2-5-34:ブランディングへの過剰期待と過小評価

顧客起点マーケティング ブランディングの誤解
ブランディングやマーケティングは曖昧な定義や過剰な期待に陥りやすいため、顧客のニーズ(WHO)と提供価値(WHAT)に基づく目的重視の議論が重要です。
2-5-34:ブランディングへの過剰期待と過小評価
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Geminiで生成

ブランディングは“魔法のつえ”ではない

私が企業のマーケティングを支援する場合、意図的にマーケティングやブランディングという言葉はあまり使わないようにしています。それぞれの言葉について正しく定義するか、それができない場合はむしろ使わないほうがいいと考えているからです。

言葉の定義が曖昧だと、無意味な過剰期待、過小評価につながります。もしブランディング施策によって、潜在顧客に強く記憶され、想起率が大幅に上がり、店頭で手に取られやすくなったとします。このとき、商品の満足度が低いと、一時的な売り上げは上がるものの、リピートにつながりません。

ところが、ブランディングの目的が曖味で、売り上げや利益が上がる魔法のつえのような過剰期待をしていた場合、ブランディングに投資したのに、利益が出ないから、ブランディングは失敗したという過小評価につながります。

顧客の想起率が上がったものの、店頭での商品展開が弱かったために、売り上げはあまり上がらず、損失が膨らむことがあります。この場合、顧客の想起率の向上は成功しましたが、店頭での商品露出が弱かったため、顧客が店頭で商品と出合う確率が低く、せっかく上がった想起率が購入につながらなかった。ブランディングとしての役割は果たしているわけです。

つまり、順当に考えれば顧客が商品に出合うための店頭などの購入場面の強化が次の目的になります。決して、新たなブランディングを試そう、とか、マーケティング戦略の見直しを、とか、そんな粒度の粗い議論は必要ありません。

議論すべきはWHOとWHAT

世の中のあらゆる事業はBtoC(顧客向け)、BtoB(企業向け)に限らず、顧客と商品・サービスの関係性でしかありません。「何らかの商品・サービスを求めている人=WHO」に対して、「お金を払ってでも買いたい、利用したい便益と独自性=WHAT」を提供する。このシンプルな関係性でしかありません。

WHOに対する、WHATを定義しないまま、ブランディングやマーケティングという言葉だけを使うことで、無駄な投資が広がります。マーケティングやブランディングという言葉を使わなければ、議論は、おのずとWHOとWHATの関係に集約されます。

ですから、マーケティングにしてもブランディングにしても、必ずWHOとWHATに関する目的ベースで会話をすべきです。現状の課題は何で、達成したい目的は何か。どのような顧客(WHO)に対して、どのような便益と独自性(WHAT)を届けたいのか。それを確認しながら進めます。

言葉に振り回されず、目的ベースで会話をする

もともとの商品・サービスに便益と独自性となる強みはあるのか、それに価値を見いだす顧客はいるのか。その便益と独自性が強くなければ、秀逸なデザインに変えたり、有名なタレントを起用した広告を制作したりしても、一時的な売り上げはつくれても、継続購入、継続的な売り上げと利益にはつながりません。

離反層に対するブランディングはどうでしょうか。もし、離反した理由が、商品の便益に対する満足度が減少し、競合商品や代替品の便益に高い満足度を感じていた場合、もしくは、その商品が提供していた便益そのものに対する需要がなくなった場合は、ブランディングでの想起率の向上やリマインド効果はありません。

この場合、ブランディングは、購入意思のない層に対するリマインドになり無駄な投資になります。ただし、購入意思のない顧客でも、そのブランディングのメッセージに対して、懐かしさや身近さを感じることがあるため、広告評価は好意的である場合があります。

このような広告への好感度をもってして、ブランディング施策に効果があったような錯覚や誤解を引き起こすことも多く見られます。購入意思が上がらない限り、好感度が上がっても、売り上げにはつながりません。

P&G「SK-Ⅱ」がグローバルブランドになった理由

プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が化粧品ブランド「SK-Ⅱ」を1991年に買収したときは、まだ売上高が数十億円規模の日本中心のローカルブランドでした。しかし、P&Gは、SK-Ⅱの天然由来成分「ピテラ」(独自性)による強いスキンケア効果(便益)に対して、ロイヤル顧客の多くが価格の高さをいとわず評価し、象徴的商品であるローションの圧倒的なリピートにつながっていることに着目しました。

さらに、このような顧客層が潜在的に大きく存在することに気付きました。この潜在的な顧客(WHO)に、SK-Ⅱが提供できる強力なスキンケア便益と独自性(WHAT)を提供するために、積極的なマーケティングとブランディングを実行し、結果として1000億円を超えるグローバルブランドヘと成長させました。

一方で、離反層が商品の持つ便益や独自性に対するニーズを失っておらず、単に購入習慣が途切れているだけの場合、リマインダー(想起)としてのブランディングは効果が期待できます。

日清食品の即席めん「カップヌードル」のようなロングセラーブランドの商品が、店頭で大量に陳列されると、そういった離反層の購入につながりやすい。このような大量陳列によるリマインダー(想起)効果は、ロイヤル層、一般層にも効果が期待できます。

多くの場合は誰(WHO)にとって、何(WHAT)が購入や継続購入の動機になっているのかが曖昧なまま、売り上げが下がっている、利益が減少した、顧客の不満が増えているという事実に振り回されています。

具体的なWHOとWHATの関係において、解決すべき問題が定義された時点でマーケティングやブランディングでやるべきことの7~8割は見えます。

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《西口一希》

ブランディングの誤解