2-3-29:中小企業の「複数の顧客戦略」事例②:通販コスメ

顧客起点マーケティング 経営とマーケティングの理解
ある通販コスメでは、顧客ごとに最適な商品を提案し、ブランド認知を拡大することで、利益の向上と継続購入の促進を実現しました。
2-3-29:中小企業の「複数の顧客戦略」事例②:通販コスメ
  • 2-3-29:中小企業の「複数の顧客戦略」事例②:通販コスメ
  • 2-3-29:中小企業の「複数の顧客戦略」事例②:通販コスメ

事例②:通販コスメの商品別・購入前後の顧客戦略

前項の温泉宿に続いて、もうひとつ中小企業での事例を紹介します。

自分の肌悩みに合うコスメを開発するために創業された通販コスメブランド会社の事例です。毎年、様々なスキンケアとメイクアップ商品を幅広く提供し、継続的に成長していましたが、利益性に課題がありました。

顧客が何を買っているかを調べると、スキンケアとメイクアップで複数の顧客戦略が成立していることが分かりました。まず、それぞれの新規顧客の獲得状況とそのコストを比較しました。メイクアップの新商品は常に評判が高く、多くの新規顧客を獲得しており、新規顧客の獲得コストは低い状況でした。一方、スキンケア商品は新規顧客の獲得コストがメイクアップ商品よりもはるかに高いので、新規獲得へ

の投資はメイクアップ新商品へ傾注していました。

次にそれぞれの顧客の2年間でのLTVで評価したところ、メイクアップ商品の顧客は、その大半が半年で離脱しており、実はメイクアップ商品での新規獲得に要した投資が回収できていませんでした。一方、スキンケア商品の顧客は新規獲得コストは非常に高いのですが、継続購入率が高く、2年間のLTVで評価するとメイクアップ商品よりもはるかに高かったのです。2年間で初期投資は回収され、3年目から高い利益を生み出す実態が見えました。

これらの事実から、新規顧客の獲得数を落とすことなく利益性を高めるために、①メイクアップに興味を持つ顧客に新しいメイクアップ単品を提案するのではなく、スキンケア商品の小さいサイズとの組み合わせキットをメインに提供していきました。一方で、②これまで通りのスキンケアに興味のある顧客にはスキンケア商品の提案、そして、③メイクアップ単品の購入者には、スキンケア商品のお試しセットをすぐに提案するという、3つの顧客戦略の組み合わせに切り替え、売上を落とさず利益性を高めていったのです。

さらに調べると、過去にメイクアップ商品を購入し、その後も継続購入している顧客層の多くが、最も売れているスキンケア商品の存在自体を知らず、それを紹介すると強く興味を示すことが分かりました。多くの新商品を継続的に試してきた既存顧客は、たくさん商品があることは感じていても、何があるのかまでは理解できなくなり、機会損失が生まれていたのです。

これを受けて、メイクアップ商品とスキンケア商品それぞれの既存顧客に対し、まだ認知すらされていない売れ筋の既存商品を提案する顧客戦略も導入しました。一方そもそも大きな投資が必要な新商品の投入量を絞ることで、利益性を高めていきました。

まだ会員登録されていない方へ

会員になると、既読やブックマーク(また読みたい記事)の管理ができます。今後、会員限定記事も予定しています。登録は無料です


《西口一希》

経営とマーケティングの理解