2-3-14:第3のフレームワーク「顧客動態( カスタマーダイナミクス)」

顧客起点マーケティング 経営とマーケティングの理解
顧客動態(カスタマーダイナミクス)は、顧客の心理や行動の変化を5または9つのセグメントで可視化するフレームワークです。マーケットの動きや施策の効果を把握し、戦略に活用することができます。
2-3-14:第3のフレームワーク「顧客動態( カスタマーダイナミクス)」
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5segsないし9segsで、セグメント間の顧客の動きを可視化する

3つ目のフレームワークは、「ビジネス構造の理解」のシリーズで解説した、マーケット全体の顧客の動き(変化)を把握する「5 segs(ファイブセグズ)」および「9 segs(ナインセグズ)」の「顧客動態(カスタマーダイナミクス)」です。カスタマーダイナミクスは、5つないし9つのセグメント間の顧客の動きを可視化するものです。

「ビジネス構造の理解」シリーズで紹介した内容を振り返ると、自社プロダクトが対象とする顧客全体を顧客数で見たとき、その中には自社プロダクトの上得意顧客ともいえる購入頻度が高いロイヤル顧客や、購入頻度が低い一般的な顧客もいれば、しばらく購入がない離反状態の顧客もいます。また、マーケットに多く残っている自社プロダクト未購入の顧客は、自社プロダクトを知ってはいるけれど未購入の顧客と、そもそも自社プロダクトをまだ知らない人に分かれます。マーケット全体の顧客数を100%として、それを「ロイヤル顧客/一般顧客/離反顧客/認知未購入顧客/未認知顧客」の5つに分類したのが「5 segs」です。

これは、どのような事業でも実施可能な基本的な5分類です。BtoBであれば、上から4つ目の認知未購入顧客には、①商談ありで契約不成立のクライアント、②商談あり・商談中の未決定クライアント、③商談前のリードクライアント、の3種が含まれます。

顧客の変化を視野に入れてマーケットを俯瞰する

5分類される顧客は、固定しているわけではありません。顧客の心理と行動は常に変化し、これらのセグメント間を動いています。それを踏まえて、顧客全体を動態として捉えるのが、カスタマーダイナミクスです。例えば、現在どのくらい未認知顧客(5つ目のセグメント)のボリュームがあり、営業活動やPRなどの認知獲得を目的とする施策を実施した結果、3カ月前と比べてそれがどのくらい動いたかを時系列で確認すれば、その施策の効果やマーケット変化を評価できます。

この5つのセグメントを動態で捉えると、現在顧客の中には、これから自社プロダクトの購入頻度を上げたり購入量(単価)を増やしたりする直前の潜在的なロイヤル化顧客もいますし、離反状態だけれど久しぶりに自社プロダクトを購入しそうな潜在的な復帰顧客もいます。あるいは認知未購入顧客の中には、明日にも購入行動を起こそうとしている潜在的な新規顧客もいますし、未認知の中にも潜在的な新規顧客がいます。一方で、現在顧客でありながら、何らかの理由で継続購入を止めようとしている潜在的な離反顧客もいます。

5segs カスタマーダイナミクスは、このような顧客の心理と行動の変化を視野に入れて、今後起こりうる顧客の行動変化をマーケット全体で俯瞰する基本のフレームワークです。企業規模や事業内容を問わず、幅広く活用できます。

この5分類でのカスタマーダイナミクスの運用後に、量的なアンケート調査などを行える場合は、「ビジネス構造の理解」シリーズで解説したように「次の機会に購入したいか」を区別する指標「NPI(次回購入意向/ Next Purchase Intention)」のデータを取得して、5つをさらに細かく9つに分類して運用する「9segsカスタマーダイナミクス」の活用が可能です。基本は5segsでのカスタマーダイナミクスによる分析なので、本シリーズでは5segsをベースに顧客戦略(WHO&WHAT)と顧客動態(カスタマーダイナミクス)を解説し、その後に9segsカスタマーダイナミクスの運用を紹介します。

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《西口一希》

経営とマーケティングの理解