2-5-29:セグメントごとの分析で適切な訴求軸を見つける

顧客起点マーケティング ブランディングの誤解
顧客セグメント分析と定量的な検証により、ブランドの訴求軸や施策効果を客観的に評価し、それを事業成長につなげる重要性を示しています。
2-5-29:セグメントごとの分析で適切な訴求軸を見つける
Geminiで生成

トライアルユーザー獲得の入り口を増やすには

前項では、ニューバランスの積極・ロイヤル顧客と、積極・認知未購入顧客の調査結果の比較から「試着や接客を通して『履き心地の良さ』『疲れにくさ』などを感じてもらうことが、初回購入やロイヤル化につながるのでは」という仮説が浮かび上がりました。実際、ニューバランスの鈴木氏は、次のように回答しています。

「直営店でも、履き心地の良さや適切なフィッティングの説明を盛り込んでいます。ロイヤル転換指標(※ロイヤル顧客が支持する指標であり、ロイヤル化に有効な要素)である履き心地や疲れにくさは、体験して初めて実感できる特徴です。製品を体験する層が拡大すれば、リピート率はおのずと上がっていきます。ですので、店舗での足型測定やフィッテイングサービスは、直営店や取扱店でも強いリピート促進施策になっています」

ただし、そうした店頭でのサービスだけでは、トライアルユーザーの獲得には不十分だと鈴木氏は考えているようです。来店した人には有効ですが、その手前にいる人にはアピールしにくいからです。

「来店の手前にいる方も含めて、トライアルに結びつくようなマーケティングが必須だと考えています。その点で、今回の調査時点では高くはない『スポーツ向き』のイメージは、ロイヤル顧客では上位でなくてもいいですが、トライアル要因の上位に入るべきだと考えています」

7.積極・認知未購入顧客における、単一回答での重視点を見ると「スポーツ向き(0.8%)」「ランニング用(0.7%)」と低い傾向にありました。ここを底上げして、トライアルユーザー獲得の入り口を増やす必要があると鈴木氏は考えているようです。

これをブランディングという観点で考えれば、まず7.積極・認知未購入顧客を分析して、その中でも「スポーツ向き」「ランニング用」を重視する顧客セグメントを特定します。

そして、その顧客セグメントを対象に「スポーツ向き」「ランニング用」であるという印象を与える施策を実施し、その後、同顧客層における「スポーツ向き」「ランニング用」という項目が高まっているかどうかを新規顧客の獲得数と併せて定点で分析していきます。

そうすることで、ブランディング活動をきちんと事業貢献というかたちで評価できるようになるわけです。

顧客が本当に評価している項目をつかむ

筆者もこれまで多くの試行錯誤を続けてきましたが、「ブランディング」の成否は定量的な検証がないまま主観的になりがちで、客観的・科学的で再現性あるかたちでの運用が容易ではありませんでした。

数回にわたって取り上げたスニーカーブランドに関する一連の分析は、読み解きには仮説や推測を含んでいますが、結果自体は数字で示すことができ、検証可能なものです。また、顧客をセグメントごとに分類してその違いを分析することで多様な顧客ニーズと認知の違いが見え、顧客の動きを見据えた「顧客動態(カスタマーダイナミクス)」を可視化して具体的な議論が可能になります。

客観的な指標は、例えばマーケティング部から商品開発部や顧客に対応する部門、そして当然ながら経営層にも説得力のある材料として役立ち、共通言語になります。

もう一つの重要なポイントは、具体的な顧客とプロダクトの訴求内容や体験内容の組み合わせでのマーケティング施策のアクションにつながるということです。事業が成長するということは、顧客の心理と行動が変わり、新規の顧客が増え、一般顧客がロイヤル化していくというカスタマーダイナミクスの構築に他なりません。そうした顧客とブランドとの関係を築くためのアクションにつなげるという視点から考えると、「ブランド」や「ブランディング」に対する見方やアプローチも変わってくるのではないでしょうか。

これをヒントに、ブランディングにおいて事業の延長上にある指標を測定し、顧客が実際に何を評価しているのかをつかんで、事業成長の手がかりにしていただければ幸いです。

次からは、「リブランディング」に対する誤解や中小企業のブランディングなどについて解説していきます。

まだ会員登録されていない方へ

会員になると、既読やブックマーク(また読みたい記事)の管理ができます。今後、会員限定記事も予定しています。登録は無料です


《西口一希》

ブランディングの誤解