2-5-27:検索数の増減とビジネス成長の関係性

顧客起点マーケティング ブランディングの誤解
ニューバランスの躍進を例に、NPIと検索数を分析していきます。顧客層ごとにブランドに期待する重視点を分解し、マーケティング仮説の立案に活かします。
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Geminiで生成

「事業成長の先行指標」としてNPIの有効性を検証

まずは、「NPIは事業成長の先行指標になる」という観点から検証します。ニューバランスは調査を行った21年12月時点で、他ブランドと比較して明らかにNPIおよびu-NPIが高い傾向にありました。この数値が示す通りに顧客がニューバランスを購入していれば、事業はさらに成長しているはずです。

それから2年以上が経過し、事業は成長しているのでしょうか(鈴木氏への取材は23年7月に実施)。ブランド指標に関する考え方を含め、NPIとビジネス伸長についてニューバランスの鈴木氏はこう説明します。

「スニーカー市場、およびスポーツ分野全体は、21年からずっと成長し続けています。ニューバランスの事業伸長について、具体的な数字は公開していませんが、市場全体の成長度合いを踏まえても、競合と比較してより順調に伸びています。(顧客へのブランド浸透度合いを測定する)サブ指標として『Googleトレンド』でのブランドの検索数の推移を追っていますが、上々の結果となっています」

「NPIは、カテゴリーにおける調査時点の状況と顧客からの支持の変化を確認するには、有効な指標だと思います。顧客層の属性や分類の掛け合わせで、ブランドのポジショニングや顧客層ごとの課題が抽出できるところは有用性があります。自社ブランドの全体像は、おそらく各社のブランド指標の計測でも感じられるでしょうが、競合との顧客層の差異に注目して分析することで、ブランド担当者が自社ブランド中心で考えていると見過ごしがちな視点を得られるのが利点です」

「Googleトレンド」とは、検索サービス「Google」におけるキーワードの検索数の推移を分析できるツールです。このツールで比較すると、他ブランドが横ばいなのに対し、ニューバランスはこの1年ほどで大きく上昇していることが分かります。

上の図で見ると約1年前まで検索数はアデイダスと横並びでしたが、23年になると日によってはナイキに迫るほどの関心を集めていることがうかがえます。筆者もスマートニュースやロクシタンにおいて、常にGoogleのトレンドを追っていましたが、検索ボリュームと売り上げはおよそ連動していました。

このように21年12月の調査結果に対して、その後、実際の事業成長に関する鈴木氏のコメントからもNPIやu-NPIは事業の先行指標としても有効である可能性がうかがえます。

市場のニーズとブランドに対するイメージの差を検出

続いて、ニューバランスのNPIやu-NPIが高い理由をひもといていきます。顧客が商品・ブランドに対してどのような価値を感じているのかが分かるため、マーケティング施策の仮説立てに有効です。

その手掛かりになるのが、調査で尋ねている「スニーカーの検討時にどのような項目を最も重視しているか」です。既出の項でも説明しましたが、これを「履き心地が良い」「デザインが良い」など、計29項目から単一回答で回答してもらいました。

今回の調査では、ニューバランスは、「履き心地が良い」「価格が手頃」「デザインが良い」「疲れにくい」「足へのフィット感がある」が上位に挙がりました。

また、男女別で見ると1位の「履き心地」は2位の「価格が手頃」と10ポイントの差があり、女性で特に重視する傾向があることが分かりました。これは性別ごとの全体傾向のため、まだ、マーケティング施策の仮説立てをするには粒度が粗い状態です。続いて、NPIを活用しながら、深掘りして分析していきます。

まず、NPIを使ってどのように分析と仮説立てができるのかを、簡単に紹介します。仮に、多くの顧客が「デザインが良い」と考えており、自社ブランドに対するイメージも「デザインが良い」が上位なら、購入にあたって重視するポイントと、そのブランドが持つイメージが一致しているので、そのブランドの認知度が上がるほど潜在的な顧客は増えていく理屈になります。

ですが、実際には、顧客によってニーズは様々です。特定の重視点に対して、性年代別で比較したときに、20代男性と、20代女性は正反対の傾向だということも珍しくありません。

そのため、顧客全体でデータを平均すると、その違いが埋もれてしまいます。すると「誰に何を提案し、どのイメージを引き上げるか」の見通しが甘くなり、結果として20代男性にも20代女性にも響かない、凡庸な策になりかねません。

そこで、顧客層ごとに商品・ブランドに対して期待する重視点(価値となる便益や独自性)を分解し、全体合算や平均では見えてこない特徴を検出します。そして、誰にどのような心理変化を促すのかを明確にした上で、効果的な打ち手を検討していくことが有効です。

9segsを使ってセグメントごとの心理を分析

ここまでは、そう目新しい話ではないでしょう。ですが、これだけでは足りません。仮に同じ性年代でも、単に商品・ブランドを認知している人と、既に購入意向が高い人、あるいはブランドに愛着があるロイヤル顧客では購入態度や心理状態が大きく異なるからです。

そこでNPIを使って、属性(性年代)や、商品・ブランドの認知の有無、購入の有無などで顧客を分類し、次回購入意向が高い層の回答の傾向を分析します。

各顧客層を比較することで、「WHO=誰」に「WHAT=何」を提案すべきかの仮説を立て、「HOW=最適な打ち手」を検討します。併せて、顧客からの支持や期待が厚い、ブランドとして手放してはいけない価値を見いだして維持していきます。これが、NPIを使ったブランド調査を事業成長につなげる道筋です。

重要なのは、調査結果と9segsで分類した顧客層をクロス集計することで、9つの異なる顧客セグメントごとに、初回購入促進(トライアル)と継続購入促進(ロイヤル化)で区別して、それぞれで何を訴求すべきかを推察することです。

これらを一緒くたにしては、有効な施策にはつながりません。同じ購入促進でも新規顧客獲得とロイヤル化では、最適な提案も異なるはずです。事前に商品・ブランドに対してどのようなイメージや期待を持って買い求め、使用後にロイヤル化した顧客は何を評価しているのか。インタビュー調査も交えてその差を把握することで、心理変化や態度変容の仮説を立てられます。

これを踏まえた上で、次項では、NPIを使いながら、ニューバランスの顧客を増やすためのマーケティング施策の仮説がどう立てられるのかを解説します。

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《西口一希》

ブランディングの誤解