に影響することを目的にしているのか確認することで、意味のない議論を避け、顧客起点の意識を共有できます。
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