
なぜ「ブランディング」だけが取り残されたのか
一般的にブランド価値がどのように評価・計測されているのか、少し触れておきます。一つは「ブランドエクイティ」調査が挙げられます。その定義や要素については、本シリーズですでに解説しました。ブランドエクイティをどれだけ確立できているかを測る指標として、主にNPS、財務情報、各社独自の複雑なアルゴリズムを用いた「ブランドエクイティ指標」などが使われます。
ただ、ブランドエクイティの概念は複雑かつ、事業主側の期待するイメージ、実際の顧客が認知しているイメージ、顧客が購入に当たって重要視するイメージなどが混在して使われることが多く、経営陣には有効に活用されないことが多いです。結果、ブランドエクイティの複雑な評価を飛ばして、ブランド価値の測定に単純なNPSや認知度、好感度を用いることが多いです。
あるいは顧客が重要視するかどうかの検証なく、「先進的」「親しみやすい」といった、自社ブランドに込めたイメージがどれだけ市場に浸透しているかというイメージ調査が行われています。
しかし、これらの指標は、事業成果とは因果関係と相関関係のどちらも証明されていません。また、因果関係があったとしても、それが新規顧客の獲得なのか既存顧客のロイヤル化のどちらに効果的かが判別できないため、施策に生かすヒントになりづらいです。実際に新規顧客を獲得し、既存顧客を育成するという事業成長のためのアクションに生かしきれていないというケースは多いのです。
そもそも、企業側の「こういうイメージを持ってほしい」というエゴや願望軸になっている点も課題です。
テレビCMの効果検証が可能になったことの影響
デジタルマーケティングの浸透によって、CVR (コンバージョン率)やCPA (顧客獲得単価)などの指標が広く使われるようになり、経営者からはマーケティング活動のKPI(重要業績評価指標)を厳しく追求されるようになっています。それなのに、ブランディングの領域は依然として評価が難しいとされ、まるで芸術分野のように扱われ、ビジネスヘの直接貢献の議論が許されない“聖域”になりがちです。
ブランド価値が向上したかどうかの証明が容易でないことは、筆者も30年以上の実務経験で痛感しています。ですが、それが「売り上げや利益に結びついたか」の検証をしなくていい理由になるとは思いません。
大きな変化があるのは、テレビCMの効果検証です。長らく、テレビCM投入後のブランド名の認知率の上昇が「テレビCMのブランディング効果」とされてきましたが、それは不適切な検証です。しかし、スマートフォンの急速な普及とデジタル技術の進化で、より直接的に顧客の行動を捕捉可能になりました。
テレビCMを見て商品に興味を持った人は、すぐにインターネットで検索します。興味がなければ、検索すらされません。このデータがあれば、テレビCMの放送による、自社サイトのアクセスの増減などから、最終成果であるコンバージョンまでをつなげて費用対効果を捉えることが可能です。
一方で、量的アンケートから得られるNPIは、これまでの調査からマーケットシェアと相関が出ており、かつ半年後や1年後だと統計的優位性がより高くなる傾向がデータとして出ています。顧客の心理変化がまずあって、時間とともに購入行動につながっていると考えられます。
これらを踏まえて、既出のニューバランスの調査結果を考えると、1年半前の調査実施時点でNPI、u-NPIともに高いニューバランスは、現在では他ブランドよリビジネスが伸びている可能性が高いと推察できます。そこで、ニューバランスジャパン(東京・千代田)のマーケティング部デイレクターの鈴木健氏に協力を得て、これを検証しました。次項から詳しく解説します。
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