2-3-24:WHO&WHATは「顧客起点の経営構造」に内包される

顧客起点マーケティング 経営とマーケティングの理解
顧客戦略(WHO&WHAT)が曖昧なまま手段や手法(HOW)に投資しても、十分な成果や学びが得られず、経営効果は限定的になります。
2-3-24:WHO&WHATは「顧客起点の経営構造」に内包される
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HOWに傾注してしまう理由

なぜ、顧客戦略となるWHOとWHATが曖昧なままHOWに注力し、投資し続けてしまう事態が起こるのでしょうか。理由は、手段手法(HOW)の議論は単純で実行は簡単であり、その選択肢は世の中にあふれているからです。一つの手法が結果を出さなければ、異なる手法に投資するのは簡単です。顧客になっていただきたい方々が不明でも、あるいは自社プロダクトが押し出すべき便益や独自性が曖昧でも、次の商品開発、新たな販売促進、追加的な営業活動、流行りのマーケティングなどの手段手法へは、すぐに投資できるからです。

手段手法は雨後の筍のように次々と開発・導入されるので、着手しなければ後れを取ったような気にもなります。ここ最近だとDXを筆頭に、様々なデジタルの仕組みやシステムが社内に導入されたものの、明確な結果が見えないままに現場では「使いこなせていない」「結果につながらない」という声が上がっているのではないでしょうか。結果、「どのような顧客に、何を提供するから高い価値が生まれるのか」を見失った状態で手段手法への投資と労力が積み重ねられ、作業や仕事量が増える一方で、利益性の向上は難しくなるのです。

この傾向は、デジタル技術の発展により、ますます顕著になっています。デジタルを活用した様々な手段手法自体が、事業を伸長させるかのような誤解も生じています。しかし、どれだけ手段手法が画期的で優れていても、WHOとWHATが曖昧だと、有効性に期待はできません。

投資対効果を上げるPDCAとは

価値を生み出すWHOとWHATの組み合わせ、つまり顧客戦略は投資戦略であり、いわば経営の土台です。すでに紹介した第一のフレームワーク「顧客起点の経営構造」と、第二のフレームワーク「顧客戦略(WHO&WHAT)」は接続しているのです。具体的には図のように、顧客心理にあたる部分に顧客戦略を組み込むことができます。

顧客がプロダクトの便益と独自性に価値を見いだし、購入意向を形成することは、すなわち経営対象と財務結果をつなぐ「顧客戦略」の成立を意味します。顧客戦略をしっかり構築しない状態で何らかの経営の投資が実行される、つまり手段手法が実行されると、財務結果が出ても出なくても、成功しても失敗しても、その要因の検証ができません。

うまくいかなかった場合、手段手法が問題なのか、それとも接触すべき顧客が間違っていたのか、そもそもプロダクトの便益や独自性が弱かったのか等々、失敗の要因は無限に挙げられます。それらを確かめようがないので、目の前にある結果として「施策を打ったが成果が上がらなかった」場合は、投資を打ち切るという対応をするしかありません。間違っていたのは顧客戦略で、手段手法自体は有効だったとしても、その時点で手法が悪かったと結論付けてしまい、投資は中止され、何の学習も残りません。

仮にうまくいったとしても、誰がなぜ買ったのか、つまりどんな顧客戦略が成立したのかを振り返ることができないため再現性がなく、投資対効果を引き上げることができません。WHOとWHATが明確になっていたら、個別に見直すことで、顧客へのリーチ方法の精度向上や提供する便益や独自性の強化も可能ですが、それもかないません。

つまり、顧客戦略からプランニングを始めれば、経営対象の各種の手段手法との間でPDCAサイクルを回していくことができますが、顧客戦略なしに手段手法ありきで施策を打った場合、PDCAで効果を改善することはできないのです。従って、経営におけるPDCAは、次の図のように顧客戦略(WHO&WHAT)とそれを実現する手段手法(HOW)をセットで捉えて回していかなければならないのです。

「ビジネスにとってWHYが重要である」との話もよく聞きます。筆者も同意ですが、それは「なぜそのビジネスをするのか」という問いが、そのビジネスを通じて世の中に意義ある新しい価値を生み出すかどうかを問うものだからです。顧客が価値を見いだす便益と独自性を、自社プロダクトが提供しうるのかどうか。つまり顧客戦略(WHO&WHAT)が成立するのか、そしてその顧客戦略は、世の中にとって意義ある価値を生み出しうるものなのかどうかを問うという意味で、重要だと考えています。

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《西口一希》

経営とマーケティングの理解