2-3-27:利益拡大のために重要なのは戦略の再現性

顧客起点マーケティング 経営とマーケティングの理解
利益拡大には、顧客戦略の再現性と検証が重要です。誰に何をどう提案するかを明確にし、PDCAを回すことが成功の鍵となります。
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経営活動の効果検証と再現性― PDCA

必ず顧客戦略ありきで実現手段を検討すること、そうでなければ施策の検証ができずPDCAサイクルを回すことができないと述べました。ここで大きなテーマになるのは、再現性です。

購入の総合計である財務結果や、購入行動の総数を分解しただけの「顧客数×単価×頻度」の把握と分析だけでは、投資対効果は高まりません。それらが首尾よく増加したとしても、その増加がどこから生まれたのか、誰がもたらしたのか、プロダクトの何が評価されたのかを理解することはできず、成功の再拡大はかないません。

顧客数や単価や頻度が減少したとすれば、より深刻です。その減少が誰によってもたらされたのか、プロダクトの何が評価されていないのかが見えない限り、取りうる手段は費用削減か、さらなる努力という名の労力の投入です。何を優先すべきかが見えないために削減すべき対象も労力を追加すべき対象も分からず、効果がない投資を続けるだけでなく、効果がある投資も削られ、効果につながらない労力はさらに増え、企業の利益性を毀損していきます。

大部分の売上をもたらす複数の顧客戦略を洞察し、経営対象をHOWとして捉えれば、投資や組織に関わる経営の意志決定は、特定のWHO(どのような顧客に)、WHAT(どのようなプロダクトを提案し)、HOW(そのWHOとWHATをどのような手段手法で結び付けるか)となり、検証可能となります。

多くの企業が、定例報告会や財務業績の振り返り、顧客獲得や商談進捗レビュー、プロダクトの開発会議など、いわゆるPDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)を実行しています。しかしそこで行われているのは、HOWとして実行した投資活動や組織活動の財務的評価が主体で、そもそもどんな顧客を獲得するために、それらの手段手法が計画されたのか、またその活動を通じてプロダクトの何が訴求され体験されたのかが定義されないまま進行していることが多いと思います。

PDCAを実行しても成果が出ないといった声も聞かれますが、問題の本質は、HOWだけの検証になっていることにあります。仮説であっても顧客戦略を定義し、社内共有することで、PDCAサイクルは次の図のように健全に回り始めます。

経営活動として行った投資活動や組織活動(HOW)に関して、WHOが適切だったのか、WHATが適切だったのか、その2つを結び付けるためのHOWが適切だったのかの検証が可能になることが重要です。そうなれば、拡大すべきこと、避けるべきこと、強化改善すべきことが具体的に見えてきます。

例えば、BtoB事業でリード顧客(商談対象となる潜在顧客)を増加させるために、無料セミナーを実施して集客したとします。この新規顧客獲得を目指した結果の振り返りは、どのような顧客を集客すべきか(WHO)、その顧客が価値を見いだすプロダクト提案や訴求は何か(WHAT)が曖昧であれば、集客が成功したとしても成功要因が特定しにくく、再現が難しくなります。また、失敗しても、その失敗を避けるために何が必要かを特定できないのです。

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《西口一希》

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